罪と罰
「もう、泣き過ぎだよ」
ピリアが落ち着いたのは30分くらい経ってからだったと思う。もしかするともっと長いかも。この部屋時計無くて時間感覚おかしくなりそう。
とにかく、かなりの時間が経ったと思う。そのくらいピリアは泣いてた。
「ごめん」
「謝り過ぎ。付き合ってくれてありがとうくらいの方がこっちも気分が良いよ」
ずっと謝っているピリアに謝られても困るとだけ言っておく。しかも私と何かしたわけじゃないし、どうしろっていうのさ。
こういう時は謝られるより感謝してもらった方が気分が良いよ。何度も謝られてると尚更ね。
そういうとピリアは涙を拭いながら、頷いたあとに小さくありがとうと言ってくれる。うんうん、そっちの方がいいね。
「ホント、お人好しよね」
「いやぁ、どうでもないよ? 友達じゃなかったら正直無視してるもん」
よく、お人好しって評価されるけど、私はどっちかと言うとドライな性格だと思うよ?
近しい人にはそりゃ手を差し伸べるよ。だって自分の関係者だもん。その人が苦しい時に手を差し伸べなきゃさ、後で後悔するじゃん。
でも、特に関係のない人にはわざわざ個別に手を差し伸べたりはしないよ。理由は簡単、キリがないから。
一人一人に対応しているリソースなんてどう考えても無いよ。大雑把に、全体にとって得なことをして、後は個人で頑張ってくれって思う。
こればっかりは仕方ないと思うんだよね。全員を助けるなんて、私は無理だと思ってる。
出来ることと言えば、知り合い同士で相互で助け合うのが一般人の限界だよね。
そういう点で見ると、やっぱり真白さんは別格だよね。あの人も個人個人を丁寧に助けることは無理だとは分かってると思う。
わかっている中で、どこまで個別に手を差し伸べられるかを組織的にやってる。
個人では無理なことを分かってるからこそ、組織的にやる。規模を大きくして助けられる範囲を増やしていけば良い。
言うは易しってやつだよね。あれを出来る人は世の中にそう多くない。私は、できない側の人間だ。
「ピリアだから、やっても良いって思うんだ。もう、友達を失いたくないから」
人間界で人間の友達なんてロクに出来なかった。皆、上辺だけか取り繕いもせずに嫌って来る人ばかりだ。
私の親のことを知ってる人は私を化け物か汚物のような扱いで、無視をして来るか暴言を吐いて来るかのどちらか。
知らない人は知らない人で成績やスポーツの結果、見た目で負けているとそれはそれで裏で結託し始める。
大体、こそこそと物を隠してくるようになるのはこの手の人達だ。
厄介なのは、私の家の事情も知った上で上辺だけいい顔して来る人。
この人は私を利用して、私の両親が持っているお金に興味がある。
二言目には親がお金持ちなんでしょ?だ。遊びのお金が欲しくて仲良しのフリをしてくるか、そもそも脅迫して来るか。
そんな人ばっかり見てきた。人としてまともに私を見てくれたのはお婆ちゃんくらいだ。
そんな中で出会ったリュミーは妖精だったから、人間界では長く生きられなくて出会って仲良くなった頃に死んでしまった。
そして妖精界に来て、たくさんの友達と仲間が出来た。
とても大切な友達と仲間。絶対に手放したく無い。リュミーを失った時も、ピリアが敵だと分かった時も、サフィーリアさんが裏切ったと分かった時も物凄く、苦しくて悲しかったから。
「私は、私が嫌だからピリアのこともサフィーリアさんのことも諦めない。ピリアが罪を償うなら、私も一緒に行くよ。サフィーリアさんも一緒に来てくれるかもよ?」
「そんなこと言ったら、スバルの友達がみんな付いて来るんじゃない?」
「それならそれで良いじゃん。みんな、訳アリな人達ばっかりだし」
リベルタさんもリリアナさんも、旅をする理由はある。
私も今更沖縄には帰りたくない。私は妖精界で生きて行くつもりでいるから。
「自分勝手ね」
「知ってる? 正義の味方はエゴイストなんだってさ?」
真白さんが言ってたよ。自分達は最上位のエゴイストなんだって。自分のワガママを力で押し付けて切り拓く、見ようによっては最悪な存在だってことをちゃんと自覚しなきゃいけないんだって。




