取り戻した日々
学校に関しての積もり積もった話もそうだし、委員長がどうしてこんなことになっていたのかの話もある。そもそもあの時、委員長に意識があったのかどうかそこから確認もしなくちゃいけない。
でもそれは委員長に辛い事を思い出させる話でもあって少し憚られた。
「んとね。まず真白ちゃん、ごめんね」
「え?ごめんって?」
「だって、その……、私の魔法で……」
そう言われて思い出した。そういえば、私ってば委員長の魔法でぽっかりお腹に穴を開けられてたっけか。ケガの治療自体を全くしないで戦闘に復帰したからすっかり忘れていた。
申し訳なさそうにしている委員長にちゃんと治ってるから大丈夫。と言い聞かせる。アレは委員長の意思じゃない事はよく分かっている。アレを指示したのはクライスだ。
問題は、そのクライスも【ノーブル】の手によって大よそ人と呼べる生き物では無くなってしまっていることだけどね。
少なくとも、理性や知性。人間らしい思考回路は失われているように思う。人から外れてしまったあの男を人の法で裁くのは難しいだろう。
「でも、私、皆に酷い事……」
「気にするな。そうさせないためにお前を何とかしてあっちから取り戻したんだ。こうして目を覚ましてくれただけで私達としてはむしろありがたい事なんだよ」
「今日ね、かなめお姉ちゃんが好きなお茶持って来たんだよ。一緒に飲も」
それでも落ち込む委員長に千草と墨亜もすかさず声をかけて、近くに待機している雛菊家のメイドさんにお茶の用意を頼む。
彼女達は雛菊のメイドの中でも特に古株で口が堅く、委員長の身を案じていた人を選抜したらしい。おかげで、魔法少女の話についても気兼ねなく話が出来る。
「ありがとう。でも驚いた。諸星家の3姉妹が揃いも揃って魔法少女だなんて」
「こっちも最初は驚いたよ。まさか要が魔法少女だったなんて思ってもいなかった」
「ホント。氷の魔法少女なんてカッコいいから羨ましいなぁ」
委員長の潜在能力はかなりのものだ。前回、操られた状態で戦ったとはいえ、あの魔法の構築スピードには手を焼いた。障壁を構築する前に相手の魔法が既に放たれてるなんて、正直堪ったモノじゃなかったし。
「3人の方が凄いよ。3人ともずっと魔獣と戦って来たんでしょ?私は怖くて、憧れてるだけだったから尊敬するなぁ」
「えっへん。墨亜も頑張ってるよ」
「ハイハイ」
胸を張って鼻を鳴らす墨亜に皆で笑いながら、用意が出来たらしいお茶に口をつける。今日のお茶はアッサム。インドで生産される有名な茶葉で味が濃く、ミルクティーにするのが向いているお茶だ。今回も定番のミルクティーとして用意してくれたみたい。
皆でティーカップを傾け、温かくお茶の香りとミルクのコク。ほんのり甘い味を楽しむ。
「美味しい。この香りと味はアッサムね。しかもセカンドフラッシュの上等なやつ」
「さっすが委員長。お茶の味効きはバッチリだね」
銘柄と葉を摘んだ時期まで言い当てるなんて流石はお茶好きだ。私はまだまだその辺は香りが違うなぁ位にしかわからない。
お茶の効果もあってか、私達の会話の雰囲気は明るいものだ。委員長も思ってる以上に元気で良かった。
「やっぱり友達といると良いね。変なこと思い出さなくて済むもん」
「一人でいるとどうしても、な。その気持ちは少しわかる気がするよ。最近は私も考えが行き詰まると皆がいるリビングでゴロゴロすることにしたんだ。そうするとなんだか悩んでたことがバカらしくなってくるんだよ」
「そうそう。怖い目にあったけど、こうして秘密を共有できると肩の荷っていうの?そういうのも降りるんだね」
「わっかる。私も皆に全部話した時、すっごいホッとしたんだ」
真白の秘密はホント度肝を抜かれたけどなと千草に笑われながら、何のこと?と首を傾げる委員長にはまぁ色々ねとはぐらかす。こればっかりはすぐに話す内容じゃないし、わざわざ話すことでもないと最近は思い始めたんだよね。
だって証明が出来ないし。隠し事を隠す理由も無くなったんだけど、同時に共有する理由も無くなっちゃった。
どうしてそんなことになってるのか、って疑問は残るけどね。
まま、それはそれ。今は委員長の話についてだ。




