ノーブル対策会議
それ以外にも幾つかの貴重な情報があった。その一つに委員長が訪れただろう【ノーブル】関連の施設には窓が無いというものだ。
窓が無いということは外から外光を取り入れられない場所にある、という事。いくら秘密の研究施設等とは言え生活に太陽は重要な役割がある。妖精はともかく、この世界の生き物は基本的には太陽の有無で時間を感じたりするわけで、他にも色々なメリットがある訳だ。
仮に窓が無い建物があったとすればそもそも怪し過ぎる。秘密であるのに目立っては意味がない。
目立たないようにするならカモフラージュは絶対に必要。それらをしていないという事は【ノーブル】の主要施設は窓を付けられないところにある。と予想をすべきだろう。
例えば地下。以前突入した施設も地下に広大な空間を広げていた。同じようにして地下に幾つもの施設を持っていると考えるべきだろう。
もしくは水中、という事も考えられる。地中よりは技術的に難しいけれど窓が作れない場所としては候補だ。
「地中か水中となるとどっちにしたって探すのは無茶そうね。もっと具体的な場所が分かれば話が別なんだろうけど」
「そうは簡単に話が進まねぇよなぁ」
場所に関する情報はそこまで。少なくとも一般的にな建物ではなさそうだという事だけでも分かれば少しは探す方も楽ではあるだろうけど、なんにせよ時間がかかる。
衛星写真を使おうにも、最新の衛星写真なんて簡単に手に入るものでもないし。
そういった地道で広範囲の調査などは職員の皆さんに任せるとしよう。私達が魔法少女と言っても、アテが無さすぎる調査に時間と労力をかけるのは避けた方が良い。
前回見つけたのはパッシオの魔力探査と、明確な探し物を第六感で探し出す碧ちゃんがいたからだ。魔力探査をしようにも難しいだろうし、アテの無い勘なんてそれこそアテにならないというものだ。元々が博打のようなものだったし。
当たったのが奇跡。二度目は無いと思うべきだよね。
「この黒いローブ姿の人が【ノーブル】の親玉っすかねぇ」
「ワルモノっぽーい」
そして委員長が印象に残っているという人物が二人。一人は舞ちゃんと墨亜が言うように、全身を真っ黒なマントのようなもので覆っていたという人だ。
他の【ノーブル】の構成員のように顔を隠していた上に会話なども聞き取れなかったため、男性か女性かも分からないそうだけど、何人もの人を伴っていたというから少なくとも【ノーブル】内で非常に重要視されている人物だろう。
いよいよ、親玉の姿が見えて来た。一体どんな人間なのかもわからないけどこうして人に危害を加える時点でロクデナシなのは確定。何とかしてこの人物も表に引きずり出して来たいところだ。
「この毎日必ず来てた男の人って言うのは?」
「その人が一番よく分からないんですよねー。何をするでもないんですよ。私がいた部屋に突然やって来たなって思ったら、ずーっと私を見てるだけなんです」
個人的に一番気になったのは、毎日来ていたという一人の男性の事だ。こちらも顔をフード付きのローブで隠していて分からないけど、明確に立ち姿や背格好が男性のそれだったらしい。
ただただ委員長を見ていただけだったというその男性が一体何をしたかったのか、ただの奇人変人何らそれはそれで問題なのだけど、毎日来ていたともなると何か意味があるのかとも勘ぐってしまう。
「あ、一度だけ手を触られましたよ。意識のほぼない私に乱暴するでも無くて、ただ手を触っていたんですよ。何したいんだろこの人?って思ってましたね」
「拉致された先でそんなことを考えられるのが要らしいな……」
「だってあの時意識朦朧としてるから緊張感も持てなかったんだよね。でも何というか変な雰囲気のある人では無かったですよ。下心みたいなのも感じ無かったですね。感覚としてはお見舞いに来てくれたって感じで」
テロ組織である【ノーブル】で拉致して来た子にお見舞いに来るような人間がいるとはとても思えない。それに関してはただの奇人変人か、委員長が好みのタイプだったとか、そんなしょうもない理由なような気もして来た。
こうして委員長がこちらに戻ってきた今、その男性と出会うのも難しいだろうし、会ったとしても鉄格子の向こう側からかな。
少なくとも、私達は魔法少女で、その男性は【ノーブル】の構成員。敵同士であってそんなラブロマンスのような展開も現実で早々起こる訳もない。
その他にも細々とした報告や街の警備の日程調整。街の外への定期調査の日程などを聞き、意見を交わしながら会議は進行して行った。劇的な大きな変化は無いだろうけど停滞もしていない。小さいけれど、一歩ずつ前に進んでいる。
そう思ってやっていくしかない。




