真正面からぶち破れ
翌日、改めて私達は私についての事、妖精についての事などなど各々についてきっちりとお互いに情報を共有した。
魔法少女達も含めてだ。これにより、私達全員に魔法少女が如何にして生まれたのかが周知されることになった。
とは言うものの、私達の反応は案外ドライだ。
「妖精が原因でウチらの世界に魔力が流れ込んで来たっつても悪いのはそのみょうちきりんな実験をしてた連中と、パッシオ達を厄介者扱いしてこっちに寄こした連中だしな~」
「むしろパッシオ達がいなかったら、私達って今頃全滅してるってことでしょ?だったらむしろラッキーなんじゃないの?」
「私たち自身もこうして身を守る手段を得られましたしね。願わくばもっと早い段階で協力が出来ていたら、とは思いますけれどそれが難しかったからこうなってしまっている訳ですから」
と概ね肯定的、前向きな意見が多数。元よりそこまで気にすることでもなく何ならラッキーな出来事じゃないかという捉え方だ。
藤子さんのようなファースト世代の魔法少女ともなると、妖精が強制的に魔法少女にしていた経緯もあって当時の魔法少女達には反感も買いそうなものだけど、朱莉達の世代になると適応して自ら魔法少女になった世代だ。
妖精達はむしろよく頑張ったじゃないか、と別の視点からの意見になったのはここに理由がありそうだ。
「パッシオ頑張ったね~」
「良い飼い主に出会えて良かったっすね」
「飼い主じゃなくて相棒と訂正しておくよ」
「殆どペットだろう。ま、頼りにしてるよ」
変わらずペット扱いなのはパッシオ本人は大変不服そうだけど、見た目が小動物だから仕方がない。デレデレするようなら考え物だけど、その様子もないしね。したらどうなるか分かってるとも言う。
そんな感じで世界の常識を根本から覆す話はひじょ~に緩い雰囲気で伝播された。
私としてもこんなので良いのかと思うけど、当の本人たちが全く気にしていないので誰も何も言えない。
大事になるだろうなと予想していたパッシオが一番肩透かしを食らったとボヤいていた。
「君たちは強かなのか能天気なのか判断に困るね」
「ずっと悩んでるより良いじゃない。パパっと切り替えられるのはきっと私達の良いところよ」
「まぁね。それを出来るだけのバックアップもあるって証明でもあるのかな」
パッシオの言う通り、それだけの判断の速さはバックアップが強力だからこそだと思う。何をしても、どうなっても、後ろについている人たちが後のことは何とかしてくれるという安心感が私達を振り返らせない力になってるのは明らかだ。
そのバックアップ。大人たちは今大わらわという様子でバタバタとしている。駆け回っている訳では無いのだけれど、忙しなくどこかと連絡を取っていたり、書類やメールに目を通したりしてるのがハッキリわかる。
こうして一つの部屋に集まったけど、既に私達より情報の共有を済ませていた大人たちは話に参加するよりは私達の様子を観察しているというのが正しい。
「話は大体ついた?」
「あ、藤子さん。ハイ大丈夫です」
ばたばたしている大人たちを尻目に、今後私達はどう動くかという話になっていったところで藤子さんから声がかけられる。
「妖精の件は大体だな。ウチらで騒いだところで何かが動くわけでもねぇ」
「問題はアリウムの指名手配の話だな。そっちをどうにかしないと後が面倒だ」
「支部長シメるのがやっぱ一番早いんじゃない?」
「それだと本当に警察沙汰じゃない」
手が早いのが多くて困る。そんな野蛮な解決方法でどうにか出来たら世話ないわよ。向こうの誤解、或いは逮捕状そのものが無効になるような何かを掲示する必要があるのだけど、それを一体どうやって用意するかだ。
私の身元が特定出来ないのが今回の逮捕状騒動の原因らしいのだけれど、ならば身分を明かせば良いではないかと思ったのだけど、事態はそんな簡単なことではない様子。
どうやら支部長を含めたお偉いさんは本当の意味でアリウムフルールを囲い込むことが目的である節があるらしい。
簡単に言うと、私が自首というのは違うけど自ら身分を明かしたら最後、中央政府から帰って来れなくなる。
どこのディストピアだ、と突っ込みを入れたいところだけど、人類が滅亡の危機にある時点で割合ディストピア寄りなご時世なのだ。とにかく、お偉いさんは保守主義な傾向が非常に強い。
魔法少女がお上に是が非でも近付かない理由でもある。成人した頃合いで独立するのはこのため。
殆ど街ごとに鎖国をしているようなものでもあるうえに外部からの監視も薄いので上層部が腐り易いのだ。
「お上ごと僕が焼こうか?」
「結構物騒なことを言うね君は。そうして欲しいところだけど、それをすると戦争になりかねないからね。勘弁しておくれ」
そうなった以上、絶対にそれを許さないのがパッシオを含めた保護者組だ。私の逮捕状の話が出た時にそれはもう大変な騒ぎになったそうだ。主に光さんが。
パッシオはパッシオで国の上層部ごと焼き払う気満々である。出来てしまいそうだから止めてほしい。
「ま、そこで私から提案だ」
「何かいい案があるんですか?」
藤子さんからの提案、というからにはそれはしっかりとしたものだろう。確実に遂行できるのであればそれに越したことはない。
そう思い、身を乗り出した私達に対して藤子さんは腕を組んでこう答えた。
「真正面から魔取りをぶっ倒していいわ。アレは負けてからじゃないと話を聞かないから」
「わぁお。脳筋」
この感想は間違いではなはずだ。物凄く野蛮な提案だぁ。




