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そうだ街へ行こう

街中移動用のミニバンに揺られ、集合場所である朱莉達が住んでいる団地へと向かう。あそこに行くのも久しぶりな気がする。3か月くらいは行ってないのかな。


住んでたアパートも近いけど特に用事もないし、久々に見る風景を車窓からぼぉっと眺めていた。


「そろそろでございますよ」


「ん、ありがと」


運転手の田所さんに言われて、服装を軽くチェックする。ネイビーのコートに少し色合いの違う暗めの青いセーターを着て、白のロングフレアスカートにグレーのショートブーツ。

同じくグレーのニット帽にいつもの白いマフラー。それに財布や『イキシア』、ハンカチの小物を入れた白くて小さなショルダーバックを忘れないようする


よしっ、大丈夫。美弥子さんコーデだし、変なところは無いはず。

意気込む私に田所さんは鏡越しに微笑んでいるのが見える。それにピースをして応えると嬉しそうにしていた。


「到着いたしました」


「お気をつけて楽しんでいらしてください」


「うん、行ってきます」


一緒に乗り込んでいた美弥子さんにも見送られ、私はミニバンのスライドドアから外に出る。

完全に一人で外にでるのなんて夏以来だ。色々と環境が変わってからは初めてのことに不安と緊張が頭の中に浮かび上がってくるけど、ふるふると頭を振って不安を吹き飛ばす。


駆け足で団地に囲まれた公園の中に入ると、休憩用の東屋のベンチで待ちぼうけしている朱莉の姿が目に入ってくる。


「朱莉―!!」


「あっ、来た来た。流石に遅刻はしなかったか」


「美弥子さんに起こしてもらった!!」


「自慢げに言うことじゃないわよ。ホント、変身してる時とギャップが凄いわね」


手をぶんぶん振りながら朱莉のもとに駆け寄ると、暇そうに操作していたスマホから目を離して私の方を見る。

軽く冗談も交えながら挨拶を交わしてから朱莉もベンチから立ち上がるとじゃあ行きますか、と早速移動することになった。


「今日って何するの?」


「んー、とりあえず少し人ごみに行ってみてね。アウトレットモールなんてどう?人は多いけど、密集してるってわけじゃないし、座って休憩できる場所も多いし」


「全然わかんないから任せた」


あうとれっともーる、と言われても何のことかさっぱりわからない。こちとら普通の学業ほっぽって世界中をウロウロした後に引きこもりを1年した身である。

直訳するとショッピングセンター出口で全く意味も分からない。


首を傾げて全てを放棄した私に朱莉はさっそく顔を覆っていた。

そ、そんなにダメだったかな……。


「あんた一応一人で生活してたんでしょ?普段どこで何を買ってたのよ」


「お、主にエイトイレブンとウニクロです……」


「世間知らずの上に干物系女子とはね……」


「ひ、ひもの……」


以前よく行ってたお店をあげたら干物という評価をされてがーんっと衝撃を受ける。

だ、だって便利じゃん。なんでもあるし安いし、種類も機能もしっかりしてるし。あったかテックとか冬の必需品でしょ?!あれ外国にいても最高だって評判だったよ?!


愕然とする私に朱莉はひとしきり頭を抱えた後、ため息を吐いてから困ったようにはにかんで私に話しかけてくる。


「じゃあ干物お嬢様に庶民の暮らしを教えてあげましょうか。遊び方もね」


「ひ、干物言わないでよ!!」


流石に干物の称号はあまりにも不名誉。ぐぬぬぬ、こうなったら意地でも色々覚えてやる。

意気込み増す私とけらけら笑う朱莉と一緒に公園を出てバス停を目指す。


交通手段も一般の交通手段を使ってみるというのが今回の大きなポイントだ。不特定多数の人が比較的狭い空間に集まるバスや電車でも私が問題なくいられるかが大きなポイントの一つ。

ただ、パーティーで平気だったのを考えればよほどのことが無い限り大丈夫なはずだ。


「楽しみね。真白とこうして二人で遊びに行くなんて思ってもみなかったわ」


「私も。今日はよろしくね」


バス停でバスを待ちながら、二人で笑う。不安と緊張はもうなくなっていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] んー、これは干物ですねえ
[一言] へぇー デートかよ
[一言] 不安がなくなったようでなにより
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