青くて碧い
「おねーさんだーれー?」
「きれーだね!!」
ノンに夢中だった成也とみなもが鼓がいることに気が付いて今度はわらわらと鼓の周りに群がる。
チビ達2人に囲まれて鼓の方も頬がほころぶ。子供嫌いなヤツなんて魔法少女になんて殆どいねーんだよな。何せ年上の魔法少女になって来ると周りは小学生とか中学生だらけだ。
高校生がたまにいて、大学生とか社会人くらいになると割と稀になって来る。この辺りで進路が決まるからな。
魔法少女としてどこかの企業に派遣されてたり、事務員として協会に就職してたり、引退していたりになってる頃なんだよ。
5年もやってりゃ結構な額稼げるしな。ウチみたいに長い期間やってるとそりゃ稼いでるぜ? 因みに翔也さんに習っていわゆる資産運用ってのをしてるから資産家みてえな額稼いでる。
……確定申告で白目を剥きそうになったけどな。税金エグくて笑う。
「なんや坊ちゃん。お姉さん褒めても何もでぇへんで?」
「おんなのこはほめないとしつれいだってパパいってた」
「……あんのクソ親父」
開口一番で鼓を綺麗だと褒めた成也の頭を撫でながらそこそこ嬉しそうにしている鼓。そんな言葉どこから覚えたのかを聞かれて、パパだと答えた成也にこっちは呆れしか出て来ねえよ。
ったく、基本的に女たらしなところは変わってねぇんだよな。そんなところ似るんじゃねぇよ。いつか刺されるぞ。マジで。
「お嬢ちゃんも良い子やなぁ」
「ありがとうございます」
「あーもう、ホンマ可愛いなぁ!! ちゃんとお礼も言えて口の悪い姉ちゃんとは大違いや!!」
「おい」
しれっとディスるんじゃねぇよこの野郎。油断も隙もあったもんじゃねぇ。
じとっと睨みつけるが完全に知らねぇフリしてやがる。チビ2人を愛でてるから手を出さねぇが、何にもなかったら腹パンの一撃でもお見舞いしてるところだぜ。
ったく、調子のいい奴だよ。こういう飄々として打算的なところとかはなんつーか、関西人って感じがする。まぁそんなこと言ったら関西の人に失礼なんだろうけどよ。
ヘラヘラしてる割に腹で何考えてるか読ませねぇからなコイツ。人のことには首ツッコむクセに自分の領域には人を入れねぇズルい奴だよ。
「んで?何の用だよ。こんなところにいるってことはなんか用件があんだろ?」
「無い無い。そこまで打算的じゃないわ。忙し過ぎて目が回りそうだったから逃げて来ただけやで」
「お前なぁ……」
「むしろ感心するで。あんさん魔法少女やりながらあんな量の事務作業捌いてたのイカれてるやろ」
ウチの代わりに魔法少女協会で色々面倒を見てもらっているってことはウチが普段やってる仕事を代わりにやってるってことだ。
こう言っちゃなんだが、まぁまぁ忙しいぜ? 新顔の魔法少女の登録とそのチェック。保護者への連絡と打ち合わせ等。それに関わる事務作業の一部。
それ以外にも新人を中心に戦い方の指導。実戦の監督。新しく導入する設備とか装備の確認と会議。
「そこにテレビとかラジオの収録あるからな?」
「マジでオタクらの身体はどないなっとんねん。そんなん働いたらぶっ倒れるわ」
「でもウチの周りそんなんばっかだしなぁ……」
日頃から大人しくしてる奴なんていねぇしなぁ。大体全員仕事とか学業とかで忙しそうにしてるし、日常って感じではあるんだよな。
基準がぶっ壊れてるんじゃねぇかと言われたらその通りだ。大体、ウチらの先輩達が鬼のように仕事してるせいだと思うぞ。
番長とか雛森さんが休むようになればちょっとは落ち着くんじゃねぇかな。
「てか、自分普通に学生やったよな?」
「受験生だぞ」
「マジでイカれてるやろ」
信じられないものを見る顔をされたけど、現役大学生とかやりながら魔法少女とその他の仕事やってる奴がいるしなぁ……。