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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
戦う理由と姉の矜持

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やさしさの意味

ウチが入院して数日が経った。街中でも雪がちらほら降るようになって、季節はもう冬。12月も半ばに入ろうかという時期では珍しくもないけど、めっきり冷え込む日々の中、ウチはただ病室で怪我の回復を待っていた。


「はい、今日の治療は終わり。だいぶ動けるようにはなったと思うけどもう何日かは大人しくしといた方が安心ね」


「もう全然痛くないのにまだ駄目なのかよ」


「治りかけが一番危ないの。ぶり返したくないでしょ?じゃ、私はもう行くから大人しくしてなさい」


真白に毎日治癒魔法をかけてもらってるおかげで怪我の具合は良好。あんだけ痛かった身体が今じゃすっかりなんだけど、真白的にはまだ数日は様子見らしい。


ウチとしては早く現場に戻りてぇんだけどな。真白が早々に病室を出て行ったのも、【ノーブル】に対する警戒や情報収集のために毎日駆けずり回っているからだ。

人手が欲しい中でこうして大人しくすることしかできないのがもどかしい。


「焦りは禁物さ。急いては事を仕損じる、急がば回れってね」


「善は急げ、思い立ったが吉日とも言うじゃん。てか、仕事しなくていいのかよ社長さん」


ウチの病室で呑気にノートパソコンを開きながらお喋りしている翔也さんにツッコミを入れる。

この人、クソ忙しいはずなのにウチに付きっきりなんだよな。つきっきりになるならウチよりお袋の方が正解だと思うんだけど。なんだってウチのそばにいるんだか。


因みにお袋は普通に仕事だ。早めに帰れるように調整はしてるらしいけど、学校の保健医が何日も保健室を空けるわけにもいかねぇからな。


「今時仕事はオフィスにいなくたって出来るさ。優秀な部下もいるしね。年末前だけど予定通りの範疇に仕事は進んでるし、俺はここで君が無茶をしないように見張っておかないと」


「逃亡前提かよ」


「優しい君なら、可愛い妹たちのために身体に鞭を打つだろ?」


「ちぇっ」


毎日当たり前にいるもんだから、翔也さんとの距離もだいぶ縮まった。最初からそうだったけど、フランクで話しやすい人だ。話題も豊富でウチの知らない国の話とかがバンバン聞けるのは面白い。


ただ、ことあるごとにウチを誉めまくるのは背中が痒くなるから勘弁してほしい。


「ウチは別に優しくもなんともねぇってーの。優しいのは真白みたいなタイプだろ」


ウチは別に優しくもなんともない。優しいってのは真白みたいなタイプの事を言うと思う。じゃなきゃ毎日治療のためにわざわざここに来ねえしな。

あいつは誰かのために本気になれる。優しいやつだと思う。


「うーん、真白は優しいとはちょっと違うかな。あれは義務感とか正義感とか、とにかく自己犠牲精神が強すぎる。他人には優しいけど、自分には恐ろしいほど厳しい人間だよ」


だから、周りが見ててハラハラするのさ。あれは放っておくと死ぬまで誰かを救い続けるタイプ。そう言われて、ウチは否定する言葉が見つからない。


真白は戦いの時でも平気で自分を盾にするようなことがある。自分を守るよりも他人を守ることに重きを置いてるんだ。そのための努力も半端なくて、この間から勉強と訓練に時間制限がつけられたらしい。

本人は不満そうだったけどぶっ倒れるほどの努力は身体に毒だからな。止められて当たり前だ。


「それに対して、碧ちゃんはとても周りをよく見てる。誰がどんなコンディションか、任せられるかそうじゃないか。自分も含めてしっかり判断できるのは優しいから出来ることだよ」


「よくわからん」


「優しくない人は、無理や無茶を当たり前に他人にも要求するのさ。ちゃんと配慮をする碧ちゃんは優しいんだよ」


そう言われてピンとくるような、来ないような。

少なくとも、ウチは別に優しい人間だと思ったことはない。むしろ自分勝手な部類じゃねぇかなとも思っている。


口調は荒いし態度は悪いし、初対面の大人には大体嫌な顔をされるのが大概ってやつだ。


「もっとわかりやすく言うとお姉ちゃん、なのかな。俺は一人っ子だからその辺は分からないけど碧ちゃんは7人の中で一番お姉ちゃんをしてると思う」


「姉ねぇ。そこまで頼りがいのあるようにも思えねぇけど」


歳なら千草や真白の方が上だし、最近ウチらの中心にいるのは真白と朱莉。司令塔は紫だし、墨亜も最近よく考えるようになった。舞はまだまだこれからだけど、面倒見は結構いい。

そんな中でウチが一番姉だと言われても、やっぱりピンと来なかった。


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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、一番しっかりしてそう
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