獣を追って
「物質、非物質に限らず汚染して根幹から壊す力、ですか」
「事実だとしたら脅威を通り越して危機と言えるでしょう。時間を掛け過ぎればどうなるかわかりません」
その予想はそんなに的外れではないのは、今まで観察していてわかっている。だからこそ頭を悩ませるわね。
あらゆるものを汚染して破壊するなんて力をどうやって攻略するのか、全く思いつかない。
「風魔法で霧を、ってのも無理か。魔法の時点でダメだよね」
「それ以前に振り撒かれた霧が風に乗って拡散なんてしたら、それこそ甚大な被害が出ますよ」
「自然の風で動くような物にも見えないしね。霧っぽいだけで風に乗っている様子は無いし」
霧なんだから風魔法で、というリアンシさんの発想は残念ながら難しいだろう。本人の言う通り魔法の時点で霧に触れた瞬間に術式が崩壊して魔法じゃなくなってしまうし、アメティアの言う通り風に乗って広がりでもしたらその被害は計り知れない。
何らかの方法で霧を除去しなきゃいけない。でも霧に触れることすら出来ない。
ジレンマって言うのはこう言う事を言うのね。せめて、何か明瞭な打開策を――。
「アリウムさーーーーん!!」
そう思った時に聞こえて来たのは、この場に似合わない明るくて溌剌した声だ。まわりはまるで世紀末。世界の終わりのような惨状になっているって言うのに、緊張感の感じられないその声に私とアメティアは目を合わせてから思わずふふふと笑ってしまうくらいには。
何より、なんて都合の良いタイミングで現れてくれたんだろう。
「ルミナス、無事だったみたいね」
「もちろんです!!」
ぶんぶん手を振りながら現れたのは新城 昴ことルミナスメモリー。それと彼女が率いるチーム『メモリースターズ』の4人だ。それに私の妹のノワールの姿もある。
3人から5人に増え、更にノワールも合わせて6人の大所帯。まだまだ発展途上の彼女達でもこれだけ増えればやれることは増える。
何より、この状況でルミナスメモリーが現れたことはあまりにも幸運だ。いや、必然なのかしらね。
「最速でお姉ちゃんのところに行くのが良さそうだったから」
「流石ね。間違いなく最適解よ」
合流したノワールに視線を向けるとやはり『未来視』で最も良い結果を出せる選択肢を選んだようだ。
完全にコントロールは出来てはいないらしいけど、すぐ先の未来くらいならある程度選んで視ることに出来るようにはなっているらしいから、そういうことなのだろう。
特に非戦闘時であれば気にすることなく使えるだろうしね。
数多ある選択肢の中から、運よく観れた未来。その中から選んだ最適の答えを持って来てくれたことには感謝しかない。
何せ、この状況で最も有効な能力を保有しているのは間違いなくルミナスメモリーだからだ。
「ルミナス。『浄化の光』は使える?」
「一応? イマイチ、その『浄化の光』って言うのがわかっていないんですけど、アリウムさん達は知ってたんですか?」
「情報としてはね。確証は無かったんだけど、ショルシエには効いたみたいね?」
『浄化の光』。ルミナスメモリーが使う『光』のメモリーに入っている、リュミーという妖精が持っているこの特殊な光属性のことをそう呼ぶことを知ったのは私達もこの最終決戦に入る少し前のことだった。
ルミナスには伝えていなかったんだけど、知っているってことはショルシエと戦った時に聞いたのね。ルミナスも首を縦に振ってるし。
「僕の調べたことがちゃんと意味があってホッとしてます」
「スタン、知ってたの?」
「口止めされてたんですよ。ルミナスに先に教えておくと、それを前提にした特攻攻撃をしかねないから、ギリギリまで言わないようにと」
言わなかった理由は二つ。ルミナスメモリーにその特殊な光属性の片鱗がまだ見えなかったことと、変身者である新城 昴の性格を考えると事前に伝えておくのは危険だと言う番長の判断からだった。
無鉄砲な性格の昴がそれを知ったら、キチンと発現しているしていないに関わらず、それを前提にして戦略を立てかねないというのが番長の進言はどうやら正解だったみたいね。
「大将なら絶対やるぜ」
「間違いありません。ルミナスはやります」
「やるわね。しかも私達に黙ってやるわ」
「信用無くない?!」
ある意味信用あるわよ。ま、普段からどれだけ無鉄砲なことやっているかがわかるわね。強いリーダーシップは魅力的だけど、こういうのは玉に瑕な子なのよね。




