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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
MEMORY

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市街地討伐戦、完遂

そして今、私は何故か魔法庁南東北支部に在籍する医療班のお尻に火を点けさせながら、怪我をした人の簡単な診断やカウンセリング、応急処置。必要ならば治療を行っていた。


「あ、アリウムさん、次は何を……」


「指示はさっき出したはずよ。ひたすら、診察をして患者を適切な処置を素早くできる様に振り分けて。終わるまでよ」


「はははは、はいっ!!」


原因は思ったほどこの支部所属の医療班レベルが高くないことだ。

一部の人は間違いなくプロフェッショナルだ。非常に迅速に判断して、自分の仕事をこなしているけど、歳が若い子を中心にあっち行ってこっち行っての右往左往している子が目に付く。


さっき私に指示を仰いできた子もその一人だ。まだ患者の振り分けであるトリアージも完全に終わっていないのに、次の指示を仰いでどうするのか。


今この場にいる百人を超える避難住民で痛みを訴えたり、怪我や病気の症状が出ている人を迅速に手当てするには絶対に必要なことだというのに。


災害医療の基本中の基本CSCATTTすら頭に入っていないんじゃないだろうか。


「治療をお願いしても良いですか?」


「あなた医療班じゃないの?何が出来なくて私にこの子の治療を頼むのかしら?」


まったく、とため息をついているとまた別の医療班の子から今度は治療を頼まれる。

彼女が連れて来ているのは小学5年生くらいの男の子だ。足を痛めているのか重心がおかしい。


外傷はぱっと見では確認できないということは、まだあざなどになっていないか、骨や筋に痛みが出ているかだと目星をつける。


「その、痛いらしいんですけれど、原因がわからず……」


「戻ったら必要な医療知識の勉強をし直しなさい。治癒魔法が使えるだけでここにいるのならハッキリ言って役立たずよ」


「すみません……」


はぁぁぁっ、と思わず深いため息を吐いてしまった。あまり良くない対応だというのは分かってる。彼女たちは恐らくほとんど経験がない。

恐らく普段は分かりやすい怪我などをしている魔法少女達に治療を施すか、プロフェッショナルな人達が治療をすませてしまうせいで、彼女たちに現場の経験値が蓄積されていないのだ。


いきなり現場に放り出されて、上手く動けと言われても無理なのは重々承知しているつもりなのだけれど、このザマで魔法庁支部お抱えの医療班だと言われてはため息もつきたくなってしまう。


ハッキリ言おう。お粗末すぎる。


「私に謝らないで、自分の不手際でしょう?ごめんね僕?どこが痛いか教えてくれる?あとどんな時から痛くなったかは分かる?」


「脚。逃げてるときに、転んでから」


「うんうん、痛いのはどのあたり?ここ?こっち?」


「もうちょっと足首らへん」


「ごめんね、ちょっと触るね。この辺り?こっちに動かすのが痛い?こっちは?……うん、ありがとう。痛いのに我慢して偉いね。足を動かないようにしたからちょっと待っててね」


私に静かに叱責されて、しょんぼりと頭を俯かせている彼女を他所に私は男の子に軽い診察をする。

元看護士と言えども、戦地医療に携わった者としてごく簡単な診察は出来て然るべきだ。

これは魔獣被害にあった一般人や魔法少女の治療にあたる医療班にも共通して言えることだ。


彼女達個人で治癒魔法という手術が出来る以上、その個人個人で簡単な診察診断をして、治癒魔法を使う程の怪我か、使うのであればどの部分にどの程度使うのが適切か、やらなきゃいけないこと、覚えなきゃいけない事は山ほどある。


現場で動くとは、そういうことが求められる。私達は人の命を預かっているのだ、中途半端な知識と覚悟でこの場にいるのであれば、それはただの邪魔者だ。


キツイ言い方かも知れないけど、医療現場とは、人の命を救うとは、そういうもの。そうでもしないと救えるものも救えない。


「ボーっとしてないでギプスあるなら持って来て、ないなら添え木と包帯くらいはあるでしょう?」


「あ、あの、治癒魔法は……?」


「すべての患者に治癒魔法を使う気?この子は強い捻挫。酷くて脱臼や骨にひびが入ってるかも知れないくらいよ。治癒魔法を使うより、レントゲンを撮ってからの方が良い処置が出来るわ。ほら、早く持って来て」


「わ、わかりました!!」


バタバタと走り去る彼女に内心頭を抱えながら、私は障壁で足を固定した男の子の頭を撫でて安心させてあげる。メンタルケアも看護師の仕事の一つ。


医療現場はやる事が山のようにあるのだ。


「魔法少女さん、私も見てもらって良いかい?元々腰が悪いのだけど、急いで歩いたらひどくなっちゃってねぇ」


「良いですよ。病名は分かりますか?どのあたりが痛むのかも教えていただけると」


「この辺りなんだよ」


特に災害医療現場はこうして先にと治療をせがまれることもある。幸い、明らかな重傷者は既に治療を受けているし、1人ずつ処置をしていても問題はない筈。


おばあさんの言う通りの位置に治癒魔法を痛みを取る程度にかけ、主治医に診察を受ける様に促すのも忘れない。

便利過ぎる治癒魔法で、本来あるはずの医療や治療を瓦解させては話にもならない。完治させることだけが良いことではないということもしっかり頭に入れて、判断しなくてはならないのも、この医療班で活動する上では難しいところなんだろうと私は感じていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] めちゃくちゃカッコいい
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