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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
戦う理由と姉の矜持

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再襲来

苦しい、今回のこの戦いを評価するならこう表現するのが最も適切だと思う。

まるで分厚い鋼鉄の壁を必死に蹴り破ろうかとしているかのような、そんな荒唐無稽、出来もしないことをしている。そんな嫌なイメージに囚われる。


それもそうだ。戦いが始まって既に1時間近く経とうとしている。それであるのに、それだけの時間攻撃をし続けているのに、疲弊しているのは明らかに私達魔法少女だった。


「――はぁっ、はぁっ……。こんのぉっ!!」


低い位置を飛んでいるルビーが、息を整えてから突撃していく。自ら追い風を作り出し、それに乗って加速すると、自分の属性である火の魔力を込めた剣で魔獣を斬りつける。


ドラゴンの外殻ですら焼き斬ったその方法、それでようやく剣のふれた体毛を斬り飛ばせた程度だ。

それまで、剣という武器の最大の強みである肉を断つ、ということはルビー、それにフェイツェイも結果を出せていなかった。


それでも諦めることなく挑み続ける。自分が培っていた技術と力が一切通用しない敵を前にしても、彼女たちは引くことをしなかった。


「お二人は少し休んでください、っす!!」


そんな近距離を担当するメンバーの中で、結果を出せていたのがクルボレレ。元々、斬撃が効かない、魔法も効かない中で最も有効な攻撃手段を持っているだろうとされていた彼女は、その読み通り一番明確に魔獣にダメージを与えていた。


疲労の色も濃くなって来ているルビーとフェイツェイにサポートを受けながら攻撃をしていた彼女は疲労の度合いも小さく済んでいて、動きの鈍ってきた二人を今度は逆にフォローするようになって来ている。


「まずい、ですね……」


その状況に真っ先に危機を感じたのは司令塔のアメティアだった。

私の横に並んで魔獣に攻撃や妨害をしていた彼女がここまで緊張した面持ちをしているのを見るのは私は初めてかもしれない。


彼女自身も短時間で大量の魔力を消費しているせいでかなり疲労している。だけど彼女が危惧しているのは自分のことよりも前衛を務めている三人である様子だった。


「三人の消耗が激しすぎます。特にクルボレレちゃんのフォローもしているルビーちゃんとフェイツェイさんの消耗が酷いです。あれだと、魔力切れも近いです……っ」


「それは……」


それは確かにマズい事態だ。それもそうか、魔法少女は魔力で体力の補助もしている。それを超えて肉体的疲労を見せているということは、魔力が枯渇し始めていることを示している。


体力の補助に回す魔力はもう無いのだ。それはこの状況下でなくても最悪を意味する。

魔法少女も、魔力が無くなればただの少女だ。ただの少女が魔獣相手に出来ることはない。


「ですが、退くわけにもいきません……。どうすれば……」


そしてアメティアの言う通り、退くわけにもいかない。私たちが総出で逃げの一手も撃てば魔獣は追ってくる。逃げるということは、私たちが弱いということ。魔獣にとって、それは私たちが餌である証左になる。


今は抵抗をしているから狩り時では無いだけの話なのだあの魔獣にとっては。でも、このままではいずれ同じ道を辿ることになる。

どうにかそれを回避できないかと彼女は必死に思考を巡らしていた。


「アメティア、貴女は皆を先導して逃げなさい」


「なっ、何を言っているんですか?!」


そんな彼女に私は率直に思ったままのことを伝える。全員で逃げるのが難しいなら、逃げられる人材で逃げるのが一番だ。

これの有用性は前回アズールが実証している。そして、このメンバーの中で囮に一番向いていて、余力を残しているのも私。


私が残るのは当然の選択だろう。またがっているパッシオから物凄く冷ややかな視線が飛んで来ている気がするが、君も似たようなものだからね?怪我をおしてきてる段階でね。


「だめです。認められません」


「この方法が有効なのはアズールが実証済み。これ以上の戦線維持が無理なら、逃げられる人が逃げて、助っ人を呼ぶしかないわ」


「でしたらクルボレレちゃんだけを行かせて私達全員で……」


「足手まといよ。魔力が切れかかっているお荷物の面倒まで見ている余裕はないわ。あの化け物と私は一度戦ってる。動きの鈍った子達のフォローまで仕切れないのはわかってる」


食い下がるアメティアをピシャリと突っぱねる。敢えて酷い言葉を選んだのは、彼女が逃げるという選択を取りやすくするため。

……きっと、アズールも同じような気持ちで、同じようにこの子達を逃がしたんでしょうね。


可哀想だけど、これ以上は戦えないと言っている子達を戦わせるつもりは私はない。

無理やりにでも退場してもらう。


「きゃっ?!」


「なっ?!」


「なによこれっ?!」


「わわわわ?!」


前衛三人も含めて、鈴生りの障壁を変化させた鞭でからめとると、肥大化させた鈴蘭の花びらを模した障壁の中に放り込んでいく。壁は水の障壁だけど、中身は空洞で息もできる。多少の乱暴をしても彼女たちなら大丈夫だろう。


「増援頼んだわよ!!」


「待てアリウム!!何をしているのかわかって――」


フェイツェイのお説教が始まる前に、もう一度水の鞭で障壁を絡めとり、ブンブンと振り回して出来るだけ遠くへ投げる。

もちろん街の方角だ。それを間違えたら意味ないしね。



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[一言] まーたこの子は 無茶をして
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