なんてことない日常のひと時を
沢山食べた後はたくさん動く。それがぶくぶくと太らないために大事な事なのは誰もが知っての通り。
とは言っても、魔法少女ともなると日頃から訓練を欠かさない。食事と運動でしっかりと身体を作って、万全の態勢で魔法少女としての職務を遂行するのが、私達魔法少女の役目なので、沢山食べるのは良いことだ。
「きゃあああああああああ?!」
「わははははっははは!!」
それが建前。私達はそんな日頃の堅苦しいことなんてぜーんぶ忘れて食事が終わった途端に思いっきり遊び始めた。
今やっているのは碧ちゃんが持って来た段ボールに乗って、河川敷の土手を滑り降りる遊び、通称土手滑りと呼ばれる遊びだ。
ここにいるのは平均年齢14~5歳なので、今更こんな遊びをと思うけど、これがやってみると楽しいのだ。
子供の頃にやったことがある人も中にはいるだろうけど、その頃よりも体は当然大きくなっている。ぶしつけに言えば体重が増えている分、滑るのが早い。
これが結構スリルがあるのだ。因みに滑る姿勢と荷重移動を誤ると普通に土手を転がることになる。既に何人かが草まみれになっているのは言うまでもない。
「全く、雑草だらけじゃないか」
呆れながら笑っている千草も何回か滑ってるけど、高校生にもなるとやはりこっぱずかしいものがあるのか土手の上で皆を観察することに注力し始める。
その後ろから、ニヤニヤと笑う2人の妹の接近に気付かないとは、まだまだ詰めが甘いね。
「「せーのっ」」
「ん?」
かくんっ、と膝の後ろを押されて千草の足から力が抜ける。今だ!!とすかさず千草の後ろに置いておいた段ボールにお尻から押し込むと、墨亜と二人がかりで段ボールを滑らせて土手へと落す。
「わっ?!あっ、こらお前ら?!」
「ばいばーい!!」
「わあああっぁあぁぁぁぁぁっ?!?!」
お尻から段ボール箱に納められ、姿勢制御どころの話では無い体勢のまま土手を滑り落ちていく千草を見て、墨亜とハイタッチしながら悪戯の成功を喜ぶ。
普段は絶対聞けないであろう千草のガチ絶叫を聞きながら私は大爆笑。因みに爆笑してるのは他にも下で紫ちゃんにキレられている碧ちゃんと、上から一部始終を見ていた朱莉ちゃんである。
舞ちゃんはうわぁって顔してる。後で同じことやろっと。
「おーまーえーらー!!」
土手を滑り降りた後、そのまま河川敷を転がった千草が葉っぱまみれになって段ボール箱片手に物凄い勢いで土手を駆けあがって来る。
あっ、やっべ怒らせ過ぎた。
「わー!!千草お姉ちゃんが怒ったー!!」
「逃げろーっ!!」
「まてーっ!!」
キャッキャッと笑いながら全速力で逃げる。捕まったら絶対段ボールに詰めて転がす気だ。にっげろー!!
2分で捕獲されて墨亜と一緒に土手を転がされたのは言うまでもない。2分もっただけだいぶ頑張った方である。こちとら二人ともチビな上に後衛型の魔法少女、前衛型バリバリの千草には勝てましぇん。
「あー、おっかしい。アンタ達ホント仲良いわね」
「そうでもないよ。あと後ろね?」
大笑いしていた朱莉ちゃんが目元に滲んだ涙を拭いながらまた土手の上まで上がって来た私の姿を見てそう言う。
最近、悪戯がマイブームなのでとても楽しいことは否定しないけど、朱莉ちゃんは自分がやられないと思ったら大間違いである。
「えっ?」
「それっ!!」
「ごめんね朱莉ちゃん!!」
「裏切者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ?!?!」
碧ちゃんと紫ちゃんに同じように段ボールに入れられた朱莉ちゃんが怨嗟の声を吐きながら土手を滑り降りて行くのが面白過ぎる。
上にいた面々が爆笑してたのは言うまでもない。
「いやー、若いですねぇ」
「若いですねぇ」
下で見ていた使用人の人達が微笑ましそうに見ながら、余った食材をのんびり食べてたりする中、私達はわーきゃー大騒ぎしながら遊び倒していた。
危ないから真似しちゃダメだぞ☆(作者は全く同じことをやったけどね)




