星の道導
「結局、知りたかったら自分で動けってことだね」
「口を開けてれば欲しいものが手に入るのは子供の頃だけってね」
私、まだ未成年だから子供だけどね。ま、そんなのは人間界側の法律の事情だから関係ないけど。
この場合の大人っていうのは精神的な成長度合いの事だしね。
「で? 長々とこんなところで油を売ってて良いの?」
「調査にも休憩は必要だよ。もう2日くらいは缶詰だったからね。流石に息抜きくらいはしないと大事なことを見落としそうだ」
「お疲れ様。何か分かったことはあるの?」
この後、何らかの形でお互いに姉と兄に聞きたい事は聞くとして、『繋がりの力』について調査しているスタンがここで時間を潰していることについて聞いてみるとシンプルに休憩みたいだ。
確かに書庫で缶詰状態だと気が滅入ってくるだろうし、長時間の作業は集中力を使う。集中力の維持には体力だっているし、適度な休憩は効率を考えても必須。
何らかの一区切りがついたっていうのもありそうだけど。そのあたりはどうなんだろう。
「幾つか分かったことはあるね。まず、『繋がりの力』は魔法じゃないって点かな」
「それは割と最初からわかってない?」
「何となくだったものが確定情報になるのは結構大事だよ。情報に確証が持てるからね」
情報の確度、ってやつか。検証を進める上でその情報に間違いや不確定要素が無い方が良いのは何となくわかる。
情報は正確であればあるほど信用が出来て、その情報を元に行動を起こす場合に確実に行動を成功させる確率が上がって行く。
戦いは情報を制した方が勝つ。こういう事は紫お姉ちゃんがきっと一番肌で理解しているだろうから、その辺の判断基準は誰よりも厳しい。
そんな紫お姉ちゃんが太鼓判を押す情報が手に入り始めた、って言うのは物凄く重要なことだ。
それをより正確に、取りこぼしの無いようにするための休憩時間とも受け取れるね。
「とにかく、魔法でも科学でもないと分かった以上、『繋がりの力』は超常の力。本来、世界の理に則らないといけない魔法や科学よりも高次元的な能力って言える」
「高次元……?」
「簡単に言えば神様の力さ。本来、世界を創造する側にある神の力に『繋がりの力』は近いんだ」
神様の力、と言われてもピンと来ることは全然ないんだけど、とにかく魔法でも科学でも再現不可能な、本来なら人が使うことが許されない力、ってことで良いのかな?
確かに『繋がりの力』は不思議な力で、お姉ちゃんが連絡先を知っている人の魔力や固有の能力を引き出すことが出来るらしい。
真白お姉ちゃんの使い方は多分だいぶ特殊な使い方なんだろうけど、縁のある人の力を自分のモノのように扱える能力は無限の可能性を秘めていると思う。
『繋がりの力』の力を魔法と科学で模倣しようとしたというSlot Absorberでさえ、強化できるのは魔力と属性だけ。
真白お姉ちゃんは魔力、属性、固有能力、技術まで自分の技として使うことが出来る。
例えば、パッシオと繋がっている時に使う火属性の『固有魔法』、ローズスパイカーは元々パッシオが使う魔法らしい。
相手との繋がりが強ければ強いほど高いレベルで能力を引き出せるらしくて、やろうと思えば皆の『固有魔法』を使うことも出来るんだって。
正直イカれた性能をしている。これを真白お姉ちゃんは促成で自己流アレンジして来るから厄介なんだよね。
しかもその繋がりは何個も並行して使える。3年前で真白お姉ちゃんが変身した『アリウムフルール・サンクチュエリ』はその場にいた全員から魔力を受け取った後、ブーストして送り返すとか言う離れ業まで披露していたし。
なるほど、確かに考えれば考えるほど法外な力なんだなって思う。その状態でその気になれば全員の『固有魔法』を同時発動出来るんだよ?
敵からしたら最悪だよ。それが真白お姉ちゃんのお母さんも同じことが出来たのだとしたら、確かにショルシエからしたら最悪の仮想敵。
真っ先に無力化したい相手かもね。




