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覚悟を決めろ

工夫し、何とか生き延びようとして来た妖精達だけど、一人二人と僕らは倒れていった。


生来、魔力量が多く、身体を小さくするなんかの工夫もあってか生き延びていた僕だけれど、今年の夏にいよいよ限界が見える。


あの茹だるような暑さの夏の日。僕は一月後に死ぬだろうなと確信していた。それだけ魔力が減っていた。そんな中、偶然まだ魔力の放出が出来るようになっていない人間を見つけたんだ。


「それが、真白様ですか」


「うん。僕は生きるために、咄嗟にさっき皆に伝えた事とは別に自分の立場を偽った。いくら戦争に負けたのが原因とは言え島流しになった様な輩のことを信用してもらえるとは思えなかったし、僕はあくまで人間を救いたいんだ人間の味方になりたいんだと主張した。なんとかして真白に魔法少女になってもらって、僕が生き続けるための都合のいい安住の地になってもらうために」


僕は僕の都合のために、真白を騙して戦いの道に引きずり込んだんだ。

あのオンボロのアパートの部屋の隅で、今とは違うくすんだ眼をした真白を僕は嘘で塗り固めた物を餌にして、僕が楽をするために真白に戦う理由を与えて連れ出した。


「殆ど博打だった。これが上手くいかなかったら無理やりにでも魔力を奪うことすら頭によぎっていた。でも成功して、僕は今ここにいる」


ここに、いてしまっている。僕は本来ならここにはいない存在だ。とっくの昔に死んでいるはずの命が、何を間違ってかここまで生き延びてしまった。

生き延びてしまって、僕は今、本気で真白を守りたいと思っている。


騙しておいて何を言っているんだと、自分でも思う。罪悪感か?後ろめたさか?それとも、貰った魔力で以前に近い力を取り戻しつつあって浮かれているのか。

何にせよ、真白が知ったら幻滅されるだろうね。日頃からボディーガードを名乗っておきながら、そのボディガードが日銭を稼ぐために雇い主を危険地帯に連れ込んだようなものなのだから。


そんなことを脳裏に浮かべていると、先ほどまで一番怒っていただろう美弥子さんが近くに寄って来て僕の顔を覗き込む。

あまりの近さに僕は思わずのけ反るけど、美弥子さんはなんのそのといった表情で非常に困る。


「な、何かあったかい?」


「いえ、あまり自分だけを悪者にするのも如何なものかと」


「はい?」


「真白様を外へと連れ出してくださったのはパッシオ様ということです。あとはご自分で考えてください」


はてなマークを浮かべ続ける僕に、美弥子さんはプイっと知らん顔をしてさっきまでいた場所に戻っていく。

え、一体どういう意味?本気で分からないんだけど。助けを求めて周囲に視線を向けるけど、全員に知らんぷりをされて、僕は一層混乱する。


「その件は真白とじっくり話し合いなさい。きっと、あの子も私達とおんなじ反応をするでしょうから」


「は、はぁ……」


「それより、ここまでが前振りでしょ?貴方が持っている、貴方自身の情報まで出して私達に何をさせたいのかしら?」


生返事をする僕に光さんはくつくつと笑って、次を催促して来た。あれ?思った以上に手ごたえがないぞ?どうしてだ?


いや、この際それは良いか。とにかく、僕が語れることは実際ここまでだ。

これを聞かせてまで、光さん達に何をして欲しいのか、それが本題だ。


「僕が頼むのは真白についての事だ。彼女について、僕から一つの提案と報告がある」


「提案と報告?真白ちゃんについて?」


「聞いた感じですと、パッシオさんは真白さんの詳細についてはそこまで詳しいようには思えませんけれど」


僕が真白について詳しいかと問われれば雛森さんの言う通り、そこまで詳しくはない。生まれがどこなのか、誕生日だってこの前知ったし、昔に何をしていたのかとか家族関係についても知らない。


でも、恐らくこの世界で僕しか知らない事実がある。僕だけが覚えている本当の事がある。それを伝え、どうするかを共に検討してもらう。そのために僕と真白の関係をしっかりと話す必要があった。


「諸星真白。本名、小野真白は僕が覚えている限りでは26歳の男性だったんだ」


彼女すら忘れてしまっている彼の本当のことを伝え、これ以上の記憶の損失を防ぐために原因と仮定される魔力を使う行為を少しでも減らすべきではないか。


それが僕がこの場にいる全員にしたい提案だ。


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― 新着の感想 ―
[一言] パッシオはただ記憶を失ってるだけだと思ってるみたいだけど、実際はその程度じゃないんだろうな
[一言] まあ確かに、あのままパッシオに会ってなかったら、真白はただ生きてるだけの物みたいになってただろうしね。 最後、たぶん全員目が点になってる
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