思春期少女の悩みと出会い
おばあちゃんとその飼い猫のレオとは、3年前まで一緒に暮らしていた。
魔法少女として正式に政府に登録される、少し前の頃。
当時、おばあちゃんはもう80歳を超えていて、私と同い年だった猫のレオも10歳とおばあちゃんもレオも高齢、と呼ばれる歳だった。
亡くなった時は、病気では無かった、とママとパパからは聞いている。レオは少し死んじゃうには早かったけど、何か病気の兆候が有った訳では無かったし、おばあちゃんが寂しくないように、一緒にお空に昇ったんだって思っている。
おばあちゃんは私に似て、と言うよりは私がおばあちゃんに似ているんだけど、物凄く負けん気の強い人だった。
勝負ごとに負けるのが物凄く嫌いだったし、何か陰口を言おうものなら真っ向から口喧嘩でけちょんけちょんにするような人だった。
孫の私にも、トランプとかで負けようものなら次は負けないとインターネットで必勝法を調べちゃうようなアクティブな人。
私には常々、『物事には情熱持って取り組みなさい。好きな事、大事な事、やりたい事、やらなきゃいけない事には特にね。その燃える様な心こそが人を何よりも動かすんだよ』
なんてカッコいいことを言ってくるのが私のおばあちゃんだった。
レオは何というか、兄妹みたいな感じだった。
碧と紫も、レオの事はよく知っている。私が外に出ると一緒になってくっ付いて来ていたからだ。
一度、学校にまでついて来た時は困った。先生には怒られるし、怒る先生にレオも怒って飛びかかるし、ママもパパも、おばあちゃんまで来て大騒ぎになった事を覚えている。
その後は、レオも学校にはついて来てはいけないと覚えたみたいで、学校までは入って来なくなった。
それでも、学校の門までは付いて来るし、帰る時はまた一緒に帰っていた。
おかげで、当時の私のあだ名はボスネコ。主に言ってたのは男子だったけど、帰り道にからかおうものならレオに引っ掻かれていた。それを見て気持ちも晴れちゃってた。
そんなレオに、まるでお兄ちゃんね。なんてママとおばあちゃんは笑っていて、おばあちゃんはレオに朱莉を頼んだよなんて言っていた。
にゃー、なんてレオも返事をするものだから、ますますおかしかった。
ずっと一緒にいたレオと、ずっと当たり前に家に帰ればいたおばあちゃん。
そんなおばあちゃんも年齢には勝てなくて、お母さん曰く、眠る様にして、バルコニーにある日向ぼっこ用の椅子に座ったまま亡くなった。
年老いて、外に付いて来ることも少なくなり始めていたレオもその膝の上に乗って一緒に、だったらしい。
その時の事は全部お母さんから聞いたことだけど、当時の私はわんわんと一日中泣いていた。
それから、何となく立ち直り始めた頃、私達は揃って魔法少女の適性がある事が分かり、魔法少女として活動する事になった。
最初はなるか、ならないか、うんうん悩んだけど最後に決める理由になったのはおばあちゃんの言葉と、私を守ってくれている様なレオの行動だった。
魔法を使える私が出来る事をやろうって。
それが、天国にいるおばあちゃんとレオに胸を張れるような事だと思った。
「……」
ただ、最近の私はとてもじゃないけど2人には見せられる様なものじゃないと思う。
焦りに焦った結果出動禁止令になるし、その焦りのせいで生まれた不調が原因で大怪我までした。
挙句の果てには今の自信消失状態。こんな情けない姿、見たら呆れられちゃう。
「おばあちゃん、レオ……。私、何が出来ると思う?なんかもう、全然自信無くなっちゃったよ…」
部屋のベッドに寝転んで、サイドボードに飾ってあるおばあちゃんとレオと私が一緒に写った写真に、そんな弱音を吐いて、そんなサマも情けなく思えて。
色んなモヤモヤが晴れないまま、私は逃げる様にして、枕に顔を埋めた。