それぞれの魔法少女
辺りの雑音が消え去る程の光景に、誰もが一時の間思考が停止する
何故傷だらけのルビーが空から落ちて来たのか、何がルビーをそこまで傷つけたのか、何故なにどうして、何が起こったのかを誰もが理解できない中、直ぐに意識を切り替えたのは医療の現場で戦い続けていた俺だった
「ルビー!!」
傷だらけのルビーに大急ぎで近づき、直ぐに目で確認できる怪我を確認する。とにかく裂傷、切り傷が大きいのから小さいのまで無数にある。後は落ちた時の恐らく打撲、何かに締め付けられたような跡の鬱血も見られる。後は落ちた衝撃で骨は勿論、見えない身体の内側にも大きなダメージが行っている筈だ
幸い、脈も息もある。普通ならショック死をしてもおかしくないような怪我の量。この辺りは魔法少女だからこそのタフさがあるのが幸いだ
「アズール!!アメティア!!ぼさっとしない!!ルビーは私が治療するから、貴女達は周囲の警戒をするの!!」
「あ、でも、ルビーが……」
「このくらいで狼狽えるな!!!!!!」
俺の口から出た飛びっきりの怒声に、二人はビクンッと肩を揺らす
近しい間柄の人間が今にも死にそうな状態で目の前に転がっているのだ。思考停止するのも分かる、どうにかしなくちゃと考えてしまうのも分かる
ただそれじゃあダメだ。俺もルビーも彼女達も『魔法少女』なのだ。下手な戦地で戦う兵士よりもよっぽど危険な相手と戦っている
仲間の大怪我くらいで身体も思考も止まる位では、彼女達の命も危険に晒される
慣れろ、とは言わない。ただ、そういう場で最善の行動を取れるようにならなければ『救える命も救えない』のだ
「ルビーは私が何とかするから、しっかりしなさい。それが貴女達が今出来る事、そうじゃない?」
「……分かった。ルビーを頼む」
「お願いします……!!」
アズールは努めて冷静に、アメティアは声を震わせて頭を下げてから、ルビーが落ちて来た天井のガラス窓へと跳び上がっていく
敵がいるならあのガラスの向こう側なのは間違いない。強力な魔獣がいるのは間違いない
あの子達にその対応を任せるのは心苦しいが、今はそれ以上にルビーの治療が最優先だ
「ごめんね、ちょっと身体を動かすね」
気を失っている様子のルビーに声を掛けながら、うつ伏せ気味の体勢から仰向けの体勢になる様に抱き起す。それだけで俺の真っ白な手袋が血の色に染まるのだから、彼女の怪我の度合いが如何程なのかが見て取れる
「ごめん、パッシオ。集中するから、辺りの警戒は任せるよ」
「勿論だ。アリウムは早くその子の治療を」
「うん」
頼れる相棒に周りの警戒を任せ、俺はルビーに手を翳して治癒の魔法を発動させる
これだけの大怪我にどれだけの効果があるのかは分からないが、それでもやらない訳には行かない
「大丈夫、助けるよ。今度は、必ず……」
外から聞こえる金切り声と地響きを全部無視して、俺は全神経をルビーの治療へと向けて行った
外に飛び出して、まずウチらの視界に映ったのはショッピングモールの真上を悠々と飛び回る、バカでかい鳥の魔獣だった
とにかくデカい。翼を広げれば学校のプールくらいの大きさはあると思う
魔獣の強さは殆どイコールで体のデカさだ。デカければデカいほど強い
あのサイズと、飛行型の魔獣ってのを考えると脅威度はAクラス。ウチが何とか倒せるくらいの強さだ
元々Bクラスのシャイニールビーには確かに荷が重い。ましてやアイツはただでさえ不調だった。それでも逃げずに戦った。アイツらしいとは思う
「……あれが、ルビーちゃんに大怪我させたんだよね」
だが、それよりもウチの中には煮え滾るような感情が沸々と沸き上がっている。余裕ブッコいてルビーに大怪我させたウチもこの場で殴り倒したいくらいだ
そして何より
「テメェ、何ウチの友達に怪我させてんだよ……!!」
目の前の魔獣によって、ウチの友達が大怪我をした。それが何より許せない。テメェはここでぶっ飛ばしてやる!!
日間ローファンタジーランキング24位?????
え、いや、何が起きた
何はともあれありがとうございます。投稿からひと月で評価ポイントも1000台が見えて参りました。ブクマの方も快調に伸びております
ここまで短期間で多くの方に見てもらえたことが無かったのでとにかく驚いていますが、これからもよろしくお願いします。
いつも通り、気軽なコメント等をお待ちしております。評価ポイントもポチポチしてもらえるととても喜びます
いやでも、マジか、マジかー(語彙崩壊