これから戦う者達へ
「……は?」
コイツ、今なんて言った?
俺が、魔法『少女』になる?コイツ、大丈夫か、頭
俺はあくまで男だ。仮に魔法少年との聞き間違いだとしても、少年と呼べる年ではない。外見年齢の話は、今はするな
それからさらにぶっ飛んで、少女?いや、冷静に考えても意味が分からん。お前は何を言っているんだ状態である
「うん、そうなるよね。それが普通の反応だ、君は間違いなく正常だよ。僕だって、今こうして君の前に立っていても、本当かと自分を疑っている」
「とりあえず、なんだ。どうしたらそういう話になったのかを教えてくれないか?あまりにも話が突飛過ぎて、頭が追い付いていない」
「うん、そうだね。僕も、冷静になりたいし、君の質問に答えながら、事の詳細を説明しよう」
頭を抱え、項垂れる俺に、自称妖精は申し訳なさそうに声音を変えながら、こちらが落ち着くのを待ってくれている
昔見たアニメだと、こういう自称妖精的なマスコットは事務的だったり、こちらを半ば騙すような形で利用していたり、ポンコツ過ぎて役に立たなかったりするが、コイツはどうやらデキる奴らしい
その辺の妖精事情ってやつも、機会があれば聞いてみるのも面白そうだ
「まず、魔法少女については知っているかい?」
「あぁ、魔獣駆除のプロフェッショナル集団だろ?皆軒並み小中学生、ってのがちょっと物議をかもしてるけど」
「まぁ、その辺りの魔法少女の仕様に関しては後で。僕はその魔法少女の素質のある者を覚醒させる力を持っているのさ」
「ふむ、続けてくれ」
この妖精とやらは、ようは人材発掘をするスカウトマン、という事らしい
恐らくは、魔法少女に適性のある少女たちをスカウトして回り、了承が得られれば、魔法少女として覚醒させるその力を行使するのであろう
それが、何故、俺のようなアラサー男子に声をかけるのか、さっぱりなのだが……
「それでね、この辺りで強い魔力適性を持った気配を感じ取ってね。捜し歩いた結果、君に、その高い魔力適性があるようなんだよ」
「はぁ、俺に?でも俺は男だから魔法少女にはなれないぞ?少女じゃないんだから」
「僕も上にはそう掛け合ったんだけどね。それほどの魔力適性なら、何が何でもこちらに引きずり込めとまで命じられてしまってね……。あ、僕は君が拒否すれば、そうするつもりはないよ。そうだね、個人的な友人にはなって欲しいけれど」
「妖精なんて可愛らしい愛称なのに世知辛いもんだな……。友人の件に関しては喜んで、だな。お互い、社会の愚痴でも語り合おう」
友人の件は、この短時間で非常に好感の持てる自称妖精相手でもウェルカムな話だ
だが、俺に高い魔力適性、ねぇ。ていうか、そもそも魔力ってのは確か、女性に、特に未成年の内に高い適性を得られるって話じゃあ無かったか?
再三言うが、俺は間違いなく男なんだが
「それは嬉しいな。まぁ、それよりも君に高い魔力適性がある話なんだけど。ハッキリ言って何故君がそこまで高い魔力適性があるのかは、サッパリ理由が分からない」
「えぇ……」
「そもそも魔力って言うのは君も知っているかもだけど、とても女性向きの力だ。男性でも多少は持っているけど適性は無いし、それを魔法として行使するのはまず不可能と言って良い」
その代わりに、男性は元の身体能力が高い、とされている。まぁ、魔法を扱える女性にはてんで敵わないが
その魔法を扱える女性も世界で数%しかいない激レアな存在だ。その代表格が、魔法少女
魔力ってのはまず高い適性が無いと発現と操作もままならないらしい。その発現と、魔力適性が最も高い時期が大体10歳から20歳以下の間。そして魔力の特性上、女性に限られる
20歳までに魔力を発現出来なかったら、その女性はその後魔力を発現する可能性はぐんっと減るとか。その辺の原理はイマイチ分からないが、それは学者の領分だ。そうでないなら、そう言う物程度の認識で良いだろう