友達
エルフ族が持つ植物属性の魔法と影属性の魔法、そして結界魔法を使って再現された鬱蒼とした暗い森。
視覚情報を奪って、木と結界魔法を使って疑似的に複雑な地形を生み出す魔法。
シルトの言う通り、目くらましと時間稼ぎにはうってつけの魔法だけど、問題は。
「悪くない魔法だ。だが、私に通用するかは疑問だがな!!」
腕の一振りで周辺の樹と結界がへし折られ、砕かれる。まぁ、こうなるわよね。ショルシエ相手なら稼げる時間はあまりにも短い。
視界を遮って、こっちに有利なフィールドを用意しても腕の一振りでこれだ。全部壊されたわけじゃないから、おじさん達が逃げるための目隠しくらいにはなるだろうけど、私達の姿を隠すための領域の障害物は殆ど取り除かれたと言っていい。
「くっ?!」
薙ぎ払われた樹木の破片から私を庇うスルト。変身が出来ていないせいで、こんなことでもまともに身体に当たったら重傷だ。
ホント、自分の魔力管理の甘さが招いた結果に舌打ちも出ない。
戦えたら、変身出来たらもう少しマシな状況なのに。
「疑似的に地形を生成するという発想は面白いな。『激流の魔法少女 アズール』に至っては空間の書き換えとか言う魔法の領分を超えたことまでやってみせたし、やはり貴様ら魔法少女は面白い」
「随分饒舌だね。なんか良いことでもあった?」
「さぁな。それを教える程、私もバカじゃない」
ちっ、調子に乗っているから喋ってくれると思ったんだけどな。妙にハイテンションなショルシエのことだから、何か自分にとって有利なことが起こっているんだと思うんだけど、それをウキウキで語るほどのお調子者じゃなかったか。
でも、何かが起こっていることは確実。ショルシエがここまでで喜ぶようなことがあるとすれば、私達の誰かが倒されたか、あるいは完全に復活する段取りがついたか。
前者なら最悪。後者なら作戦通り。どっちかな、でも倒したのならそれを誇張しそうだし後者な気がする。
だとするなら、私達にとってはピンチでもありチャンスでもある。
「シルト、何が何でも生き残るよ」
「勿論です。良からぬことを企んでいることは言葉の端々から感じますしね」
そう、さっき言っていたショルシエの言葉の中で幾つか気になる言葉があった。それは「力が欲しい」という言葉だ。
単純な魔力ならショルシエの方が遥かに上だ。それ以上を望む上昇志向があったことに驚きだし、それを私達に向けて言っていることだ。
私達の能力を評価して「欲しい」と言っているあたり、まるで私達から能力を奪ったりすることが出来るような物言いだ。
そんなことが出来るなんて聞いたことがない。あるとするなら、『隷属紋』や『獣の力』で一方的に従えて、自分の配下として操ること。
それを欲しいと言っているのなら確かに文脈としては繋がるけど、どうにもそんな雰囲気ではない。
まるで私達の持つ才能や知識、経験がそのまま欲しいという言い方に聞こえてならない。
もし、そんなことが可能なのだとしたら、私達は絶対に負けちゃならないってことになる。もし倒されるようなことがあったら、力や能力を奪われるようなことがあったら、それだけでショルシエの強化に繋がる。
仮にそんなことが可能なのだとしたら、それは……。
「『権能』……!!」
「流石だ。人間と言うのは本当に頭の回転が良い。その高い知性こそが貴様らの最大の武器なのだろうな」
ここに来てまた新しい能力かと表情が歪む。一体、幾つ用意したんだ。
ショルシエが私達への対抗策として用意しただろう特殊異能、『権能』。私が見ているのは『淫蕩』っていうのだけだけど、多分他の分身体にそれぞれ配られているんだと思う。
そして、それが倒されると自動的にショルシエに返還される。クルボレレとニーチェさんが倒した7本尾の分身体が持っていた『淫蕩』の能力は実際にショルシエの手に戻って私達相手に使って来ていたのはさっきまでの出来事だしね。
逆を言えば、他にも分身体が倒されたって証拠でもあるんだけど、そうすればするほどショルシエが強化されるのってまぁまぁクソゲーだよ。




