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路地裏の攻防

高い気温の中、エアコンの室外機から出る生温い風を浴びながら感覚を頼りに路地を進んで行く

時折異臭を感じたり、何やらよく分からないゴミが散らかっていたりなど、ロクなモノじゃない。まぁ、人気の無い路地裏なんてこんなもんだろう


だけど、やっぱりこんなところに魔獣の気配はおろか、魔法少女なんているとは思えない

それどころか人気も感じない。そもそも人が通るような道ですらないだろうから当然と言えば当然だろうけど


それでも、今も感じている感覚を信じて歩き続けていると、ふと、頭上に影が差した


「……」


直ぐに通り過ぎてしまったが、鳥じゃない。もっと大きな何かが頭上を飛び越えて行ったのだけは分かる

頭上……、もしかしてこの小ビルの上にいるのか?


当然確証は無い。ゴミ袋か何かが風に乗っていただけかも知れないが、俺はそっと地面を蹴ると、左右の壁を蹴りながら建物の上へと躍り出る


「……いた!!」


目測800m先の建物の上。多分魔法少女だ、それを追う様に三つほどの影がぴょんぴょんと跳ねまわって逃げる魔法少女を追いかけ回している


色は黄色。見た事の無い色の魔法少女とすると、俺と同じ野良か。だとするなら、あの子を追いかけ回しているのは何だ?


逃げているように見える黄色の魔法少女とそれを追う影をまた追い掛けるように、俺は足に力を込めて弾丸のように前に飛び出す

黄色の魔法少女のように斜め上に跳び上がる様に力を使うのではなく、グッと姿勢を前のめりにして走り出せば、魔法少女の魔力を帯びた身体能力なら、かなりの速度が出せる


ちょっとした力の使い方だ


「そこの魔法少女ちゃん!!何かあったの?!」


「――!!た、助けてください!!ずっと追いかけられてるんです!!」


10数秒も走れば、とりあえず声の届く位置くらいには近付けた。大きな声で話しかけると、彼女は切羽詰まった表情と声でSOSを伝えて来た


やっぱり追いかけ回されていたのは見間違いじゃ無かったか


「ん?……ほう」


その会話で追い掛けていた側の連中も俺の存在に気が付いたらしい。そのうちの一人が、俺を見て小さく声を出していたのが微かに聞こえたが、今はそれに構っている程暇じゃない


「とりあえず、そこから先は行き止まりよ!!」


三人組のその連中をコの字で囲う様に障壁を張り、足止めをする。突然の障害物に連中が足を止める

その間に俺は黄色の魔法少女のそばまで移動して、連中とは離れた場所で同じように足を止めた


「ぜえっ、ぜえっ……。あ、ありがとうございます!!えっとその、何から言えば――」


「落ち着いて。とりあえず私はアリウムフルール。わざわざ野良で活動している、変わり者の魔法少女よ。貴女、野良と言うよりは隠れね?一体何があったのか教えてくれるかしら」


肩で息をして、慌てふためく目の前の黄色の魔法少女を落ち着かせてから事情を聴く


政府所属でこの街にトレードカラーが黄色の魔法少女がいるなんて聞いていないし、野良の魔法少女でも耳にしたことが無い

つまり、彼女は魔法少女になる素質を持っていながら、普段、魔法少女に変身することなど無い隠れの魔法少女と考えるのが自然だ


「わ!!アリウムフルール!!純白の魔法少女!!テレビで聴いたことある!!あ、何があったかですけど、分かんないです!!下校中にいきなり声かけられて、変な感じがしたから逃げようと思ったら追い掛けて来たんです!!」


「元気ねぇ、貴女」


息を切らしていたとは思えない位の溌溂さで返事をしてくれた黄色の魔法少女は、どうやら俺の事も知っていたらしい


まぁ、最近は地元ニュースでちょくちょく取り上げられてるからなぁ。【謎の純白の魔法少女!!】とかそんな感じのテロップが出て、アナウンサーの人達の説明と、魔法庁支部の記者会見の様子なんかが流れていた筈


Tips:魔獣

人間界において、過剰に魔力を体内に溜め込んでしまった動植物の総称。


哺乳類型、飛行型、虫型、水中型、植物型など、元になった生き物とその特徴によって、大まかな分類分けがなされている


脅威度、と呼ばれるランク分けがされており


C:実弾兵器は通用しないが化学兵器等で倒し切れる魔獣


B:化学兵器も通用しない魔獣。放置すると一匹で最低100人程度の規模の被害が想定される


A:魔獣の中でも強力な個体。ある程度の知性が見受けられ、熟練の魔法少女でないと討伐が難しい。500人以上の被害が予想され、小規模の街を壊滅させられる


S:災害級。人類史において3度確認された。大規模な都市を壊滅させるほどの力を持つ


とされる



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