主人公
「若いね。少し私には眩しいくらいだ」
ことの一部始終を見届けていたピット博士が優しく笑いながら、飛び出していったパッシオ君を見送っている。
本当に眩いですよ。自分にあんな活力が若い時にあっただろうかと逡巡してしまうくらいには彼らの関係性と熱意は眩く、身を焦がすように熱い。
触れたら火傷をしてしまいそうだ。
「東堂さんはそんな悲観するほどのお年では無いと思いますが?」
「そうでもないさ。私は既に燃えカス。君達を見て、何とか熱意を維持してるだけのおじさんさ」
精々元敵役だったちょっと便利なおじさん、という役回りさ。私はメインキャラクターではない。
あくまでメインはパッシオ君も含めた魔法少女達だ。
「それを言ったら僕は既に脇役ですよ」
「縁の下の力持ち、の方が正しいんじゃないかな? 君はあとで外伝が書かれるタイプだよ」
「それを脇役って言うんじゃないですかね」
はぁ、とため息を吐くカレジ君。相変わらず君は表に立ちたがらないね。わからなくもないけどね。
いわゆるガラじゃないってヤツだ。身の程を弁えているとも言い換えることも出来るけど、勇者という称号まで持っていた君がそんなことを言うことは無いと思うけどね。
「勇者なんて大げさ過ぎるんです。たまたま、田舎の農村を守ったくらいで女王陛下から賜ってしまったもんですから、正直荷が重かった。今くらいの立場が丁度いいんです」
「聞く人が聞いたら嫉妬の対象になる発言だね」
「なんとでも言ってください。少なくとも、僕の物語は勇者の称号を賜った時点で終わっているんです。パッシオと知り合ってから尚更その気持ちは強くなりましたよ」
それは分かる気がするね。真白君然り、他の魔法少女も然り、パッシオ君もそうだ。彼女達はとにかく強い。
何が強いと言えば、心が強い。何度挫けても、どんなに無謀でも困難が立ちふさがっても彼女達は絶対に諦めない。
最前線で戦う彼女達はまさに主演級の存在だ。
「ほほほほ、人生を物語と見立てるのなら儂はどうしてもスバルが主人公と見てしまうがね」
「ピット博士から見たら、そうなるでしょうね」
可愛い孫のようなものでもあるでしょうしね。昴君自身の精神性もまさに主人公らしさはある。
この短期間で見せた成長もそれらしいだろう。表現するなら、第二部主人公といったところか。
「なら、第一部主人公は間違いなく姫様になりますね」
それも間違いないだろう。今までの全ての事件に関係し、ここまで中心人物として引っ張り続けて来た真白君はそれこそ主役に相応しい。
むしろ、彼女以上の適任者はいない。そのほかの魔法少女達もやはり全員主演級。誰がどこを切り取っても、物語の主役としては遜色ないに違いない。
それほどまでに彼女達は強く、たくましい。
だが、私は別の人物を押そう。
私はこの物語を始めた人物こそが、この物語の主人公だろうと思っている。
「私が主人公だと思っている人物は、今まさに旅立ちましたよ」
飛び立っていくドラゴンの背に、小さく見える姿。さっきまでここにいた彼こそが、きっとこの物語の主人公に違いないと、私は思う。
小さなワンルームのアパートの一室で燻ぶっていた青年を彼が見つけ、手を差し伸べなかったたら始まらなかった物語。
きっと、彼は最初から真白君のための騎士だった。じゃなければ、あまりにも天文学的数字だろう?
滅びた国の王族の末裔と、その騎士が出会うなんてものがどれだけドラマチックな展開だろう。
先ほども言ったが、私は案外ロマンチストなのだ。
「行け、主人公」
騎士がお姫様を助けなきゃ、一体誰が助けるんだい?




