表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1639/1659

最後の作戦会議


「それじゃあ、私が人間界に行くわ。真広、アンタは妖精界に戻って――」


「いや、俺が行く」


ショルシエの狙いを潰すなら私達の中で最強の朱莉が動くのが筋だ。それでも真広は譲らなかった。

あくまで自分が行く、と。こういう時に理屈ではなく、我を通すのはやはり珍しいことでまた目を丸くすることになる。


「なんでよ」


「言っただろ、俺のこれはただの勘だ。確証が無い。言い出しっぺの俺が動くのが筋だし、分身体とは言え、ショルシエの近くにいた時間が長いのは俺だ」


「自分ならショルシエの行動を読めるってわけ?」


「少なくともお前よりはな。実際、アテはある」


一理はあるし、既に真広にはショルシエが人間界で何をするつもりなのか、予想が付いているらしい。

誰よりもショルシエに近い場所に長い時間いたのは私達の中では真広だけだ。ショルシエの行動の予想も私達よりはしやすいのだろう。


だとしたら確かに真広のほうが動きやすいか。最初の当てが潰れても次の予想が立てられる。小人数で動くことでショルシエにも察知されにくいだろう。


「それにお前が抜けたら戦力が大幅に減り過ぎる。戦闘能力とかその他もろもろのことを考えれば俺が色々ちょうど良いだろう」


「ショルシエ本人が人間界で動くとは限りませんしね」


紫ちゃんの言う通り、人間界に行くのがショルシエ本人かどうかはまた別の話だ。それこそ3年前だって分身体だったのだ。今回何かをするにしたって分身体で動くと考えた方が無難。


単独で戦うだけの力があり、先走り過ぎない慎重な性格。諸星家の名前を使えば多少の無茶も効く。

ここは朱莉より真広の方が適材という判断は指示できるものだ。


「俺はどちらかというと逆だと思っているんだが……。いや、これこそただの想像だな」


「まだ何かあるのか? 想像でも良いから言ってみろ」


「いや、だから確証が……」


「確証が無いことに付き合わされるんだぞ。全部話せ」


理屈屋の真広は確証が無いことを情報として周囲に共有することを嫌う傾向がある。自分の中で浮かび上がった疑問を自分の中である程度裏を取り、意味や確実性があると判断出来た時だけにしか周りに話さない。


今回のこの件がまさにそれだ。自分の中で小さな疑問として燻ぶっていた物がドンドンと大きくなり、無視できないものになった。その上でその矛盾をしっかり指摘できる理由付けなどもある。


だから共有して、自分は別行動をしてその予想が当たっているかどうかを確認しに行く。そこから更に先に踏み込んだ話はまだ真広の中では妄想の範疇。

他人に話すような事では無いし、確証が無いから自分が確かめに行く。という本人なりの理屈なのだが、状況も状況だし、千草の言う事は至極真っ当なので言い返すことも出来ずに唸っていた。


数秒の逡巡のあと、諦めたように肩を竦めて自分がしている予想について口を開くようだ。


「ショルシエは妖精界から人間界に行きたいと言うより、人間界から妖精界に行きたいんじゃないかと思ってな」


「あ? 何言ってんだお前?」


「だから荒唐無稽だって言っただろ。俺はもしかしたら『獣の王』の本体は人間界にあるんじゃないかって思ってるんだ」


またそれは、大胆な予想だと思った。荒唐無稽と真広が口にするのも納得だ。まるで思春期の子供がひたすら周囲に逆張りし続けているくらいには無茶苦茶で意味のない予想と表現されてしまっても仕方がないくらいには驚きの主張は、碧ちゃんが顔をしかめるのもわかってしまう。


「何度も言うように、俺達と戦うってほどのリスクを背負ってまでショルシエが人間界に固執する理由がわからなかった。そりゃ人間界も妖精界も滅ぼすってのはあるんだろうが、だったら妖精界を潰してからくればいいだろ」


「欲張ったんじゃねぇの?」


「いくらショルシエとは言え、そこまで欲を出せば身を滅ぼすのはわかってるハズ。アイツはどちらかと言えば臆病でビビりなんだ。リスク負うより、リスクは避ける。それを俺達はずっと見て来ただろ」


そうだ。ショルシエは徹底して自分が直接戦い、関与するのを嫌う。分身体を使うのも、ずっと傍観に徹しているのも自分がリスクを負うのではなく、他人にリスクを負わせたいから。


臆病でビビり。草葉の陰からじっと身を潜めて獲物を狙う獣のように、自分が絶対に有利な時だけしか自分で動かない。


そのショルシエが人間界に拘るのは、無視できない何かが人間界にあるからだと予想できる。


「俺は人間界に『獣の王』の本体があると予想しているんだ」


「待て、だとするならあまりにもそれにおあつらえ向きなモノがある。そんなことが――」


ガタリと番長が音を立てて椅子から立ち上がる。その表情は珍しく、動揺の表情で、信じたくないという表情だった。

恐れも含んだそれに、私達は番長も行きついた真広の予想というものがとんでもないものだと理解する。


「S級魔獣、『人滅獣忌 白面金毛の九尾』こそが『獣の王』の本体。これが俺の予想だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
蘇妲己(封神演義)に取り憑いた九尾狐! 若しくは、平安時代に上皇を誑かした絶世の美女?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ