最終準備
そして同時にその能力を使ってショルシエを倒そうという考えになるのは難しいというのも理解する。
そもそも戦いに転用するとかしないとか、そういう能力じゃない。本当に視ることが出来るだけの能力に転用も何もない。
私や真広が持つ、旧ミルディース王国王家に伝わっていた『繋がりの力』のように、繋がりのある他人に魔力のやり取りをしたりとか、『固有魔法』を拝借したりなんて出来る能力じゃない。
私達の『繋がりの力』は繋げる力、共有する力ってところかな。多分、一番重要な部分だと思う。
お母さんが言っていた獣に心を共有して、妖精にする。私達の持つ『繋がりの力』は最もらしい部分。
だからこそ、ショルシエに狙われたのかも知れない。運良くショルシエが旧王国に潜り込めたのか、意図的にかは分からないけど、結果としてショルシエにとって最も都合の良いところを真っ先に狙えた、という事だろう。
ショルシエが『獣の王』である以上、その対抗策である『繋がりの力』については嫌でも理解させられているハズ。
どんな力がどの国にあるか、時間さえあれば検討を付けることだって出来るハズ。能力は3つなんだから、１つわかれば後は1/2の確率。同じように時間をかければその確率はより上がっていく。
繋ぐ力、視る力、あと1つの能力は何なのか。これを知っておくのが大事になっているだろう。
「それと『神器』について、率直に能力を知りたいわ」
【全く、直球過ぎるよ君は。まぁ、それが良いところなんだけどね】
「『繋がりの力』が『獣の王』への特効能力だとしたら、『神器』は特効兵器。恐らく、合わせた運用。或いは全く別のアプローチから『獣の王』の能力を無効化か圧倒する能力を有しているハズ。ここは私達の中だけでも共有するべきです」
次いで、『神器』についても触れて行く。『繋がりの力』と合わせて、『獣の王』ショルシエに対する特効兵器であることは間違いない。
初代『妖精の王』から同じように3か国にそれぞれ分配しているわけだからね。目的は同じなのは確実。
少なくとも、この通話にいる面子だけでも良いから、共有すべきだ。
【なるほど、策士だねぇ。わざわざ碧さんを席から外させて、スタンと墨亜嬢を同席するように言ったのはそのためかい】
【え、僕らが呼ばれた理由ってあったんですか】
【普通に全員呼ばれてると思ったんだけど】
スタン君と墨亜の予想とは裏腹にこの通話には必要最低限な人数しか呼んでいない。本当は真広も呼ぶつもりだったんだけど、今は忙しいらしい。本人の中で何か必要なことがあるんだろう。
その辺の采配は個人に任せるし、真広は貴重なショルシエに近しい場所にいた過去がある。ショルシエの思考や行動を何となく察することも出来るかも知れない。
この通話に集まっている面子には共通点がある。
【全員、妖精界の王族関係者だからね。この中でだったら王族のあれやこれやを話すことに確かに僕が気にする問題点は少ない】
【え、私も？】
そう、ここにいるのは妖精界の王族とその関係者だけだ。墨亜が何か言っているけど、ほぼほぼ関係者なので先に引きずり込んでおく。
どうせそこの2人はくっ付くもの。当たり前に2人でいるし、それに不満もなさそうだし。何より思春期で他人に対して割とずっとピリピリしている墨亜がそうやってる時点で、実は墨亜の方がスタン君に気があるのよね。
スタン君はスタン君で墨亜にぞっこんって感じだし、これなら拗れることも無くさっさとくっ付くでしょ。
「さて、スタン君も知っていることは洗いざらい話してもらうわよ」
【え、いや、えぇ？】
【そこは動揺しないでシャキッとしとくものだよ、スタン】
動揺するスタン君にリアンシさんが笑いながら年上としてアドバイスをサラッと言って囲い込み強化である。
半分くらいは冗談だけど、もう半分くらいは本気でそうなると思ってる。
趣味の悪い娯楽なのは承知。このくらいしか笑えることが無いのよ。
