満ち欠けた日常
ほくほくで甘い栗ご飯を食べているとそれで?と朱莉ちゃんが煮物をつつきながら私達に向かって聞いてきた。
「その子がアリウムで良いの?」
そう言いながら、私の方に視線を向けて来た朱莉ちゃんのその言葉にコクコクと頷いて答える。
頷く私を見て、ふぅん?と返事をしながら、またお弁当を食べ始める。なんだか意味深でちょっと怖い。
「あぁ、それで構わん。一応、魔法庁の人にも可能な限りまだ口を開くなよ?」
「訳アリ、ですか。諸星家で保護しているという認識で良いですか?」
「理解が早くて助かる。そういうことだ、本当は朱莉から順々に顔合わせって思ってたんだけどな。二人も来たし、この子の容態も思ってたより安定してる」
「その辺りの詳しい話は後で聞きますね。本人の前でする話でも無いですし」
紫ちゃんの理解と予想の正確さには脱帽だ。まぁ、そうでも無ければ中学二年生でこの街の魔法少女の司令塔役には抜擢されないと思う。
それだけ、視野と思考速度が速い子なんだと思う。
「と言うか、よくアリウムだって分かったな。こう言ったら何だが、かなり容姿は違うぞ?」
「横にパッシオ連れてるのに、分からない訳ねーだろうよ」
「……成る程」
成る程、確かにパッシオは私が変身したところで見た目に変化がある訳でも無いし、知ってる人が見た瞬間にバレるよね。
というか、千草に身バレした時も大体パッシオでバレてるっぽかったし、身バレの原因作ってるのって私じゃなくて実はこの相棒のせいなのでは……?
そんな相棒はリオ君と一緒にご飯をがっついている。相変わらず食い意地が張ってるなぁ。
「てか、今気づいたのかよ」
「あまりにもいるのが当然だから普通にペット扱いしていたな……」
「パッシオ頭良いんだよー」
私達がパッシオの姿が割合珍しいことを完全に見落としていたことに、他の三人はそれぞれ呆れだったり、苦笑いだったり、ゲラゲラ笑ったりと反応を見せる。
墨亜ちゃんがフォローになってない可愛いフォローをしながらパッシオを褒めるているのが微笑ましい。
いやホント、盲点だったよね。完全に忘れてた。
「……きゅい?」
「とうの本人も見事なアホ面ね。良いからご飯食べてなさい」
「きゅきゅ」
呼ばれたのかとご飯皿から顔を上げてこちらを見るパッシオだけど、今はそのつぶらな瞳はアホ面にしか見えない。
朱莉ちゃんに何でもないと告げられると、首を傾げながらまたガツガツとご飯を食べ始めた。
「ま、良いわ。やっと顔合わせ出来たしね。野良って言ってももういなくなられると困るくらいには頼ってるし、雛森さんには悪いけど、魔法少女同士の親睦を深めさせる方を優先させてもらいましょ」
「へへっ、そういうこったな。そういや自己紹介もまだだったな。ウチは村上碧、魔法少女アズールだ。よろしく頼むぜ」
「本田紫、魔法少女アメティアです。よろしくお願いしますね」
「金本朱莉、魔法少女シャイニールビーよ。これからもよろしくね」
全員知ってる、とは言えない。というか、話の流れからは察していたけど、この場にいる6人全員が魔法少女とその関係者って事になるのか。
正直、驚きすぎてイマイチ実感が湧かない。朱莉ちゃんたちが魔法少女と言われてもまだ変身するところは見ていないし、今の姿と魔法少女の時の姿は、やっぱりかなり見た目印象が違うから、まだ頭の中で皆が魔法少女だっていうことがイコールで結びついていない感じだ。
「えっと……」
自己紹介をした以上、返すのが当たり前。それに応えようと口を開いたものの、名前を名乗って良いものなのか悩んで、言い淀んでしまった。
真白は真白だ、間違いはない。ただ今の姿で名乗る事が、みんなの疑心を煽る事になる事は間違いないと思っている。
容姿がよく似た真白という男女2人がいる。というのは、少なくとも話題や疑問の1つになると思う。
想像でしか無いけど、やっぱり不安だ。




