思春期少女の悩みと出会い
皆、それぞれ興味津々といった様子で、Slot Absorberやカートリッジを手に取ってあれやこれやと弄ってみるけど、特に音声や何かが起こる兆しもない。
さてどうしたものか、というのが私たち全員の総意だと思う。
「そういえば、あの壊れた奴はどうしたの?」
「一応、私がまだ持ってるわ。と言っても、このまっさらなやつとは違って見た目からして壊れてる個所もあるし、本当に念のためって感じ。破損無しのもこうして出てきたことだし、あんまり持ってる意味もないんだけど、研究者に渡すのにはまだ早いって話みたいで」
大人の事情ってめんどくさいよね、ホント。
サクッと研究者側に渡しても良いような気もするんだけど、雛森さんは物凄く警戒している。
まぁ、私も魔法庁のお上の人達にこれが知れ渡ったら、何するのかは分からないとは思ってる。数回、会ったことはあるんだけど、どいつもこいつも気色悪い目で見て来るし、自分の保身で頭が埋まってそうだなって感じた。
流石は最奥に引きこもっているだけはある。
「めんどくせーなー。ま、良いけどよ。とりあえず一組預かるぜ。まずは年長者がこういうのは持つべきだろ?」
「そうだな、私もワンセット持とう」
真っ先に預かると言い出したのは碧と千草だ。この辺りは流石だと思う。千草は言わずもがな、碧もなんだかんだこういう責任感はしっかりしているから、適任。
「じゃあ、私もワンセット持っておくわ。壊れたものと見比べたりして、何か分かるかも知れないし」
そして、言い出しっぺとして、私も持っておくことにする。私は壊れた奴も持っているし、もし何か差異が見つかったらみんなに知らせることも出来る。
で、残りのカートリッジだけだけど……。
「私が持っていても良い?政府所属じゃないけど、私のスマホにもこのカートリッジが入ったから、よく見ておきたい」
手を挙げたのはアリウムだ。確かに、アリウムのスマホには奴から奪ったカートリッジが何故か入ってしまって、取り出せなくなってしまった。
気になるとこはあるはずだし、アリウムならその辺りは信用が出来る。
「私は良いと思います。この件の関係者ですし、政府以外の信頼できる魔法少女に一つ預けておく保険的な意味も含ませられます」
「ウチも賛成だ。アリウムなら預けてても問題ないと思うぜ」
「それじゃあ、頼んでもいいかしら?」
紫や碧も賛成。千草や墨亜ちゃんも特に何も言うことは無いみたいだし、この最後の一枚はアリウムに預けることになった。
アリウムにカートリッジを手渡すと、力強くうなずいて無くさないように一番肌身離さず持っているであろうスマホケースのポケットにしまい込む。
これで渡すものも渡した、その時だった。
「――きゅっ!!きゅーっ!!」
「なあぁぁあぁおっ!!なぁぁおっ!!」
急に満腹になって座席の空いたスペースに寝転がっていた二匹が一斉に鳴きだす。
何かと思って一斉に視線を二匹に向ける中、アリウムだけが車の窓を全開にして外を睨みつけた。
それと殆ど同じタイミングで、街中に警報を知らせるサイレンが鳴り響いた。
「パッシオ!!どっち?!」
「きゅい!!」
窓に飛びついたアリウムがパッシオに怒鳴りつけると、駆け付けたパッシオが車のちょうど左正面、アリウムが顔を出している方向へと腕を伸ばす。
この警報、パッシオとアリウムの慌てっぷり。……まさか?!
「居住区域に魔獣出現です!!全員今すぐ戦闘準備に入ってください!!」
大慌てで魔法庁に連絡を取った紫から全力の指示が飛ぶ。また街中に魔獣って、一体なにがどうなってるのよ?!




