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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
紅き騎士の誓い

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大人たちの反撃

魔法庁のゲートに到着すると警備の人達から止められるけど、こちらの身分と要件を確認次第通される。

良いのかと聞いてみると彼女はすがすがしいまでの笑顔でこう答えて見せる。


「あのクソが引きずりおろせるなら、それに越したことはないので。それに捜査の阻害をする権限を私は持っていませんので」


「相当嫌われてるな。君も元はここの所属の魔法少女だろう?」


「もう何年も前の話です。今の後輩たちは上手く逃げていたようですけど、私達の代ではセクハラ紛いのことも多かったですから」


「それは良い話を聞いた。立件出来る案件が増えそうだ」


入口のゲートで仕事をしている警備員の中には元魔法少女もいる。あまり長い期間活動していなかった彼女にすらこう言われるのだから、支部長がどれだけ嫌われているのかがよく分かる。


私はここを空けていることが多かったからそれほど嫌な目にあったことは無かったけれど、常にここで仕事をしていた魔法少女達には同情してしまう。

今の子達は雛森さんを筆頭に防波堤になっているようで、そういった機会は減ってはいるようだが、それがまさか野良の魔法少女に向くとは誰も思っていなかった。


「では、無事に終わることを祈っています。ここからはネズミ一匹通しませんので」


ビシッと敬礼をしてゲートを開けた彼女に見送られながら、私達は魔法庁の駐車場に車を停め、魔法庁庁舎の中へと足早に入っていく。


千紗さんを伴って廊下を歩いていれば職員とはすれ違い、千紗さんの顔を見て誰だ?という顔をしてから、私の姿を見て私が招き入れた客人だと判断して挨拶もそこそこに自分の仕事へ戻っていく。


ごめん、これからすっごい騒ぎになると思うけど今は言えないから後で色々説明するね……。

共に仕事をすることも多い職員たちに心の中で謝罪をしながら庁舎の最上階、支部長室の前まで案内を終える。


無言で目配せをして頷くと、コンコンとドアをノックして中にいるはずの支部長へと声をかける。


「支部長、東風です。次回の派遣先への調整のお話を伺いたいのですが」


「入りたまえ」


返事が返って来た。中に確実にいることを確認した私達は両開きのドアを開くと素早く中に入り込んで変身をする。


ただの人間であるはずだけど、警戒をするに越したことはない。斧槍と弓、それぞれの得物の切っ先と照準を合わせられた支部長は動揺することなく、いつも通り公務用の皮張りの椅子に深く腰掛けていた。


「……なんの真似かな?」


「その胸に聞いてみたらどうかな?魔法庁南東北支部、支部長の権田(ゴンダ) 智則(トモノリ)殿。アリウムフルールに対する著しく事実と異なる逮捕状要求に関する公文書偽造の容疑、並びにテロ組織【ノーブル】との関与が疑われている。貴殿には速やかに投降してもらい、私達魔取りの聴取を受けていただきたい」


魔法具の弓を引き絞り、魔力の矢をつがえながら淡々と支部長にこの場に来た要件を伝える。


魔法少女二人に、しかも飛びっきりに強い魔法少女に武器を向けられても尚、一切動揺することなく佇む支部長に私達は警戒度を上げる。何かある、そう磨き上げられた戦いの勘が告げている。


やがて、支部長は少し俯いた後にクツクツと肩を震わせ、やがて大きな声をあげて笑い始めた。


「ハハハハハハ!!ケツの青い小娘だけではなくなったか!!いやいや、当然か。少女とは名がつくものの君たちは立派な女性となったわけだ。くくくっ、時には熟れた果実を楽しむのも一興か」


その言葉にぞわりと肌があわくり立つ。遠回しに一言っているけど、その言葉の裏に隠された意味合いに気が付いたからだ。気色が悪い。


命を張って戦う魔法少女達をそんな目で見ていたのかと思うとより一層だ。


「上からはかなりの圧力をかけたと思ったのだがな?中央の爺共も一枚岩ではなかったか。それによもや【ノーブル】の事まで知られるとは。私は小さな魔獣信仰の関係者とお茶を飲むくらいだったのだがね。テロ組織、とまで明言されては尻尾は掴まれてしまっているということか」


「私達を見くびらないでいただきたい。今頃、各地の魔獣信仰団体に仲間が一斉捜査に入ったところだ。貴方も逃がしはしない」


魔取りがかなり大規模に動いていることに驚きつつも、私も槍の切っ先を支部長から外さない。

何かある。絶対に、この支部長の余裕はハッタリのそれじゃない。


緊張感にかいた汗を額に感じながら一挙一動も見逃さない。睨みつけ、静かに集中する私達に支部長は再び笑いながら椅子に寄りかかる。


「参ったね。我々の貴重な資金源だったんだが……、いやいや君達の成長を喜ぶべきかな?」


「ふざけたことばかり言っていないで大人しく投降しては如何ですか?」


「良いじゃないか、少しの語らいくらいは。素直に君達の成長を私は喜んでいるよ?その方が、『奪いがい』がある」


一瞬で沸騰しそうになった怒りに身を任せなかっただけ、私も言葉通りに成長したということだろうか。

動きかけた斧槍の切っ先を理性で抑え込み、怒りの篭った視線で支部長を射抜く。それは隣にいる千紗さんも同じようだ。


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