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罪と罰


正義と悪の違いなんて、エゴの貫き方なんだと思う。自分勝手にやるか、義理は通すのか、一番重要なのはそういうところなんだろうなって。


他にも立場とか状況とか、色々事情はあるんだろうけど、一番根本なのはそこだと私は思う。


真白さん達が正義の味方に思えるのも、ショルシエが巨悪に思えるのも、結局そういうところじゃない?


真白さんは正義と悪はそこしか差がないんだと教えてくれた。だから、正義の味方になるにはまずはワガママになる必要があるとも言える。


強い願望、絶対に叶えたい願い。曲げられない思想。


そういうものを持って、それが正しいんだと信じて、ルールとか常識すら上塗りしていくだけのパワーを持っていて、それを順序だてて変えていける人たちが正義の味方なんだ。


「私が譲れないのは友達のこと。友達には幸せでいてほしい、ずっと笑っていてほしい。そのために私が傷だらけになったって構わない」


「スバルも大概、歪んでるわよね」


「そうだよ。私がマトモだったことなんて本当は一つも無い。たぶん、私の根っこは悪なんだよ」


私は私を客観的に評価した時に頭のおかしい人に該当すると思っている。真白さん達のような、綺麗で真っ直ぐで誰かのための夢じゃない。


私は私のためのスケールの小さなエゴイズムしかない。私は友達を失いたくないだけだ。


もし、私が今まで出来た友達と誰一人として出会えなかったら、きっと『ノーブル』という宗教組織のなかで両親と人心を掌握して、信者からお金を巻き上げるような人間になっていたんだろうなって思う。


友達がいなかったら、私の交友関係なんてそのくらいしかないのだから。


「だから、戦うの? ついこの間までただの一般人だったスバルが、ショルシエみたいなバケモノと」


「そうだよ。私から友達を奪ったアイツを、私は絶対に許さない」


ピリアも、サフィーリアさんも私の大事な友達だ。素敵な人ならともかく、あんなのに渡すなんて絶対にあり得ない。

私にとって友達っていうのはそのくらい大事なものだから。それを奪った相手なんて許せないし、戦う理由になるでしょ?


私が壊れたっていい。でも、私の友達があんなのに都合よく使われるなんて許せないよ。ピリアが洗脳で行動を誘導されていたことを考えれば、サフィーリアさんも似たような形でショルシエの都合の良いように使われてしまっているんだって予想するのなんて簡単だ。


『獣の力』か何かで判断能力を鈍らせたり、何か不安定な部分の感情とか攻撃性を増幅させられたのだとしたら、サフィーリアさんの行動にも説明がつく。


例えば、お姉様と慕っていた碧先生の独占欲が増幅されたら、碧先生の意思とかは関係なしに自分の手元に置いておけるように『隷属紋』で操ったってさ。


そんなこと、良いわけが無い。冷静だったら、普段のサフィーリアさんだったらあんな状態の碧先生はお姉さまじゃないって怒るハズだから。


碧先生を独占するっていうなら、サフィーリアさんなら一日一緒にお買い物に付き合ってとか、そういう可愛いお願いだよ。

あんなやり方、普通じゃない。おかしくなっているのは私から見てもわかる。


だったら、目を覚まさせる方法はある。その中で一番シンプルなのはショルシエを倒すこと。


「ショルシエがいなければ、リュミーは死ななかったし、リベルタさんは沢山の友達を無くさなかったし、リリアナさんの里が滅茶苦茶になることもなかったし、ピリアがこんなに傷だらけになることもなかった」


皮肉なのは、ショルシエがいなかったら私の方はおかしくなってたってことだけどね。

でも今ここで起きているのが現実。もしもの話なんてしても無駄だ。私は今起きている不条理を、私が納得出来ないことを覆すために、ショルシエを倒す。


その力になるために、無茶を押し通すと決めたんだ。


「……スバル。死なないでね」


「当たり前だよ。絶対に帰ってくるよ」


私の手を握って、ピリアが祈るように伝えて来てくれた。うん、わかってる。無茶はするけど、無理はしない。死んだらそれで終わりだもんね。


「約束。絶対に、私の旅に着いて来て」


「うん。約束」


必ず行くよ。そう約束して、私は部屋を出ることにする。竜の里に戻ったら、また修行だ。

必ず、ショルシエを倒す。そう胸に誓って、私たちは別れた。


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