誕生日を祝おう
誕生日のパーティーはとても盛り上がっている、というか楽し気な雰囲気が終始続いている。
話題は基本的にはやっぱり私のことも多いけど、それぞれ皆が好きなようにお喋りをしながら料理を楽しんでいる。
「アンタも好きねー。お餅なんてお正月になったら沢山食べられるじゃない」
「それはそれ、これはこれなの」
私が今食べているのは、お餅ニョッキが入ったクラムチャウダーだ。ニョッキは本当ならジャガイモと強力粉を混ぜて作った洋風すいとんみたいなものなんだけど、これをお餅で使って代用しているみたい。
コクがあってちょっとどろりとしたクリームソースとお餅がよく絡んで美味しい。ベーコンの塩味と舞茸の風味もいい感じ。
流石は諸星家お抱えのシェフ。色々なアレンジレシピを考えてくれる。
「真白先輩のお餅成分は全部ほっぺにいってそうっすね」
「それは間違いないな」
「真白お姉ちゃんのほっぺもモチモチだもんね」
もぐもぐと食べ進めながら、皆とのお喋りはとても楽しい。前のピクニックの時もそうだったけど、こうやって何でもない時も集まって一緒に過ごしていると結束力というか、団結力というか、戦っている時も多分こう動くというのがなんとなくわかるようになって来たなぁと最近は思う。
クライスが元になった魔獣と戦った時も連携のし易さが以前とはけた違いだった。仲良くなるっていうのはそういうメリットもあるんだなぁ。
「ところで、なんでお餅が好きなんですか?」
「なんでって?」
「いえ、なんとなく聞いただけなんですけど。好きな食べ物でお餅って答える人も珍しいような気がしたので」
「普通はカレーとか、ハンバーグとかさ。料理名だろ?餅ってよりは雑煮とかそう言われたほうが自然に聞こえるじゃん?」
紫ちゃんと碧ちゃんに聞かれて、私はうーんと唸る。なんでお餅が好きなのか、と言われても個人的には好きだからというのが最適解なわけで。
好きなものの好きなところを教えて、と言われると意外と答えるのが難しいね。個人的な感性によるものだし、結構漠然としたものだと思う。
「んー、食感?」
「疑問形なのか」
「だって考えたことなかったもん。食べて美味しかったから好きなわけだし」
私の答えにみんなもそれもそうだと頷く。映画とか漫画とか音楽とかなら、ここがめちゃくちゃカッコいいとかこのシーンがカッコいいとか歌詞が良いとかそれぞれ言えるかもだけど、好きな食べ物がなんで好きか、なんてそんなに考えるものでもないだろうからさ。
因みにお餅は突き立てが一番おいしいのは間違いないと思います。焼き餅もいいけどね。あつあつとろとろでお米の甘みが一番するのは突き立てほやほやのあのお餅が一番なのだ。
「全身お餅にならないようにしないとね」
「おデブにはなりません~~」
意地悪を言う朱莉にイーッと歯を見せてからまた料理に手を伸ばす。美味しいのは良い事だ。どんどん食べれる。身体が資本の魔法少女であって、身体が皆より出来上がっていない私はとにかく食べて動いて寝るのが一番の仕事になってるわけだし。
実際ひょいひょいぱくぱくと食べている私の横で、紫ちゃんがドカ食いしている。流石は由香さんの娘なだけあって、痩せの大食いだ。ホントに一体どこに入っていくのだろう。
他の面々も、少なくとも身体の小さい私や墨亜よりは食べていたりする。
身体を作るのは食べ物であって、エネルギーを補給するのも食べ物。普段からトレーニングやら何やらで他の人より動きまくる魔法少女はピクニックの時も思ったけど、基本的にめちゃくちゃ食べる。
「追加のお料理をお持ちしましたよ。そろそろデザートの方がよろしいですか?」
「置いておいてくれりゃ勝手に食っておくぜー」
「デザートは誕生日ケーキに決まってるだろ」
美弥子さんがもって来た追加の料理も早速皆で争奪戦。そろそろデザートのことも考えておかないといけないし、誕生日ケーキがお腹に入らないという事態は流石に避けたいしね。
OKサインを口をもぐもぐさせながら出しておくと、美弥子さんはニコニコ笑いながらかしこまりましたと言ってまたダイニングから出ていく。
ケーキはどんなのか楽しみだ。それもお餅を使っているのかも知れないし、期待は大きい。
そうしてわくわくしながら出て来たのはなんと大福のようにお餅の生地で包んだ和風ケーキだった。
あんこと生クリームの組み合わせって美味しいんだね。初めて知った。
こんな感じで私達はたくさんお喋りしてたくさん食べた。お腹いっぱい。けぷっ。




