帝王レクス
光と星の弾丸の雨あられがショルシエに殺到する。さっきの分身に撃った魔法の比じゃないのが、私達の警戒度の表れと言って良い。
「ふんっ!!」
それが通用する。とは言って無いけどね。片腕の一振りで直撃コースの弾丸は全て弾かれた。
分かっていたことだけど、現実として見せ付けられると舌打ちしか出ない。
魔力だけは立派なバケモノめ。ただの『固有魔法』級程度じゃ、片腕だけで十分ってことね。
逆を言えば、防ぐ必要はあるってこと。当たってもダメージにならないのと、当たればダメージになるのでは話が大きく違う。
問題は、今の魔法を弾いたようにただでさえ分厚い魔力の膜を体表に常時展開していることと、どうやらそれ以外の超強力な障壁のような防御手段を持っているらしいこと。
以前、ルビーお姉ちゃんがショルシエと直接戦った時に使われたらしいけど、ルビーお姉ちゃんの攻撃力でギリギリ突破出来るか出来ないかって話だったことを考えると、分厚い魔力の膜はともかくとして、その謎の防御方法を突破できるのがこのメンバーに一人もいないだろうってこと。
「星と光とは憎たらしい組み合わせよな。相当、私のことを研究したと見る」
「嫌いな属性みたいね。お気に召したかしら?」
「あぁ、精々楽しませてくれ!!」
魔力の塊が無造作に放出され、私達はそれぞれ一斉に回避行動をとる。
ホント、技術も何も無いただの力の塊をぶつけに来ているだけなのに、魔力があるってだけでこの威力と範囲は相手にしてられない。
明らかに3年前に戦ったショルシエより強い。アレも分身だったことは後々知ったことだけど、オリジナルがこっちだと考えれるとその脅威度は頭で考えるのもバカらしくなってくる。
何の気なしに放ったただの魔力の塊が、床を削り、柱を何本も薙ぎ払い、入って来た豪奢で大きな扉を壁ごと吹き飛ばしているんだから。
本気でやればどうなるのやら。まぁ、そんなことしたら全員生き埋めだからやらないんでしょうけど。
それと研究とやらは知らないけど、どうやら星と光はショルシエの嫌いな属性らしい。
偶然か、紫お姉ちゃんが文献かなにかから見つけた記載から試すだけ試してこのチームにした感じかな。
私を含め、メモリスターズは変わった属性を持っているのが大半。
ルミナスは光属性、スルトは木属性、ブレーダーは剣属性、私は星属性。一般的な属性を保有しているのはブラザーの風属性くらいかな。
希少であれば強力な魔法が使えるわけでもないから、属性の希少性なんて普段意味のないことだけど、希少なだけあって、その戦術や得意な魔法の種類は個性的だ。
突破口を切り拓くなら、そういうところからになるかな。
私達の強みを生かして戦うしかない。
「出し惜しみは無しで行くよ!!」
「おうよ大将!!」
「修行の成果、お見せします!!」
その中で、ルミナス達は更に持っていた奥の手を投入していくつもりの様だ。ここで使わなければどこで使うと言われれば、使わない方が間抜け。
まだ戦いを初めて数か月とは思えない状況判断の早さには私も驚くよ。昔の私なら、きっと出し惜しみをしているから。
「させるとでも!!」
「同じ言葉を返してやろう!!」
新しいメモリーを取り出した3人に対して、警戒心をあらわにしたショルシエが攻撃を仕掛けるけど、ブレーダーが放たれた魔力塊を剣で切り裂いて不発にさせ、私がその隙に次々と星の弾丸を撃ち込んでいく。足止めはこれで十分なでしょ?
【『希望』!!】
【『水晶!!』】
【『影』!!】
【【【『Double Slot』!!】】】
「「「『思い出チャージ』!!」」」
目論見通り、ルミナス、ブラザー、スルトがそれぞれ新たに手にしていたメモリーを『思い出チェンジャー』に装填。腕時計のそれをぐるりと回して、3人はその姿を変化させた。
「白砂の輝き!! 『ルミナス・ホープ』!!」
「金剛の双腕!! 『ブラザー・クォーツ』!!」
「樹海の陰影!! 『スルト・フォレスタ』!!」
3人が見せた強化形態は姿かたちからして大きく変化しているブラザーのようなのもあれば、キラキラと輝く粒子を身にまとうルミナス。見た目的には特に変化が無いように見えるスルトと様々だ。




