獣を追って
「いくよ!!」
【必殺!!】
「『ルミナスシュート』!!」
銃口から放たれた光のレーザーが目の前に広がっていた『汚染』の権能の能力そのものである黒い霧を吹き飛ばす。
魔力量が殆ど残っていないというルミナスメモリーに私とメイトメモリーの魔力譲渡能力が合わさったそれは極太のレーザーに変わり、私が想定する以上の強力な技になって正直びっくりした。
「だりゃあああああ!!」
更にルミナスは正面に撃つだけじゃなく、薙ぎ払うように銃口を左右に振り抜き、より広範囲の黒い霧を吹き飛ばして見せた。
「メイト!!」
「ハイ!!」
想像以上のルミナスメモリーの攻撃能力に驚いている暇は無い。すぐに思考を切り替え、メイトメモリーに合わせるようにルミナスメモリーが薙ぎ払った範囲の端に添うように障壁を一斉に展開する。
広範囲に展開するのが得意な私の障壁をベースにメイトメモリーの水飴状の障壁がサポートに入る。
黒い霧に触れて崩れた障壁を補強する役割だ。
この辺りは正直焼け石に水、といったところでしょうね。精々実際に稼げる時間なんて数秒が良いところ。
足止めにしてはあまりにも心もとなさすぎる行為だけど、その数秒が命運を握ることだってある。
黒い霧に触れた端から崩れて行く私の障壁。その穴を埋めるように操作されているメイトの障壁も同じようにすぐ崩れて行くのを見ながら、ブレーダーメモリーを抱えて飛び出したブラザーメモリー。
そして彼らに狙いを集中させないために駆け出したエストラガルの姿もある。
さっきの話し合いに参加してなくて妙に大人しいなと思っていたらコレだ。身体張り過ぎなのよ。それ、失敗してもしなくてもリスクが大き過ぎるのわかってやってるわね、あの筋肉ダルマ。
「アメティア、ノワール!!」
「わかってますよ!!」
「はぁ、仕方ない」
ブレーダーメモリーを抱えて飛ぶブラザーメモリーと囮になったエストラガルに殺到するベンデからの魔法をアメティアとノワールが溜め息を吐きつつ迎撃する。
気怠そうにやりながらもその精度と数は抜群だ。接敵を試みる彼らに来る攻撃を確実に撃ち落としている。
ベンデの方も意識があるのかどうかは最中では無いけど、狙いの中に私達後方支援組も混ぜて来た。
ただそっちの攻撃はシルトメモリーが確実にガードしている。散発的に撃たれる魔法程度で崩れるような状態ではない。
その盾の後ろでは非戦闘員のリアンシさんが『繋がりを視る』力を使ってベンデの状態を探っている。
そして一仕事終えたルミナスは残った魔力を練り上げて何が起こってもいいように準備をしている様子。
「スタン!! ベンデの尾の先を狙え!! 『獣の王』との繋がりがそこにある!!」
「わかった!!」
「おっしゃ、突っ込むぞ兄弟!!」
リアンシさんが視た繋がりはベンデと『獣の王』の繋がり。ここを断てばベンデに供給されている『獣の力』を始めとしたあらゆる共有手段を断つことが出来る。
逃げることを含め、復活やベンデと言う存在が『獣の王』に還元されることも防げることになるその一手は確実に踏みたいプロセスと言える。
だが当然のことながら、近付けば近付くほどベンデからの攻撃は苛烈になっていく。それらをアメティアとノワールが可能な限り撃ち落としつつ、ブラザーメモリーが見せるアクロバティックな回避が冴え渡っている。
「我が王に傷ひとつ付けさせん!!」
そこに鬼気迫る気配を感じさせるエストラガルがベンデに接近戦を仕掛けて行くのだから、ベンデとしてはたまったものでは無いだろう。
破壊属性を纏わせた拳が既に過剰に供給され過ぎた力の影響で身動きひとつ取れなくなっているベンデに突き刺さる。
「ぎぃぃぃっ!!!!?」
「ふ、ぐぅぅぅっ!!」
響き渡る金切声のような悲鳴。ダメージは入っているけど、それはエストラガルにも言えることだ。
ベンデ自信が『汚染』の権能を見に纏っているような状態の中で拳を叩き込めば、その影響は突き刺した自らの拳に返って来る。
みるみると黒ずんでいくエストラガルの拳。彼の拳が崩れ落ちる前にこの戦いを終わらせなければならない。
だけど、黒い霧を押しとどめていた障壁はこの時点で限界を迎えた。
「急いで!!」
押しとどめていた物が崩れれば、それは勢いを付けて空いていた隙間を埋めようとする。それは『汚染』の黒い霧も変わらない。
ルミナスが薙ぎ払った範囲に雪崩れ込んでいく黒い霧。それが中心にいる3人を飲み込む前に決着を付けなければならなかった。




