諸星家主催のパーティーにて
私の腕から肩に移り、翔也さんに向けて威嚇を続けるパッシオに翔也さんはその視線を向けると。
「見事な護衛だったよ。これからもその調子で俺の可愛い従兄妹を頼むよ」
そう言って笑って見せる。好色なのか、器が大きいのか、イマイチ良く分からない。
本家筋の人達は、何というか濃い人たちしかいないのだろうか。
檀さんも結構インパクトあるしなぁ。まぁ、諸星の社長らしいし、公私混同はしない敏腕な方なのだろうとは思う。じゃないと今頃諸星は泥船だ。
「パッシィ、ありがとね」
「きゅ!!」
手の甲とは言え、確かにキスは嫌だったのでパッシオにお礼を言って背中を撫で上げる。
彼は満足そうに一鳴きすると、またするするとマフラーの中に戻っていった。
それを見て、翔也さんは感心したように唸っている。
「頭が良いね。主人への悪意への反応も早いし本当に優秀な護衛だ」
「ウチに来るまで真白を守っていたようだしな。下手な護衛より信頼できるさ。ところでお義母様はどこにいるか分かるか?」
「ママの事探してるの」
パッシオの優秀さに唸っていたようで、何かを考える翔也さんに千草がちょうどいいと光さんの所在を訪ねる。
いくらお客さんにあっちで見たこっちにいたと言っても、会場は広い。あっちこっちを移動しているらしく、中々捕まらなかった。
翔也さんなら詳細な位置を知っているかもしれない。
「あぁ、光叔母さんならウチの母さんと一緒な筈だよ。女の子だけでうろうろするのもアレだし、案内するよ」
「頼む」
「よろしくお願いします」
「レッツゴ~」
実際、今いる場所を知っているらしい翔也さんのエスコートを受け、私達は光さんたちの下へと向かった。
その場所へと向かって歩いていると、翔也さんを見掛けてかさっきよりも多くの人が声を掛けて来る。
会長の檀さんには及ばないけど、翔也さんだって諸星の社長。実働的な舵取りをしているのは彼になるので、相手によっては馴染みがあるのは翔也さんの方なのだろう。
気安く、友人に話しかけてくる調子で話しかけてくる人が多数で、翔也さんの後ろに私達が連なっているのを見るとエスコートが終わったら一度声を掛けてほしいと口々に言っていた。
翔也さんの性格はどうやら界隈では有名な話のようだ。だからと言って、誘惑してくるような女性もいないので、彼自身の交友関係はクリーンなもののように感じる。
きっと、良い意味での色男なのだろう。色んな女性に靡きはするものの、相手には冗談や社交辞令だと伝わる、或いはあくまで友好的なだけと伝わるようにどこかで線引きしてたり。
時折、そういうのが妙に達者な人がいるのだ。のらりくらりとしながらも、誰からも嫌われず、むしろ好かれながら世間を渡り歩く人が。
「いたいた」
そんな人望の厚さを垣間見つつ、会場を歩き続けるとどうやら光さんたちを見つけたらしい。
手を引く千草の後ろからちらりと窺うと、確かに光さんともう一人、光さんよりも少しばかり年上に見える女性と更に雫さんの姿が窺えた。
雫さんが腕を組んでむすっとした表情をしているのを、光さんは不敵に笑ってみていて、もう一人の女性が宥めているような様子だった。
「光叔母さん」
そんな少し雰囲気の悪い中に、翔也さんは躊躇わずに声を掛ける。豪胆というか、何というか臆していないのか。私にはあの雰囲気の中でいつも通りには声を掛けられそうにない。
「あら?わざわざ案内してくれてたの?ありがとね翔也君」
「いえいえ」
声を掛けられ、私達の姿に気が付いた光さんが翔也さんにお礼を言う。
そう言うと、ちょっと待っててと私たちに告げ、光さんはまた雫さんとのやり取りを再開した。




