無限界牢
「だがどうにもこうにもな」
「やっぱ手当たり次第壊してみる?」
まるで無限ループだ。ここから抜け出すには要素が足りなさすぎる。頭を使って解決するには私達の技術と知識が足りないし、力技で解決するには運要素が強すぎる。それでいて出来るだけ短時間かつ、消耗は少ない方が良い。
都合よくやろうとし過ぎ、と言われればそれまでなんだけど理想は理想に近い方が良い結果に繋がるのも事実。
ようは何処で落としどころを付けて、それで確実に結果を出すか、なのだけど何度も言うようにそのどちらもやりようが無い。
唯一上がった方法の手当たり次第に周囲を破壊してみるという方法は博打。なんならミスリードの可能性の方が高いでしょうね。
「ママ大変?」
「そうね。メルも何か変な感じとかしたら教えてね」
「はーい」
ポーチから頭だけ出して大人しくしているメルドラに一応、気になることがあったら教えるように言ってはおく。勿論、期待というかメルドラ頼りにするつもりはない。
ただメルドラは何かと感覚が鋭いというか、他とは違うところがあるのをちょくちょくと感じる。
独特な感性なのか、子供由来の何かか。それとも、メルドラが特別な何かなのか。
メルドラの親が未だに見つかっていないと言うのも個人的には怪しんではいる。ドラゴンなんてその辺にいるわけじゃない。妖精界のドラゴンは竜の里にいるハズなのに、親が誰かわからないっていうのはおかしいもの。
竜の里以外にもドラゴン族がいないわけでは無いとは思うけど、だとしたって相互に認知していないってのもね。
ドラゴン族の行動範囲はそれなりに広い。どこかでバッティングしてていいし、メルドラの出生の謎については時間が経てば経つほど、謎が深まるばかりだった。
「とりあえず移動するしかないか」
「振り出しに戻る〜」
「お気楽ね」
「1人くらいは能天気なのがいた方がいいでしょ?」
チョけるグレースアにツッコミを入れるとそれなりにちゃんとした答えが返って来て何も言えなくなる。
正直苦手なのよね。嫌いとか喋りたくないとかじゃなくて、グレースアはそのおちゃらけた様子から想像出来ないくらいに物事を冷静に見ている。
そのうえで自分のキャラを演じ分けしてるというか、敢えて軽いノリをしているのが付き合いが長くなると分かってくる。
真面目なのに真面目じゃない。本気じゃないのに本気。
押しても返ってこないと思ったら時間差で返ってきたりするような感じはまるで幻を相手に話しているような気分になってくるのよ。
何と言うか、実体が無い感じ。幽霊とも言えるかも。
雪女としての力が強いらしいから、そういう気質なんだろうけど私からすると掴みどころがなくてどうにも、ね。
「ルビーは逆に普段から雰囲気あり過ぎるからね~。私にはちょっと熱すぎるかな」
「なんか悪いわね」
「お互い様だよ。まぁ、嫌いとかじゃなくて種族の遺伝子レベルの苦手意識って感じだと思ってるよ」
苦手だと思っているのはどうやらお互い様らしい。人数がいる時は何にも気にしないんだけど、こう人数が少ないとなんかね。フェイツェイは付き合いの長さもあって、何にも思わないんだけど。
それにしても種族レベルで、か。確かにそう言われれば諦めもつくわよね。炎を操るドラゴンと氷を操る雪女が相性が良いとは私も思えないし。
「その辺は時間が解決するんじゃないか? ちょっとした違和感みたいなものだろ」
「この中で一番雑な人にだけは言われたくないかなぁ」
「同感。基本的にノンデリだし」
「お前ら本当は仲良いんじゃないのか?」
私達が未だに距離感を測り損ねているよねって話をしているところにフェイツェイが横やりを入れて来るけど、それが言えるのはそれが相手が苦手だろうがなんだろうが自分の距離感だけでコミュニケーションを取るフェイツェイだからでしょ。
って言ったら物凄く文句しかないって顔で反応された。まぁ、普段の言動が原因でしょうよ。




