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最後の作戦会議


やりたい事を一通り終えて、私は部屋へ美弥子さんの淹れてくれたお茶を飲んで一息をついていた。


「緊張なされていますね」


「そりゃあね。撤退のタイミングとか手段とかは色々考えたとは言え、正直に言えば一発勝負のぶっつけ本番の最終決戦だもの」


それだけ素早い撤退、失敗の判断の明確化。と何度でもトライ出来るという姿勢は見せたものの、現実として最大のチャンスは最初の一度きりだ。


今回の戦いで一発勝負を決めきれなければ、ショルシエは『獣の力』を行使し、妖精達を何度となく暴走させるだけでこっちの状況はどんどんと不利になっていく。


時間が経てば経つほど悪化する状況。統率力も弱まり、妖精界側は自壊していく可能性すらある中で、だらだらと何回もトライなんて出来ない。


あれはどちらかと言えば致命的な失敗を避け、可能な限り時間を稼ぐための手段であって、勝つための手段ではない。

勝つには最初の戦いが最大のチャンス。これを取り逃せば、私達の勝率はガクンと下がる。ほぼ絶望的な数字なると言って良いだろう。


「私の淹れるお茶が気休めになればいいのですが」


「十分リラックス出来てるわ。いつもの日常ほどリラックス出来るものはないもの」


美弥子さんの淹れるお茶は私にとって日常生活の中で最も重要なルーティンのひとつと言って過言じゃない。

このルーティンを熟すというのが心身ともにリラックス出来るモノだというのは医学的にも証明されているもの。


「それなら良かったです。事態が混迷を極めるほど、私のような一般人に出来ることは限られて来てしまいますから」


「生身でその辺の魔法少女より強い人が何を言ってるんだか」


美弥子さんも十分、こっち側の人間ですよ。じゃなければ生身の人間が妖精界に一緒に来るなんてことはとてもじゃないけど出来ない。

そんなとんでもないことが出来るのは並々ならぬ覚悟を持った人か、頭のネジがぶっ飛んでる人か。


美弥子さんは前者、昴は後者だろう。どっちにしたって普通の人の感性じゃないのは確か。それにプラスして、美弥子さんも昴も生身の人間とは思えないほどの戦闘能力を有することが出来ている。


ここで仕事を任されている時点で選りすぐりのエリートなのだ。美弥子さんの場合は私達の日常生活のサポートという点に特化しているから、目立たない立場というだけで私達の妖精界での生活で美弥子さんがいなかったらどうなっていたのか想像がつかない。


今でもブローディア城で働く人達のトップとして指示を出しているのだ。縁の下の力持ちとは言うが、美弥子さんを役立たずと罵る人が仮にいれば、それは物事をたった一つの側面からしか見ることの出来ない程度の低い人、と評価せざるを得ない。


「また強くなったでしょ」


「妖精界では高嶺流の技も使いやすいですから」


「知らないうちに魔力操作どんどん上手くなってるんだもんなぁ……」


そんな大したことないですよ、みたいな顔してるけどホントに十分おかしいからね? なんで魔力の貯蔵量がそんなに無いハズの美弥子さんが魔力操作能力だったらA級並みなのか。


昴みたいにメモリーの外部タンクを運用しているのではなく、純粋に自身の少ない魔力を高効率で運用する技術に長けている。

更には周囲の魔力を自分の魔力の様に操る能力にも長けている。


古い魔法だと言われる高嶺流の魔法の高い魔力効率にも驚かせられるけど、やはり美弥子さんの持つ少量の魔力操作能力は私のそれとは似て非なる物。

例えるなら全身に魔法陣を刻んでいるようなものだ。少ない魔力で高効率の魔法を生身で運用する技術は本当に凄いことなのだから。


「そのうち東堂さんにも目を付けられるだろうね」


「それが真白様のためになるなら、ご協力いたします」


裏を返せば、タダでは協力しませんよ。という強かな面も美弥子さんらしい。未だに東堂さんに言い顔をしないからなぁ。警戒心が強いと言うか、忠誠心が強いと言うか。


「ところで、パッシオ様やカレジ様達の行方はわかったのですか?」


「一応、大体はね。あれだけ大人数が移動して、集まれる場所は限られてるから」


話は変わって、パッシオとカレジ。そしてその他多数の妖精達の行方についてになる。彼らの居場所を把握しておけば、速やかな連絡手段を用意するのは難しくない。


接触は、彼らの心情を考えれば慎重に行うべきだろう。自分達から無理をして離れたのに、それを考慮せずに無遠慮に近づくのは憚られた。


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― 新着の感想 ―
外部魔力の操作に長けているって、既に逸般人なのでは? まあ、外部の魔力を使えれば、理論上は魔法を無限大に拡大できるということですし。
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