満ち欠けた日常
そのあと場所やら集合時間やら、諸々のすり合わせをしている千草たちを見て、私は一つ思いつく。
自分自身のチャレンジも含んでいる。そろそろ、諸星のお屋敷と、学校以外の場所にも足を踏み出さないといけない頃合いだ。
「ねぇねぇ、千草」
「ん?なんだ?」
「私も一緒に行っても良いかな?」
その提案は、千草にとって予想外だったらしく、目を丸くしている。
私のASD(急性ストレス障害)は、この間の事件であの男と直接対面してもなんとか対応することが出来た。
興奮状態にあったかも知れないが、それでもトラウマの原因と正面切って会話もしたし、接近戦でもやり合っている。
かなり良くなっている、そう思って良いんじゃないかと考え始めている。
それに、そろそろ本当に知らない第三者ばかりがいる空間にも慣れて行かないといけない。
性急かも知れないけど、今後の日常生活を考えれば絶対に必要なリハビリだ。
「……私だけじゃ決められない。家の皆と、先生を呼んで、話し合ってからにしよう」
「うん、それで良いよ」
しばし悩んだ後、まずは担当医でもある新田先生や光さん達との相談をしてから決めようと提案してくれた。
頭ごなしに否定せず、私の気持ちを出来るだけ尊重しての回答だと思うので、私からしても不満は無い。
「真白さん、ですよね?何かご事情がおありとのこと、風の噂程度ではございますが聞き及んでおります。ご無理はなさいませんよう、ご自愛のほどを。もしお越しになるのでしたら、わたくしども剣道部も可能な限りのサポートをお約束いたします」
「ありがとうございます」
剣道部の彼女もその話を間近で聞いていたので、もし来るなら、と言ってくれた。
千草の時とはずいぶん対応が違うのが気になるけど、流石はお嬢様学校。切り替えが早いと言うか、お嬢様モードにはすぐスイッチ出来るみたいだ。
「私の時とはずいぶん対応が違うと思うんだが……?」
「千草さんとは割合顔なじみですし、こういうのは苦手じゃないですか。真白様は私達から見ても如何にもお嬢様然としてますし、何と言うか自然とですね」
「案外、ただの悪戯っ子だぞ?この前はベッドに隠れてウチのメイドを驚かせていたしな」
わしゃわしゃと頭を撫でられて悪戯っ子だと称されるが、ちょっと美弥子さんを驚かせようとしただけである。
驚かせたのが別のメイドさんで、驚きすぎてスカートのすそを踏んでひっくり返ったのは見てて面白かったです。すぐに介抱したけど。
「絶対後で怒られてそう」
「多分怒られてると思うよ~」
冷静に分析する優妃さんと美海ちゃんの言う通り、めっちゃ怒られた。
光さんと美弥子さんにダブルで怒られたので、今後使用人さん達には悪戯しないと心に決めている。
最近の主なターゲットは千草なのは言うまでもない。
「意外とお茶目な方なんですね。もし、本当にお越しになるなら早めに連絡をいただけると助かります。必要であれば私の家からも人を出しましょう」
「いや、あまり仰々しくすると周りとの軋轢も生むだろうからメインでウチから必要最低限の人員を出すことになると思う。その辺りも、決まり次第連絡するよ」
「よろしくお願いします。では、失礼しますね」
最後はお嬢様らしく、お淑やかに去って行った剣道部の女子生徒を見送り、私達もようやく本格的に帰宅の途につくことにする。
とはいえ、私と千草、美海ちゃんは家の送迎があるし、優妃さんはバスケ部に顔出すと言っていたので昇降口で解散になるんだけどね。
「中間テストが終わったっていうのに、やる事が山積みだな」
「ま、気分転換には良いだろ。私も久々に思いっきり身体動かしてくっかなー」
「柔軟はちゃんとするんだよ?怪我するから」
ウキウキした様子で歩く優妃さんに、私は柔軟をしっかりするように注意しておく。
テスト期間で最低でも一週間近くハードなスポーツはしてない筈。柔軟などの準備運動を入念にしておかないと怪我の元だ。
「わーってるって」
「前に一回それで怪我してるからね~」
「バラすなよー」
美海ちゃんに昔それで怪我したことをバラされ、不満そうにする優妃さん。それを見て私達が笑うとちぇーっと言って、唇を尖らせた。
誰かが欠けても、日常と言うのは回るもの。そんなことを頭にちらつかせながら、それでも今はそれを意識しないように、私達はそれぞれの場所に足を向けたのだった。
アホな企画として、Twitterで作者の該当ツイートが2019/9/8の21:30までに、50RT達成すると、毎週日曜日にやってるツイキャスでアリフル朗読会をする
とか言う誰が得するかも全くわからない企画やってます
マジで誰が得するのかは分からない地獄を作者に味わわせたい人は作者プロフィールから、Twitterに飛んで、該当ツイートをRTすれば良いと思います(やると言ったからにはマジでやるのでボイスサンプルがリプライにぶら下がってます)
さぁ、地獄を楽しもうぜ……
あと毎週日曜日のキャス自体は作者の雑談と、作品についてのお話、リスナー(大体アリフル読者)さんとの交流がメインです
暇な人は遊びに来てね




