路地裏の攻防
「噂に違わない、見事な障壁魔法だな」
能天気な明るさに呆れていると、障壁で足止めした三人組が追い付いてきたようだ
元より閉じ込めてもいないので、追って来るのは当然だろうけど魔法少女二人相手に随分と強気だ
とは言え、この黄色の子は戦力にはならないから実質一人なんだろうけど
「褒めてもらえるなんて光栄ね。出来ればそのままお引き取り願ってもらえると嬉しいんだけど」
「そう邪見に扱わずに、一曲踊ってもらえると嬉しいのだがね」
「可愛らしい女の子を三人がかりで追い掛けていた貴方達と?冗談は止してくれる?」
三人の内真ん中にいる奴がこちらに話しかけて来た。さっきも俺を見て何やら呟いていた奴だ。見たところ連中を取り仕切っているリーダーってところだが、どうにも気にかかるところが一つある
「それと貴方、男よね?その魔力、どうやって扱っているのかしら?」
こいつらが全員、男だってことだ
魔力は基本、人間の男と相性が悪い。その代わりに人間の男は10年以上前よりも身体能力が向上していると言われているが、それでも魔法少女の魔力を用いた身体スペックには及ばない
確かに、俺の後ろでビクビクしている黄色の魔法少女は普段は変身もしない、隠れの魔法少女だ
だが、変身しているならその身体能力は男性のそれを上回る。走って振り切るのは容易な筈
そして何より、こいつらから漂う魔力の気配。つまりこいつらは魔力を用いた身体強化を行っている。『男であるのに』だ
その例外が本来男である俺だが、その俺だって魔力を扱う際には女性の身体に変わっている。男性の、真白の姿では魔力は扱えない
本来ならあり得ない現象を目の前で目の当たりした俺は、ひたすらにこいつらに対する警戒度を高めて行く
「成る程、ただの小娘ではないか。新米魔法少女と見くびると、こちらが痛い目に合いそうだ」
「見せてあげましょうか?どのみち、縛り上げてでも聞きたいことは多いですし」
「おっと、見た目以上に血気盛んでもあるか。あまり、長居をすると噛み付かれてしまうな」
くつくつと笑う男は余裕がありそうだ。魔法少女を相手にして、この余裕があるという事は、アイツらにも何か秘策があるという事なんだろう。ハッタリ、と言う線もあるが魔力を感じる以上、それ薄いと考える
より警戒を高める俺は何時でも障壁を展開出来るように、魔力を練り上げる
「なに、君ほどの戦闘能力がある魔法少女と今日はやり合うつもりはない。日を改めて出直すとしよう」
「……!!逃がさないっ!!」
「では、また会おう」
男から一気に膨れ上がった暴風に、咄嗟に障壁を箱状に展開して、俺と後ろにいた魔法少女を守る
魔法で起こした風が吹き止んだ頃には男たちの姿は跡形もなく消えてしまっていて、完全に逃げられていた
「逃げ足の早い……」
「アリウムさん凄いですね!!やっぱり政府所属の人達と肩を並べられる人なんですね!!」
「……貴女ねぇ」
男達に逃げられ、渋い顔をしていた俺に黄色の魔法少女はキャッキャと見た目通りの黄色い声を上げてはしゃいでいる
さっきまで危ない目にあっていただろうに、何とも能天気な子だ。こんな調子で大丈夫なんだろうか。先程、魔法少女の姿でないのに追い掛けられた、という事は隠れの魔法少女だと目を付けられている筈
また、あの男たちが襲って来る可能性は十分にある
「仕方ない。ちょっと強引だけど、魔法庁に協力を願いましょうか」
「……?」
四六時中この子の近辺をこっそり警護するには私一人では無理があるし、ここはその辺りの専門家にお願いするとしよう。当の本人は、何のことだかさっぱり分かっていないようだけど
この様子じゃ、自分が妙な事に巻き込まれつつあるってことは自覚が無さそうね
すみません、仕事とプライベート案件で更新遅れてます
しばらくバタバタしちゃうので、気長にお待ちいただけると
あと、いつも通りですがブックマーク、評価Ptありがとうございます。数日ぶりに覗いたらなんかまた一気に増えてたのでびっくりしました
これからもよろしくお願いします。