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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
戦う理由と姉の矜持

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これからの戦い

メモリーにどうやって魔力を込めるのか。わからなかった方法の一つがこうして判明したことは大きな前進だ。

果たしてこれが正しいのか、他のやり方もあるのかまだまだ色々模索することはあるけれど、分かっているのと分からないの、どちらが良いかと問われれば分かっていた方が良い。


それがあまり褒められた方法じゃないにしても、だ。


「正直良い気持ちはしないな。人間に危害を加えた魔獣とはいえ、命を弄んでいるようで」


「でも、生き物ってそうやって生きてるんだよ?私達で倒したのなら、私達でしっかりと消費していくのが私たちの責任じゃないかなって私は思う」


命を踏みにじるようだって千草は言うけど、私はそれを敢えて否定する。

この考え方は酷いと言われることが多いけど、命を間近に見ていた私はこの考え方が最も自然で、正しいモノじゃないかと思う。


命はどんなに取り繕っても消耗品。これが、私が命の在り方について思い至った結論の一つだ。

別に命を投げ出せとか、差し出せとか。軽んじているわけじゃなくて、生き物っていうのは他の生き物の上に成り立って生きているから。


食事だってそう。野菜も魚も豚肉も鶏肉も牛肉も、ほとんどの食べ物は生き物で出来ている。

そして、私たちはそれを食べて生きている。


そしてその野菜(植物)を育てる土の一部は生き物死骸が分解されたもので出来ているし、植物を草食動物が食べて、草食動物を肉食動物が食べる。

食物連鎖、というのは生き物が生きて死ぬというルーティーンはそうやって出来ている。


その中で、人間は生き物の死骸から、皮や毛、骨を使って道具を作り始めた。

どんなに科学技術が発展しても、それは変わらない。私たちは誰かの『死』の上で生きている。


そして、人はそれを供養という形で悼み、感謝をして生活していかなきゃいけない。ほら、ご飯を食べるときに言うでしょ?いただきます、ごちそうさまってね。


「命を使って悪いことをするなら、その命を遊びとかで消耗させるならそれはいけないことだと思うよ。でも、千草は違うじゃん。千草は魔法少女として、誰かを守るために使ってるよ。理不尽に傷つけられるかもしれない命のために使おうとしてる」


「……なるほど、な」


だから、救うことは難しいんだ。医療でも宗教でも、人を救うことはこれだから難しい。

命を救うために命を犠牲にする必要は、いつどんな時だって自然に発生しているんだから。


私はその中で、理不尽に虐げられた命を救うために世界中を回った。

その時も悩むことはあった。これはただの善意の押し付けで、私のエゴイズムなんじゃないかって。


それでも、私はそれが正しいと思ったから続けたんだ。一度折れても、戦い続けて傷つく女の子がいるのがおかしいと思ったから、私は今ここにいる。


「命を救うために命を使う、か。……重いな」


「それが生きるってことだよ。止めたら死んじゃうもん」


だから命は等しく平等に重い。その価値に違いはあるかもしれないけど、それを感じた時の重みはきっと変わらないと思うから。


「きっとHawkのメモリーも、使うならちゃんと腹を括れって言ってるんじゃない?」


「覚悟が足りないか。手厳しいな」


「私の勝手な想像だけどね」


苦笑いする千草と、頬をかく私。なんだか妙に生真面目なことを語っちゃったから背中がムズムズして来た。

慣れないことをするもんじゃないなぁと思っていると、周りがやたらと静かなことに気が付く。


何かと思って振り向くと、皆がこぞって感心したように私の話を聞いていたみたいでギョッとする。


「私たちは命の上に立っている、ね。すっごいしっくり来たわ」


「先輩の話はためになるっすね。ボクももっと感謝して生活しないとですね」


「私たちが倒したからこそ、私たちがしっかりと役立てる。確かにその通りだと思いました」


「命が安くねぇ理由だな」


「墨亜、ご飯はもっとありがとうって思って食べるよ」


それぞれがそれぞれの答えを返してきて、いよいよ私は恥ずかしくてしょうがない。こんな理屈だけは立派な話なんて、そもそも誰かに聞かせるものでもない。


痒くてたまらない背中を必死になって手を伸ばして掻きながらいると藤子さんからも視線が飛んで来てもうダメだ。


「そして、私達魔法少女が戦い続ける理由の一つでもあるわ。大義名分になるけどね」


魔法少女の戦う理由が案外俗っぽいのは現場でやる人間ならよく分かっている事実。それでも戦うのであるならそういうことも頭に入れておくべきだろうなとは私も思うところだ。


「だから、【ノーブル】は許しちゃいけない。あいつらは人の命をまるでおもちゃのように扱ってるから」


「だから、しょげてる暇なんてないよ?」


藤子さんとアイコンタクトをしながら伝えるべき言葉を伝える。そう、私たちにしょげている時間なんて無い。

逃げたってことは次があるってこと。私たちはそれに備えなきゃいけないんだから。


全員で気合を入れなおして、おーっ!!と声をあげて今回の戦いについてはひと段落となった。

また少し、落ち着いた生活が出来ればいいけど。


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― 新着の感想 ―
[一言] まさにその通り! 少し元気が出たようでなにより
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