取り戻した日々
委員長のお見舞いを終え、そのまま私達は『魔法少女協会』へと足を運んだ。光さんが返って来るのを待っても良かったんだけど、重要な情報源になりそうなこのUSBメモリーはすぐに持ち込んだ方が良いという判断だ。
「そう。流石は眞澄の子供ね。弱ってるように見えて、絶対に折れないどころかやり返すんだから。子供の要がその分だと、眞澄の方も魔法少女の話は乗り気かもしれないわね」
委員長がどんな様子だったのかを話しながら、USBメモリーを受け取った経緯を話すと納得したようにうなずいている。くるる、と言っているが一体誰の事を指しているのだろうか?
私達は聞き覚えが無い名前だ。まぁ、話から察することは簡単だけどね。
「ままー、ますみって誰?」
「あら?貴女達は知らないんだっけか。眞澄は要ちゃんのお母さんの事よ。雛菊 眞澄。そういえば、貴女達はいつも別室で遊んでるから、聞いたことがほとんどないかもね」
やっぱり眞澄というのは委員長のお母さんのことだったか。
クラスメイトの両親の名前を知っていることの方が稀だし、○○ちゃんのお母さんとお父さんで済んじゃう印象。
普段会うときは別室というなら尚更だ。
「眞澄はああ見えて昔っからやられたら倍返しするタチでね。私も何回か手酷いしっぺ返しをされたことがあるわ。結婚して親になってからはだいぶ落ち着いたけど、その性格は要に引き継がれてるみたいね」
蛙の子は蛙、ということか。というか、少なくとも私達から見たらかなり大人しい人に分類されるだろう眞澄さんからしっぺ返しをされるって、光さんは一体何をしたんだか。
呆れ半分、驚き半分といった気持ちになりながら、私達三人はへぇ~と納得をする。特に千草は終始頷いていた。さてはお主もなんかやったな?
「とにかく、これは確かに預かりました。一度私達で内容を精査するから、それが終わったら他の子達も集めて会議を開くわ」
「分かりました」
「どのくらいになりそうですか?」
「あなた達の事を考えると週末でしょうね。それまでにはこっちも終わらせるわ」
はーいと揃って返事をしながら私達は光さんが仕事をする会長室から退室する。ただでさえ忙しいのに邪魔をし続ける必要もない。もうそろそろ『魔法少女協会』が設立されて一か月だけど、各方面との調整や、スポンサーとのやり取り、今後のかじ取りの方針等々、やる事は盛り沢山みたいだ。
光さんがかなり手広くやってる、というのもありそうだけどね。職員さん達はいつも忙しそうにしているし。
「あら、貴女達来てたの?今日は個別の訓練ってスケジュールだったはずだけど」
本部ビルの廊下を歩いていると書類を両手に大量に抱えた明依さん。もとい番長とばったり鉢合わせる。この人も変わらず忙しそうだ。とはいえ、雛森さんのように私達魔法少女の全てを一人管理しているのではなく、数人で分担してやっているらしい。
全員元魔法少女で信用と仕事が出来る人材を集めたらしい。その辺りは雛森さんよりも随分マトモな環境で仕事していそうだ。
「今日はちょっと別件で。後で光さんから話があると思います」
「ふーん?ま、上からの指示を待ちましょうか。それとどうだった?例の彼女、今日治療のはずだったと思うけど」
「その件もあって寄ったんだ。無事に済んだ。それについてもまたお義母様から話があると思う」
そう聞いて露骨に顔を顰めた。光さんから降りて来る話が大体無理難題か、面倒な案件だというのは既にこの一か月で身に染みているらしい。
私達ですら予想が出来るしね。大人にはその辺り頑張ってほしいところだ。
「あの人、今度は何をやらかすつもりなのかしら。優秀過ぎる人が上につくのも考え物ね。追いかけるのが大変だわ」
「迷惑をおかけします……」
案の定、色々と振り回されているようだ。ホント番長には迷惑をかけている気がする。ここ最近は戦闘指導も率先してやってもらってるし、頭が上がらなくなりつつある。
あだ名の番長は撤回しないけど。
「その娘の貴女達も、他の魔法少女も大概だけどね。全く、どうして優秀な人ってこうも個性的なのかしら」
「番長も大概だと思うが」
「あぁん?」
ギロリと睨まれて千草は私の後ろに立ち位置を変える。オイ、長女。次女を盾にするんじゃあないよ。というか一番体格がデカい千草が私の後ろに隠れないで欲しい。
千草の脇腹にひじ打ちを叩き込みながら、番長の個性派ぞろいというのは同意だ。ウチの魔法少女はなんだかんだ皆キャラが濃いと言うか、よくもまぁあのまとまりの無さそうな性格が集まって上手く行ってるものだと思う。
リーダーの碧ちゃんと、司令塔の紫ちゃんのおかげかな。あの二人の存在は大きいよなぁ。
「貴女も大概よ。真白」
「真白お姉ちゃんも結構変人だと思う」
そんな人を変人筆頭みたいに言わないで欲しい。私はいたってノーマルというか平均的だと思うよ。ホントに。
「いや、お前が多分一番の変じいったぁっ?!」
余計な口を開くおバカは脛を蹴って黙ってもらった。




