それぞれの魔法少女
どれくらいの時間が経っただろう。
10分?20分?それとももう一時間近く経っているのも知れない。時間感覚が薄れる程、集中していた俺は滴って来る汗を拭いながら、ただひたすらルビーに治癒魔法をかけ続けていた。
外傷、内傷関わらず出血している個所から血を止める程度まで治癒させ、そこから体内の骨折や脱臼、内臓の損傷などを可能な限りチェックし、治癒させていった。
一番の幸運は、気を失った状態で落下しながらも脳や頸椎、脊髄と言った最も重要とも言える箇所に怪我が無かったこと。
ここに怪我があれば、治癒出来たかはハッキリ言って自信がない。
医療も魔法も万能ではない。出来ないことは出来ない。医療で脳や頸椎の損傷を治療することが困難な様に、治癒魔法でそれらを完全に治療出来るかと問われれば、やったことが無いから分からないと答えるしか無かったが、その部分に怪我も損傷も無かったことは、俺を多少なりともホッとさせた。
「アリウム、外は終わったようだよ。治療の方はどうだい?」
「山は越えた、と思う。後は自然治癒でもなんとかなると思うし、魔法庁支部には治癒魔法を専門に扱う部署がある、なんて聞いたことがあるから、後はプロに任せよう」
俺はあくまで看護師で医者じゃない。そして、治癒魔法を扱う側としても魔法少女なりたてのペーペーの俺よりも、治癒魔法に精通したプロはいる。
特に生傷の絶えない現役の魔法少女達のバックにそれがいるのはごく自然な事。
もうルビーの呼吸も脈も安定している。顔色は出血のせいで悪いままだが、しっかりと休養を取ればそれも問題ないと思う。
「んん……っ?あれ、私……あいたっ?!」
「あら、早起きねルビー。今はまだ動いちゃダメよ?私が出来る応急処置はしたけど、無茶をすれば傷が開くわ」
「アリウム……?あ、そっか、私……」
大怪我をしたせいで、まだ記憶が混濁していたようだが、ルビーはすぐに今の状況を把握して息を大きく吐いた。
安心したような、夢見心地のような、まだ現実を掴み切れていなさそうなボヤっとした顔だが、彼女はしっかり今の自分がおかれた状況を理解している様だった。
「すぐに駆け付けられなくてごめんね。よく頑張った、偉いわ」
「でも私、全然――」
そっと額を撫でながら、褒めてあげるとルビーの瞳は不安そうに揺れる。自分が、全然役に立ってないとか、そういうことを思っていそうな表情だ。
全く、この子は真面目過ぎる。不調な状態で魔獣を足止めしただけで大手柄だ。
誰が何と言おうと、彼女は自分に出来る最善を尽くした。それを責めるなんてこと、俺が許さない。
「良いの、貴女は頑張った。出来ることをやったの。怖い思いも痛い思いもしてでもやらなきゃいけないことをやった。とっても立派よ」
「うん……」
本当なら、それをやらなきゃいけないのは大人だ。それを子供の彼女がやるのはどれ程の覚悟と勇気がいるのだろう。
こういう時、馬鹿な大人は子供故の蛮勇などと嘲るのだ。自分はできもしないクセに。
ともかく、ルビーが無事で良かった。この後、本格的な検査や治療があるはずだが、ここまで意識がハッキリしているなら後は怪我の回復を待つばかりだろう。
ホッと息を吐いた俺を不思議そうに見つめるルビーに優しく微笑んでいると、外がようやく落ち着いたのか、バタバタとした何人もの足音がこちらに近づいて来るのが分かった。
「ルビーは大丈夫か!!」
「ハイ、ストップよアズール。そんな飛び掛かる勢いで来られたら余計な怪我が増えるでしょ?」
「あいたァッ?!」
ガゴンっと勢いよく展開した障壁に突っ込んで来たアズールが床にひっくり返り、痛みに悶絶しながらのたうち回る。
相変わらずこの子は落ち着きがない。いの一番にやってくるのは結構だが、ああも突進してこられたらたまったものじゃない。
それと、うら若い少女が床でジタバタするものじゃありません。スカートが捲くりあがって見えなくて良いものが見えてしまっている。
全く、と呆れる俺の横でルビーはクスクスと笑っていた。ようやく、この騒ぎは収まりそうだ。
日間『総合』ランキング195位?????
ごめん、ちょっとよく分からない
ジャンル別も16位まで浮上してます。マジか
ここ数日作者がひたすらに困惑していますが、読者のみなさまにはひたすらに感謝です。ありがとうございます
このくらいのペースが維持出来れば最高ですが、どうなるかわからないのが現実。明日になれば急に落ち込む事なんてザラな界隈です
作者のモチベーションだけでは無く、少しでも多くの人に目について欲しいのが本心ですので、出来れば
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