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青くて碧い


「ふぅん?」


ウチの話を聞いた翔也さんの反応はなんつーか、微妙だった。話を聞いてないとか、理解出来ていないとかじゃなくて、ウチの話に納得がいってないというか純粋に首を傾げているって感じだった。


「なんだよ」


「いや、不思議なことを言うもんだと思ってね」


「はぁ?」


結構切実な悩みなんだけど? それをニヤリと笑われるのは流石のウチでも面白くないってもんだ。

露骨に顔に出ていただろうのを見た翔也さんがまた笑うとごめんごめんと言って作ったカクテルグラスを手に持ちながら、ウチが座るカウンターテーブルの前に腰かけた。


「碧に目標が無いなんて、そんなおかしなことあるかい? 俺にはとてもじゃないけどそんな風には見えないけど」


「だから、ねぇから困ってんだろ?」


「それがおかしいんだよね。だって碧はいつだってたった一つの目標を見ていると思うんだけど」


「……?」


ウチが、一つの目標を見てる? そう言われて今度はこっちが首を傾げることになる。目標が無くて悩んでるって相談しているのに、相談相手からお前はずっと同じ目標を目指しているじゃないかって言われて納得できるか?


間違いなく意味不明だろ。完全にボタンを掛け違っているような気分だ。


「あはははは。碧には当たり前になり過ぎたのかもね。目標じゃなくて、前提条件とか。どう思う? 雫さん」


「ん? んー、確かにそうかも。もうクセみたいなもんだろうしね。そこに関しては私が全面的に悪いところがあるし……」


お袋も翔也さんの意見に乗っかる。どころかお袋が言うにウチがそうなっているのはお袋が原因らしい。


そりゃどういうことだよ。お袋が原因でウチになんかあることあるか? あれか、遺伝か? そういうので何か悪いもんでも引き継いだか?


でも、んなこと感じたことねぇしな。どういうことだかサッパリわからない。何の話をしてるんだ?


「本当に気が付かないんだね。碧は昔からそうじゃないか」


「だーかーらー。ハッキリ言えって」


「わかったわかった。全く、せっかちだねぇ」


もったいぶって言うことじゃねぇだろうがよ。こっちはそれで悩んでんだから、その答え1つで変わるかも知んねぇだろ。


焦ってる気持ちがあるのはわかる。ウチだって、続けられるなら魔法少女を続けてたいさ。仲間と一緒にいるのが苦しいわけじゃない。むしろ楽しい。


だからキツいんだよ。ずっとこのままが続くなら続いてくれた方が良いに決まってる。それが絶対に叶わない夢でも出来るだけ夢見心地が続いた方が良いに決まってるだろ。


そこからいの一番に脱落しそうだってわかってるからキツイし、悔しいし、虚しいんだ。

……泣いちまうくらいに、さ。


「碧はいつだって誰かのために戦っているじゃないか」


「だから!!」


「身近な誰かを守るために戦うことが、そんなに悪いことなのかい?」


「……?!」


そう言われて荒げた声を引っ込める。目から鱗、っていうか翔也さんの言葉がストンと胸の内に収まった感じがしたんだ。


身近な誰かの為に戦う。たったそれだけのことだけど、ウチにとっては大事な何かだった気がするんだ。


「碧。君のやりたい事はきっと魔法少女を始める前から変わっていないんだよ。君は、君の大切なモノを守るために戦っている。それの何が問題があるんだい?」


「それは……」


「夢や目標はね、大きければ良いわけじゃないよ。大事なのは、本当にやりたい事なのかなんだ。本当に自分が成し遂げたい何かをするために必要なことなのか。それをちゃんとわかって、ただ茫然とやっているだけならその夢は絶対に叶わない」


薄っすらと笑みを浮かべて、優しく諭すように翔也さんは自分の考えをウチに伝えてくれる。


「碧は夢や目標を見失ったんじゃないよ。ちょっと身近に、当たり前になり過ぎただけだよ。何せ、周りは世界を股にかけた夢や野望を持つ子達ばかりだ。それを一番身近で守り続けるのが日常になっちゃった。ただそれだけのことだと俺は思うんだけどね」


世界で戦う翔也さんだからこそ。諸星グループのトップに立って世界をリードする存在だからこそ、きっと翔也さんは夢を叶えるという点について、この世界で最もよく本質を理解出来ているんだと思う。



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