最終決戦
「何?!」
「わかりません!! クルボレレさん!!」
「了解っす!!」
一足先に城壁内にあるスタン君の秘密基地へとたどり着いていた私達は突然の揺れに驚くしかなかった。
膨大な魔力の放出だけは分かった。この魔力量はおそらくショルシエの攻撃。だけど、私達に向けられたモノじゃない。
一体、誰に? しかもショルシエ本人がわざわざ動くというのはどういうことなのか。
あのショルシエだ。自分から手を汚すことを嫌い、出来るだけ配下などを使ってそうなるように仕向けるのがいつものやり方。
本人が動くという事はよっぽど切羽詰まった状況か、あるいは今すぐ、確実に殺したい相手か。
【お城が崩れてるっす!!】
外に状況を確認しに行ったクルボレレから、帝国の王城が崩れているという報告が上がって来る。
どのくらいの規模感かは不明だけど、あんな地響きと揺れが来るくらいだ。かなり大規模に崩れていると考えて良い。
私達の侵入に気付いた? いや、でもそれならもっと別のアクションで良い。本当に何故? 自分の巣でもある王城を壊してまで、一体何をしようというのか。
考えを巡らし、思考を深め、予想を立てる。ショルシエ本人が自分から、手を下す相手。しかも城の中にいるような相手と言えば……。
「帝王レクス……!! スタン君!!」
「こちらアメティア!! メモリースターズ組、聞いていますか!!」
【聞こえています!!】
【もうちょいで着くところだったんだがよ!!】
私が思い至って、すぐに紫ちゃんが行動に移す。狙われるとしたら、帝王レクスしかいない。まさか、このタイミングでバレたの?
そうだとしたら、同じ話を内内で共有しているスタン君の心境は想像に余りある。だけど、それは止めなければならない。
ショルシエ本人が帝王レクスを殺そうとしているのなら、それを止めようとしたらショルシエと戦うことになる。それだけは不味い。
下手をしなくても帝国の『繋がりの力』が失われることになってしまう。
「スタン君は?!」
【それが、飛び出して行ってしまって!!】
焦りと困惑が入り混じったリリアナさんの声にこちらは頭を抱える。そうなるのは当然だ。私でもそうする。それが罠だとしても、千草や墨亜が同じことになっていたら私も同じことをやる。
だけど、それが罠かどうかはさておき悪手だ。スタン君を失うのだけは絶対にあってはならない。
【お兄さんを助けに行った!! 今すぐ連れ戻す!!】
「絶対に連れ戻しなさい。分かってるわね、ノワール!!」
【わかってる!!】
ノワールに首根っこを引っ掴んででも連れ戻すように言う。大事な人を失いたくないなら、出し惜しみなく全力を出せ、という意味も込めて。
それをわかっているかどうかはさておき、ノワールからはいつになく焦った声が返ってくる。頼んだわよ。
「全員、戦闘準備!! 今すぐ出るぞ!!」
「番長さん!! 作戦を変更します!!」
【わかった。全員、まずはメモリースターズ組の救援、ショルシエに狙われている者の救護を優先!! 敵と遭遇した場合は個々で最速処理しろ!! 強敵の場合は即座に連絡!!】
「「「了解!!」」」
アズール、アメティア、番長の指示がそれぞれ飛び、私達は急遽作戦を変更して、時間を置かずに帝国王城へ突入する。
最初から波乱の展開だけど、私達ならどうにかなるハズ。まずはスタン君を止めないと。