諸星家主催のパーティーにて
「ちょっと翔也!!突然出て来て、いきなり失礼ですよ!!いつもの冗談なら許しませんよ!!」
「母さんは黙っててくれ。突然の申し出で申し訳ありません。母の発言は全く関係ありません。今回ばかりは、冗談ではなく、本気で貴女にお伝えしているつもりです」
どうやら、光さんと雫さんの間を取り持っていたのは翔也さんのお母さん。つまり檀さんの奥様で、千草と墨亜の伯母さんに当たるらしい。
そんな伯母さんの静止をぴしゃりと跳ね返すと。ズイっと一歩出て雫さんの真正面に立つ。
その目は雫さんしか映していないように思える。
私とあった時の茶目っ気や明るい雰囲気ではなく、ガチの雰囲気だ。
あ、これ、たぶらかしにいってるんじゃなくてマジのそれだと私の思考もようやく追いついた。
「えっ、いや、何言ってんの?」
「そう言われるのも承知しています。今、貴女の目に俺は突然お付き合いを申し出る奇妙な人間に映ってることでしょう。ですが、本気です。俺は貴女に一目惚れしました。貴女ほど強さを感じ、大らかなようで繊細さもあり、そして美しい女性を見たことがない」
「ちょ、待て待て。お前みたいな若くて如何にもいい男がおばさん捕まえて何言ってんだ?お前良いとこ20前半だろ?私はもう34だぞ?本気だとしても、ちょっと釣りあわ……」
驚く雫さんに一目惚れをしたと堂々と言う翔也さんに、いやいやと雫さんが冗談はやめてくれと笑って返す。
私から見ても、10歳は確実に離れていると思う。翔也さん、多分22歳とかだよね?
歳の差婚がありえないとは言わないけれど、当事者からしたら冗談にしか思えないようだ。
翔也さんは間違いなくイケメンの類の人だ。将来、諸星家を継ぐこともあってその奥さんの座を狙う女性はとても多いはずで、翔也さん自体も自身の地位に見合う女性を選ぶのが、まぁ客観的に見ても普通だと思う。
雫さんも美人だけど、翔也さんの隣に立ってる女性像かと問われると、そういうタイプではないよね。と答えてしまう。
雫さんもそこを分かっているのか、手を横に振りながらナイナイと笑いながら答えると、翔也さんはその手を取って、ズイっとさらに雫さんに近づいた。
「年齢なんて関係ありません。体裁なんてもっと関係ない。ずっと俺はこれだ!!と感じる女性がいなかった。だから、女性にとりあえず声を掛けては自分の中で模索する毎日。それでもピンと来ずにただの社交辞令で済ませて来たのです。ですが、貴女は違う。貴女を見た瞬間、俺の中にまるで稲妻が落ちたような感覚が走りました」
「ちょっ……」
「貴女だ。と直感で思いました。貴女こそが俺に足りないものを補ってくれて、俺が悩んだ時に俺の背中を思いっきり押してくれる女性だ。強く、美しく、そして気高さも感じる」
「待て待て待て待て待て!!!!!!」
ずいずいと近づいてくる翔也さんを何とか引きはがした雫さんが赤くなった顔を隠すようにしながら後ろに下がる。
なんか可愛い。というか照れてる雫さんとか超レアでは?
後でみんなに教えとこ。
というかめちゃくちゃ面白い展開じゃないですかこれ?
思わずちらっと千草を見たら、千草もニヤつく頬を隠していた。そっか、他人の色恋ってこんなに楽しいんだ。
他のクラスメイト達が恋バナで盛り上がってる理由がようやくわかった気がする。めっちゃ楽しい。
「こんなガサツなおばさんはダメだろ?」
「構いません。世間に出るのは私だけで全く問題ない。是非、専業主婦として支えてほしい。もちろん家事をすべて押し付けるつもりはありません。料理の腕にはそれなりの自信があります。空いた時間に限りますが、料理は振るいますし、お手伝いさんも雇いましょう」
「ば、バツイチだぞ?!子供産んだらポイされたような女だぞ?!」
「誰ですかそのようなクソ野郎は。今から諸星の権力を結集して探し出させます。貴女のような美しい人を、手放すなど言語道断だ。もちろん、子供も父親として誠心誠意を込めて接しましょう。子供は好きですしね」
跳ね除ける理由を次々とぶつける雫さんだけど、ワンパンチで粉砕されているのがありありと分かる。
徐々に追い込まれていくとアワアワした様子で後ずさりをして、物理的な逃げを考え始めているみたいだった。




