青くて碧い
どうすればいいのか、出口の無い迷路で迷ってる気分だ。入ったら最後、出ることも出来ない迷路の中に入っちまった。そういう感じ。
出口が無いわけがないのも理屈と言うかわかってはいるつもりだ。つもりなだけで、そうじゃないかもしれないが迷っていると言いながらただ立ち止まって出口を探していないと表現も出来る。
とにかく、気力が無いってのが正解かもな。目標ってエネルギーが無いから迷路から抜け出す歩みすらしてない。それはある気がする。
「どうしたもんかな」
どん底。スランプ。限界。そんなネガティブな言葉だけが頭に浮かんでくる。
あーもう、これがダメなんだって言ってんのにそうなんだからどうしようもないな。翔也さんが言ってんのはようは周りと比較し過ぎるんなって事だ。
自分だけの理由。ウチがやりたい事。ウチが周りに押し付けるエゴイズム。そういうのを出せって言ってんだよな。
「ねーね、どうしたの?」
「おなかいたい?」
ベンチに座り込んでるウチを見て成也とみなもが心配で戻って来ちまった。あぁ、良くねぇ良くねぇ。弟妹に上の情けない姿を見せても良いことなんて一つもねぇからな。
子供ってのはそういうの滅茶苦茶気にするからな。見栄でもしゃんとすんのが兄貴姉貴のやることってもんだ。
「大丈夫だ。よし、遊ぶか」
「「わーい!!」」
膝をバシッと叩いて一旦考えていたことをぶん投げることにする。頭を空っぽにして、スッキリしてから考えた方がまだマシだろ。
こうドツボにハマってる時に考え事したって良いことなんて無いってことは周りを見ててよく分かる。
真白とかな。3年前のアイツとか酷いもんだったし。それを考えれば、外に出てまで考えることじゃねぇや。
「総大将も考えることが多くて大変やなぁ」
「テメェ……。さては番長あたりからなんか聞いてんな?」
「さぁて、何のことやらわからへんなぁ?」
この野郎。ノンのところにいたのも織り込み済みかよ。話を聞いて損したぜ。すっとぼけてやがるが絶対に番長辺りからなんか聞いてんだろ。
大方、無理矢理引っ張り出してリフレッシュさせろとかそんなんだろうけどよ。手のひらの上で踊らされてる気分で若干腹が立つぜ。
相手が鼓っていうのもあんだろうな。こんにゃろう、からかいも含んだ対応しやがって。
「別にバカにはしてへんで? 魔法少女の総大将でも普通の女の子みたいに色々悩むんやなぁ思っとるだけや」
「半分くらいはバカにしてんだろ」
「してへんって。むしろ安心したわ。あんさん達みたいなバケモンと天才の集団でも人並みの悩みってんのはあるんやなってな」
それはそれでなんか差別的な発言な気もするが、鼓的には褒めてるらしい。ったく、言い回しがまどろっこしいんだよ。
本人の雰囲気も相まって、腹に何か抱えているようにしか思えねぇけど。一応心配はしているらしい。
「関西弁の弊害やわ。イメージ悪すぎやろこの方言」
「うさんくせぇイメージはある」
「ほんまにやめてほしいわ」
関西特有の言い回しと関西弁の持つ印象の影響は少なからずありそうだよな。鼓、如何にも腹のうちが読めない胡散臭い関西弁キャラみたいな感じだしな。
変身すると印象変わるんだけどな。本人も意識してない言葉の言い回しの変化とかありそうだ。
「ねーね、ブランコしよう」
「シーソーがいい」
「はいはい喧嘩すんな。順番にあそんでやっから」
あれで遊びたいこれで遊びたいと意見が割れる双子のチビ達が喧嘩する前に順番と言い聞かせて、まずはブランコが空いてるからそっちが先だ。
そういやブランコに乗るなんていつぶりだろうなと考えていた時。
「――!!」
「こんな時に魔獣かいな!!」
街中にサイレンが鳴り響く。魔獣の襲撃を知らせて、住民を避難させるための聞きなれたサイレンに長年染みついた行動が身体を突き動かした。