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罪と罰


「なぁんで気が付かなかったかな。ホント、何度考えてもわからない」


身の上話に花が咲いて、気が付いたらピリアが匿われている部屋の外は夜に変わっていた。


妖精界の夜は突然来るからなぁ。未だに慣れない感覚の1つだよね。太陽も月も動かない。必ず真上にある。

太陽が方角の当てにならないって分かった時は衝撃的だったなぁ。


大体の身の上話はお互い話し切ったかな。細かい部分はあるけど、お互いの半生はよく分かったと思う。


お互い、嫌な環境で生きて来たんだなと知れた。端から見れば傷の舐め合いなのかな。ま、外野で好き勝手言う人なんていくらでもいるし、そういう人とは仲良くする気も無いからどうでもいいけどね。


「なんか魔法なのかな。そういう魔法もあったよね」


「『隷属紋』ね。今思えばアレも悪趣味よね。ああいうのにも全く疑問とか嫌悪感とか無かったのよね。なんか、自然と受け入れてたわ」


「アズールさんに使ってたヤツだよね。ホントに趣味悪いよアレは」


理性を抑え付けて、自己判断能力を奪うんだっけか。それで操り人形。人をラジコン化するんだよね。


それだとピリアの洗脳状態とは根本的に違うか。ピリアのは判断能力を奪われたんじゃなくて、自分で判断しているように見せかけて実は誘導させられているってヤツだしね。


ラジコン化はしてない。自律して動いてはいる。その自律した行動をコントロールしてるって感じで、ちょっと違う。


「冷静になって思い返すと、なんであんなに荒れてたのかもよく分からないのよね」


「荒れてたの?」


「スバルと会ってる時はそうでも無かったのよ。そう、スバルといると頭がスッキリしてた気がする」


ピリアが荒れてる印象は無かったんだけど、本人曰くかなり荒れてたらしい。


どうにも、私と会ってる時は頭がスッキリしててイライラが治まっていたみたいだ。そんな特定の人に会うだけでイライラが治まるなんてことあるかなぁ。


逆に特定の人に会ってるからイライラする時はありそう。というか心当たりあるけどね。でもアレはそうしないと攻撃されるからで、それから自分を守るための防御反応だ。


ピリアの言い方だと、基本的には常時イラ立っていて、私と会う時だけその症状が治まっているって言い方だ。


「逆に、帝国の王城に戻ってる時は物凄く荒れてたわ。部屋の調度品をイライラして滅茶苦茶に壊したりとか、当たり前だったわ」


「そんなに?」


「普段使っている椅子とベッド以外は殆ど壊したと思うわ。今思うと恐ろしいわね。壊した物だけで幾らするのかしら……」


それはもうイライラしているどころか、癇癪を起して暴れているよ。部屋がもう滅茶苦茶になっていそうだ。


帝国の王城に使っている調度品なんて、日本円換算で幾らかな。王族御用達のモノを大量に壊したってことだもんね。そりゃ顔も青くなるよ。


「でも、そんなに波があるのもおかしな話だね」


「正常じゃないのは確かよね」


「今は?」


「全然。こんなに頭がスッキリしてるのはいつぶり何だろうって思う。本当に、どうかしてた」


洗脳、マインドコントロールって話だけじゃ無さそうだ。それだけ荒れる、攻撃性が増すってことだから……。


というところまで考えて、あっと一つの可能性に思い至る。まさに今、私たちの中で話題の力がまさにそういう症状を引き起こしそうだ。


「『獣の力』、かも」


「『獣の力』? なにそれ」


「ショルシエ、『獣の王』が配下の獣を操るための力が生き物の攻撃性を上げる力なんだって。もしかして、それなんじゃない?」


「成程。ただの洗脳の技術じゃなくて、そういう力も織り交ぜて、私の判断能力を奪ってコントロールしてたのね。……つくづく、私は何も知らされてなかったのね」


『獣の力』は生き物の判断能力とか知性とか本能とかを全部他を攻撃するための能力に変換してしまう力。って私は認識してる。


それが正しいかは分からないけど、そういう力ならピリアの状態にも説明がつく。それに納得したピリアは同時に自分がどれだけ都合よく扱われていたのかを再認識していた。


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― 新着の感想 ―
「取り調べてみて『獣の力』による洗脳でした。」なら、死刑にならない可能性が出てきたわけで。 妖精であれば確実に、人間でもかなりの影響が出る『獣の力』による洗脳術なら、抵抗できないことが前提になるので、…
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