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思春期少女の悩みと出会い

ざぁざぁと降りしきる雨の音が窓の外から聞こえるのを耳にしながら、私達は魔法庁内の休憩室の一角を借りて、2学期の中間考査対策の勉強会をしていた。


「じゃあヨーロッパ北西部が高緯度な割には温暖な理由を答えてください」


「えっと暖流の影響で温まった空気が、風に乗って来る、だっけ?」


「うーん、大体は正解だけど、風に乗るじゃなくて偏西風に乗るって言った方が良いと思うよ」


紫がワークを見ながら出してくれた問題を、私はうんうん唸りながら答える。中学に入ってから、勉強の難易度は露骨に上がった。

小学生の頃はテストなんて満点が当たり前だったけど、中学に入学してからは平均点を取るのがやっとだ。


特に私は英語と地理歴史辺りが不得意で、あまりいい点数は取れていない。


「テストなんて教科書読んでりゃどうにかなんのに真面目だなー、お前ら」


「アンタがおかしいのよ碧。普通の人は教科書を読むだけで80点とか取れないわ」


「まぁまぁ朱莉ちゃん。碧ちゃんは例外だから……」


近くの机で寝そべっている碧に煽られ、ムカっとしたので言い返すも紫がまぁまぁと宥めるので矛先を収める。


碧は勉強嫌いなくせにテストの点数だけは良いのだ。聞けば授業態度は悪いし、提出物は出さないしで内申点は散々なのだけど、テストの結果だけは良いものだから平均程度の成績には落ち着くとかいう、はた迷惑な事をしているらしい。


テスト対策もテスト前の休み時間に、指定された教科書の範囲をペラペラと読み返すだけだとか。なによ、その漫画みたいなハイスペックは。私にも半分くらい寄越しなさい。


「おっ、やってるね。感心感心」


「テスト勉強っすか?ならボクもやろうかな」


「あ、藤ねぇに黄瀬さん。トレーニングはもう終わったんですか?」


そうやって休憩室にたむろしている私達のところに、訓練場で指導していた破絶の魔法少女 ウィスティーこと東風(コチ) 藤子(フジコ)姉さんと、疾駆の魔法少女 クルボレレこと黄瀬(キセ) (マイ)さんがトレーニングを終えて戻ってきたようだ。


2人とも既にシャワーも済ませたようで、藤姉は私服、黄瀬さんは学校の制服だ。私達のところとは違う中学の制服に身を包んだ彼女は何と言うか普段のハキハキした印象とは違い、見た目だけならのんびりしてそうな女の子だ。


「えぇ、中間考査も近いし、程々にね。魔獣とは戦わないと言う約束で、政府預かりにしてもらったのだからあまり無茶もさせられないし」


「ボクとしては正式に所属したかったんだけど、今はこの辺りが限界っぽいですね」


自販機で買ったコーヒーを手にダークブラウンに染めて、うなじで雑に縛った藤姉がガタリと音を立てて休憩所の椅子に座る。


S級魔法少女として、忙しい藤姉は綺麗なのに暇が無いからと色々雑だ。

もうちょっと昔は髪型とかもしっかりしてたし、服装も気にしてたんだけど、最近は魔法庁にいる間なんかはヨレヨレのスーツ姿であることが多い。

今もそうだ。


忙しいから仕方がないと言えばそれまでだけど、たまに雛森さんと並んでヨレヨレボサボサの姿でいるのを色々と思うところがある。


女性として、と言うよりは人に見せる姿では無いと思う。

2人とも綺麗なのに、勿体無いと言うか、何というか。

……私がもっと強くなれば、2人も楽が出来るんだろうか。


「ボクも混ざって良いですか?あんまり勉強は得意じゃなくて……」


「勿論だよ!!でも舞ちゃんと同い年だなんて思わなかったなぁ」


「いやはや、見た目だけが大人っぽくなっちゃって。中身は子供なんで、結構驚かれるんだ」


クルボレレこと、黄瀬さんは私より1つ年上の14歳。正直、クルボレレに変身してる時も、変身前もこんなに年が近いとは思ってなかった。


黒髪のボブカットにのんびりした雰囲気のある垂れ目。すらっと高い背は、大学生で身長も高い藤姉と同じくらいだ。170cmに近いんじゃ無いだろうか。


多分、その大人しそうな見た目と高い背のせいで、年上に見られるんだろうなぁ。

ちょっと羨ましい。

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