墨亜の出来ること
【EXCELLENT!!】
お部屋のテレビから、ぴかぴかの文字と一緒に英語でそんな文字と音が聞こえてくる。
どういう意味かは墨亜にはよく分からないけど、きっととっても褒められてる。
おぉ~と皆からも声が出てて、ぱちぱちと拍手されたり凄いねって言われたりしながら墨亜はゲームを始める前に座っていたソファーにぽんっと座る。
「墨亜ちゃん凄い!!全部当てるなんて!!」
「ふふんっ、墨亜こういうのは得意なんだ」
一緒のソファーに座っていた紫お姉ちゃんに褒められる。さっきやってたのは画面にコントローラーを向けて、飛んでくる風船をバンバン撃つゲーム。
墨亜はこういうのとっても得意。ゴミ箱にティッシュ投げるのも外したことないもんね。得意技だよ。
「墨亜は目が良いからな。こういうのは手も足も出ない」
「目だけじゃねぇ、すぐに狙いを定める反射神経とターゲットぶち抜く順番を即行で決める判断力も半端ねぇよ。ウチには出来ねぇ芸当だな」
「百発百中ってやつね。魔法も外してるところをそういえば見たことないわね」
みんなに褒められて、ちょっと恥ずかしい。墨亜はこういうのがちょっと得意なだけだから、もっとすごいお姉ちゃん達に物凄く褒められるのは嬉しい。
朱莉お姉ちゃんの言う通り、魔法も墨亜は外したことが全然ない。当たっても意味がなかったり、当たる前に撃ち落とされちゃうことはあるけど、それも全部何にもなければ当たるやつ。
でも、当ててちゃんとダメージを与えなくちゃいけないから、当てなきゃ意味がない。
そういう風に考えると、当てても当てなくてもちゃんと意味があるお姉ちゃん達の方がずっとすごい。
「あー、全然ダメだね。全部狙っちゃおうとしちゃって」
「真白さんもどっちかというと弾数が多くて同時にロックオンするタイプですもんね。私も、一発の弾を次から次に当てるっていうのはどうしても苦手で」
「だよね。魔法を使う感覚でやろうとすると、全部いっぺんに狙おうとしちゃって、どれから狙うっていうのは全然ダメなのがよく分かった。ちょっと練習したいし、買おうかなこのゲーム」
墨亜の次の順にゲームをやっていた真白お姉ちゃんが戻って来て、ソファーにぼすんって座る。
画面にはBADって黒い文字で書いてあって、あんまり良くないって意味なのが墨亜にも分かる。
真白お姉ちゃん、こういうの得意そうって思ってたから意外だなって思う。いつもちゃんと狙ったところに障壁を張るから、狙いを定めるのは得意だと思ったんだけどな。
「狙いのつけ方の差なんすかね?」
「墨亜がスナイパーだとすれば、紫や真白はミサイルやロケット弾みたいなものなんだろうな。一発の弾を必殺の場所に打ち込む集中力が売りの墨亜と、大量のターゲットを同時にロックオンしてとりあえず当てるのが紫と真白の感覚なんじゃないか?」
「成程ね。近接戦の私達とは全然違う考え方よね」
「近接はまた別の感覚というか、ホントに近接こそここにいる奴ら戦い方ばらっばらだからなぁ」
遠くの敵の狙い方で盛り上がる真白お姉ちゃんと紫お姉ちゃん達の隣で、千草お姉ちゃんたちも難しい話をしている。
真白お姉ちゃん達は同時にロックオン……。うーん、墨亜には出来なさそう。
墨亜は狙うときは先に順番を決めちゃう。紫お姉ちゃんの魔法みたいに沢山の魔法をバーッて撃つのは苦手だし、真白お姉ちゃんみたいに沢山の障壁魔法をずっとひらひらさせてるのも出来なさそう。
墨亜が得意なのは、当てること。狙ったところに当てるのが、墨亜はとっても得意。
何回も打てる代わりに同時には出来ないけど、絶対当てる。これが墨亜の良いところ。
そこまで考えて、墨亜はちょっと思いついた。後で十三さんに相談してみよう。
「全然当たんねーっす!!」
「下手くそだな!!」
「FPSとかやるんすけどね!!得意なのは逃げてからの反撃っすから!!」
「こういうのは下手でも数撃つんだよ、次はウチだから見てろよな」
ケラケラ笑う舞お姉ちゃん、ホントにへたっぴで逆に凄い。でもさっきのスッゴイ疲れるゲームの方は舞お姉ちゃんと碧お姉ちゃんがぶっちぎりだった。
あれ墨亜は苦手、脚がぷるぷるする。十三さんのトレーニングみたいで物凄く疲れた。
「当たってないわよー」
「うるせー!!」
「あははは」
コントローラーをあっちこっちに向ける碧お姉ちゃんは画面の隅から出てきた順に狙おうとしてる。
そうじゃなくて、出て行くのが早いのから狙うんだよ。このゲームのコツ。
出て行く前に当てればいいんだから、画面から出て行く順に当てれば、綺麗に全部当てられる。
「ボクより当たってないっす!!」
「最下位じゃん」
「ぶっちぎりだな」
「だぁっ!!次だ次!!」
結局、このゲームでビリなのは碧お姉ちゃんだった。一位は墨亜、いえい。




