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市街地討伐戦

スッと委員長が手を挙げると同時にさっきの氷の槍よりも小さい、握りこぶし大の氷の礫が幾つも空中に浮かんだ。


「パッシオ!!」


速い、と私は思った。魔法の構築速度が他の魔法少女達よりも優れている。

多分防ぎ漏らしが出る。咄嗟に私はパッシオに声を掛けて、2人で揃って障壁と炎の魔法を展開する。


先ほどのドラゴンブレスで、辺りに散らしていた障壁は殆ど使い切ってしまった以上は、2人がかりでも無いと周囲の被害を抑えるのは難しい。


案の定、私の障壁の準備が全て整いきる前に氷の礫は放たれ、防ぎ漏らしが幾つも出る。

それをパッシオの炎の魔法が相殺していく。


たった一言で、私のやってほしいことを的確にやってくれるのは、本当に頼もしい限りだ。


「そっちは任せたわよ!!」


「ガウッ!!」


だけど、委員長だけに構っている訳にもいかない。動きこそ遅いものの、ドラゴンの方も歩みをこちらに向けて来ている。

何より、もう一度ドラゴンブレスを吐かれようものなら、次こそ防ぎ切れない可能性だってある。


「……無茶はしないのよ?」


「善処するわ」


飛び出して行ったルビーとリオ君の気配を背中で感じながら、私は改めて委員長に向き合う。

既に、次の魔法が準備されている。


今度はより鋭利な細く鋭い形状。恐らく障壁を貫く事に重きを置いたんだと思う。


それにしても、凄い。アメティアの複数属性の雨霰と見間違う魔法の弾幕だって、発射するまでには多少のタイムラグがある。


複数の属性を同時に操り、タイムラグを5秒以内に収めるアメティアの技量も目を剥くくらいなのだけど、委員長は手を挙げたのとほぼ同時。


さっきの氷の礫も、魔法構築は1秒程だろう。その内に目測で30を超える氷の礫を用意している。

驚異的、とも言えるスピードだ。


私だって障壁の展開速度には自信があるけど、それだって常に指先ほどの小さな障壁を辺りに浮かべ続けているからであって、あの数をあのスピードで作れと言われたら難しい。


素晴らしい才能だと思う。クルボレレちゃんも含めて、新しく出会った魔法少女達も、今まで出会った魔法少女達も、みんながみんな光るモノを持っている。


ただし、委員長はその光る原石を磨かないという選択をした子だ。

戦いたくない、という選択を自分で選んだハズなんだ。


それを、勝手な都合で、委員長の意思とは関係無く、まるで物みたいに扱われている事に、私は改めてフツフツと怒りを込み上げさせる。


同時に、必ずここで委員長を助けるという決意も堅くする。

あの洗脳と思われる状態から、どうやって委員長を取り戻せるのかはわからない。


でも、ここで救えなかったら次は無いかも知れない。


「待ってて委員長。必ず、助けるから」


「焦っちゃダメだよ。焦らず、確実に、そして迅速に、ってね」


「難しい事言ってくれるわね」


でも求められているのはそういう事。

背後にはドラゴンもいる。ルビーに、また無茶はさせたくない。それをさせてしまうのは、私が魔法少女になった理由にも反する。


魔法少女を守る魔法少女になる。


委員長も、ルビーも他の子達だって、1つの怪我も嫌な思いもさせたくないから。

その為なら、多少の無茶だって通してみせる。


「拘束する方向で行くわ。洗脳の解除は後、拘束してからルビーの援護。時間を稼いで、クライスを狙う」


「無難だね。途中で流れ弾でも撃ち込むかい?」


「下手に動かれるよりはほっといて良いわ。本人が言った通り、今のところ手は出さないつもりみたいだし」


短い作戦会議を交わして、屋根の上に寝転がるクライスを視界の端に映す。


まるでスポーツ観戦でもしているかの様な気軽さで寝転んでいる。

もしかしたら、本当にそのつもりなのだろう。


自分が作り上げた舞台で、演者や試合を楽しんでいる。そういう感覚なのかも知れない。


何にしたって、腐っている。人の命や尊厳をまるで無視した行為は理解しがたいし、したくもない。

なにより、シンプルに許せない。


静かにクライスに敵意を募らせながら、私は障壁を改めて無数に展開した。

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