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帝王レクス


ドタバタと走りながら進んでいたさっきとは違って、私達は極力ゆっくりと、警戒しながら前へ進んでいた。


あちこちから聞こえる戦闘音が今ここが戦場になったことを教えてくれる。


対して、私達は隠密行動用のマントのおかげか。通りすがる帝国兵達などには見つかることなく、スタンの案内で城内を進むことが出来ていた。


「なんで突然ショルシエは暴れ出したんだろうね」


人の気配が無いところで、昴さんが当然の疑問を口にする。


私達の計画では、油断しているショルシエと帝王レクスを奇襲する形で戦いが始まることを前提としていた。


ショルシエと帝王レクスは味方。というのが基本の話。わざわざ私達がそろそろ仕掛けて来るとわかっているだろうタイミングで身内同士の小競り合いなんて本当ならありえない。


「恐らく、僕の兄を殺すためさ」


「え、帝王レクスをですか? そんな事をしたところで……」


「簡単だよ。帝王レクスは最初からショルシエの味方じゃなかったってことさ」


「おん? ますます意味がわかんねぇぞ?」


ここでスタンは一つの種明かしをすることにしたらしい。


いや、種明かしというにはあまりにも希望的観測が過ぎる。そんなことを出来るのか? という疑念は晴れないままここまで来てしまった。


真白お姉ちゃんも、公国領主のリアンシさんも、そしてスタンもずっと疑問に思っていたことが、状況証拠を積み上げて、もしかして? と思えるようになった。


そういう話なのだけど、今回のショルシエの行動がそれを裏付けたと言ってもいい。


「僕の兄、帝王レクスはショルシエの味方のフリをして、ずっとチャンスを伺っていた、んだと思う」


「はぁ? だってお前、帝王レクスが今の地位について、ショルシエがそのそばにいて一体何年経ってると思ってんだ」


「そうだね。適当に数えても30年は経ってる。僕もまだ半信半疑だけど、ショルシエが僕の兄に攻撃を仕掛ける理由なんてそれくらいしか思いつかない」


スタンが帝国の王城に出来るだけ寄り付かないようにしたのも、リアンシさんを焚き付けて領主として決断を迫らせたのも、真白お姉ちゃんに王になるように最初に促したのも。


全部、帝王レクスのしたことだ。誘導され、触発され、キッカケを作ったのは誰でもない、敵であるハズの悪の帝王。


考えれば考えるだけ、そこに矛盾が生まれる。何故、敵に塩を送るような行動をそれとなくして来たのか。


当然、それ以上に許されない行いも多々あるのだろうけど、これが帝王レクスがひたすらに耐え忍んで、私達魔法少女のような存在を。


ミルディース王国の『繋がりの力』が復活する事を虎視眈々と狙っていたのなら。


「帝王レクスは私達の味方でスパイみたいなことをずっと続けてた、ってこと?」


「多分、ね。本当のところは兄さんに聞くしかない。ただ色んなところで兄さんは不可解な行動をしていた。それひとつひとつなら無視出来るけど、こうも重なると偶然ではなく意味のある行動ってことになる」


「もしかすると、本人は悪者を演じているんじゃなくて本当に悪として私達に討たれようとしているのかも」


私が思うに、かもなんて不確定な言葉で濁しているけどスタンのお兄さんはそういうつもりなんじゃないかなって思う。


だから未だに私達に、スタンにすら敵か味方かの本当の判別が出来ていない。

最初からスパイのつもりなら、スタンに明かしてパイプ役をお願いするはずだから。


それをしないってことはそうじゃなくて、自分を犠牲にしてでもって気持ちは少なからずあるような感じられる。


スタンもそれは感じとっていると思う。


「だとするなら、もの凄い覚悟と精神力。何より、お優しい方なのですね」


「兄さんが優しいのは間違いないけどね。ただそこは直接問いただすしかないんだ。兄さんにしか、わからないことだから」


自己犠牲の精神、だよね。自分はどうなってもいい。悪と呼ばれても良いから、スタンや私達に未来を託している。


その予想が本当なら、スタンのお兄さんは善人過ぎるくらい、善人だ。

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― 新着の感想 ―
レクス「…スタン、今からお前が帝王だ。…(剣の鍵パスワードを伝える)…ショルシエは、…最初から私を生かすつもりがなかったらしい…仮に、本心で仕えていたとしても…殺すつもりでいたと。…帝国と…妖精界…を…
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