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花園へ


真白と真白の母ちゃんと別れて、しばらく歩いた。大体15分くらいか?

それにしては随分と距離が離れたような気がする。花園は見ての通り一面の花畑。建物なんて一つも無いから遮蔽物もない。


普通に考えると15分歩いた距離ってのは1㎞くらいだ。多少の前後はあるだろうが、大体そんなもん。


だがここから見る分には10㎞は離れているように見える。かかった時間と距離のバランスがどう考えてもおかしかった。


「ここは花園。夢の中みたいなものだから、こっちが意識すればある程度は都合よく変化してくれるわ」


「ほーん?」


不思議がっているウチに簡単な説明をしてくれたテレネッツァだけど、アバウトな上に想像がつかなくて曖昧な返事しか出来ない。


夢の中だから改変し放題、ってわけじゃないっぽいしな。ある程度、とやらの範囲を絞るのは中々面倒そうだ。


「さて、私が何を言いたいのかわかるでしょう。碧?」


かなりの距離を取ったところで前を歩いていたテレネッツァが身を翻してこっちに問いかけて来た。


「……そりゃ、流石にな」


テレネッツァがウチに何を言いたいのか。そんなの1つだろ。


実の妹、サフィーリアのことについて。それ以外にあり得ない。ウチとサフィーが出会ったこと自体は全くの偶然だ。

テレネッツァも『優しさ』のメモリーの中で見ていて、さぞや驚いたことだろうよ。


会えた理由を付けるなら、パッシオのおかげ、だろうな。


テレネッツァとパッシオは元婚約者らしいし、あのパッシオのことだ。死んでしまった元婚約者の妹を目にかけておくくらいの事はするだろ。


そういうところは律儀っつーか、面倒見の良いっつーか。通せる筋は通そうとするやつだ。

パッシオとサフィーが出会ったこと自体は偶然か必然かは知らね―けど、パッシオなら見つけた以上は保護するだろうな。


その結果、テレネッツァとサフィーリアの一族。その力を借りるウチっていう、アグアマリナ家に所縁のある者が集まった。


その中でウチとサフィーリアが生きているわけだから、ウチにテレネッツァの面影を見出すサフィーリアの面倒を見る義務というか必要性はあった。

悪い気もしねぇし、特に負担にも思わない。昔っから朱莉と紫の面倒は見て来たしな。


成也とみなももいる。妹弟の面倒を見るのは慣れてるし、実の姉のテレネッツァを失って傷心していたサフィーリアを放っておくって選択肢はウチには無かった。


それだって言うのに、あのザマだ。


「本当に、ごめん」


そう言うことしか出来ない。起きちまったことは変えられない。時間でも巻き戻ればどうにかなるんだろうが、そんなことは無理だ。


あるんだとしたら時属性の魔法か? そんな属性の魔法、あるのかも知らねぇし、多分人間には使えねぇだろうけどな。


「手を引いてあげる側が道に迷ってたんじゃ、引かれてた子はもっと道に迷う。当たり前のことだと思うけどね」


「その通りだな」


自分がどうするべきか、どうあるべきか。目標とか未来の展望とか、自分の今の立ち位置とか。


そういうモノが揺らいでるヤツが何を偉そうにしてたんだか。

せめて、自分が今やるべきことを自分の頭で考えてやるくらいじゃなきゃいけなかったのを惰性でやっていたウチが招いた結果だ。


「どう落とし前をつけるの?」


「サフィーを連れ戻す」


「どうやって? 今の碧に出来る?」


「さぁな。でもやんなきゃいけねぇのは分かってる」


今のウチに出来ることはもう精々サフィーリアを連れ戻すことくらいだ。


強引で良い。まずは連れ戻してからじゃねぇと今のサフィーに話は通じねぇ。

まずは力づくで連れ戻して引っ叩いてでもこっちに引き戻す。


「だからアンタに会いに来た」


「そ。それがわかっているなら、気が済むまで相手をしてあげる」


そのために戻さなきゃいけねぇ勘と鈍った身体がある。

時間が足りねぇし、全力で戦う相手も場所もねぇ。


何より、色々試すにはウチの魔法は危な過ぎる。


「『激流変身』」



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