獣を追って
「無鉄砲さだったら貴女も負けてませんよ?」
「おっと」
ルミナスメモリーの無鉄砲さに肩を竦めていたら、隣にいたアメティアにサックリ刺された。
はははは、正直絶対言われるとは思ってたよ。私も無鉄砲な自覚は一応あるからね。これでもだいぶ減った方だと思うけど。
「全く、アリウムさんは味方を信じすぎ、ルミナスは自分だけで解決しようとし過ぎです。何かがあったらどうするんですか」
「どうにかしてくれるでしょ?」
「その時になったら考えます」
呆れるアメティアの言葉に揃って別々の返事をすると周囲からは盛大な溜め息が漏れる。
悪いとは思ってるよ? でも身体は止まらないんだよね。昴も私も、そういうタイプだから諦めてほしいわね。
「はぁ、その辺のお説教は番長さんにしてもらうとして。ルミナスの『浄化の光』についてはスフィア公国の書庫にて判明した特殊な光属性のことです」
「太古の昔、『獣の王』と妖精界の種族達が戦争をしている最中に生まれた、数少ない対抗策のひとつだったとされるそれはリュミエールという一族に代々受け継がれていたのをスタン君が文献で発見してね」
「強力な光属性でもあったというリュミエール一族の『浄化の光』とスバルが度々口にしていたリュミーと言う名前から、もしかしてと思ってね」
「ま、他にも判断理由はあったんだけど、それはまた追々話すとしましょう」
スタン君が文献から得たリュミエール一族の情報はキッカケに過ぎない。
実際はその話を聞いた『魔法技術研究所』が兼ねてより開発していた新しい装置のひとつ。属性測定器の試作機を使ってルミナスの光属性を調べたら、他の光属性の数値とは全く別の数値が検出されたことからだ。
この辺りは私もまだ詳しく話を聞いていないから説明も難しい。日頃から『魔法技術研究所』に出入りしているアメティアの方が詳しいことね。
大方、東堂さんが一枚嚙んでいるんでしょうね。あの人もかなりの切れ者。
予想可能な限りの予防線を張ることで事態を掌握しようとする私とは違って、技術や発想の転換と言ったアプローチで状況を一変させるのが得意な人だ。
流石は元魔法庁のトップ。そして【ノーブル】のトップだった人だ。その頭脳は光お母さんにも負けず劣らずだと、私は思っているわ。
因みに光お母さんのアプローチは今思い出しても意味不明だ。あの人の場合は推理力から来るものだから真似のしようがない。
というか、あんなの真似出来るか。一体、相手の何手先まで読んでいるのか私達凡人からは予想すら出来ないし。
とにかく属性測定器の試作機が作られていて、その結果からルミナスメモリーの光属性は特別なものであり、『光』のメモリーに入っている妖精の名前。
おそらく、通称やあだ名でしょうね。リュミーというのは。
そのリュミーという名前から推察したのが『浄化の光』という特殊能力。
「これは太鼓の昔、妖精界に現れた二柱の神が僕達王族の始祖に与えた『繋がりの力』とは違って、自然に発生した『獣の王』への対抗手段」
「世界の防御反応のようなモノだと私達は推測してるわ」
『浄化の光』は神から授けられた超常的な力ではなくて、妖精界内で自然発生した特殊能力だと記されていた。
いわゆる突然変異というものね。『獣の王』という外敵を排除するために、世界が防御反応のようなものをしたことによるものだと私は思っている。
私自身、世界の意思か防御反応によって記録と記憶の上書きをされた、という経緯を身をもって体感している。
対『獣の王』ともなれば、その反応は絶対にあったと思う。
これを信じるか信じないかは人によるだろうけど、私個人はそう考えるのが自然だと思っているわ。
「ようはこの属性は『獣の王』特効ってことですよね。それは自分でも体験しました」
「なら話は早いわね」
長々と説明したけど、ルミナスの一言が全てだ。
『繋がりの力』とは別アプローチの『獣の王』特効能力。それが『浄化の光』。
そんな力を持っているルミナスメモリーがここに来てくれたのはまさに最適解。
目の前に広がる『汚染』の権能の霧を蹴散らすにはあまりにも都合の良い能力だ。




