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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
決戦に備えて

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青くて碧い


飯も済ませて風呂も済ませて、まだウチと遊ぶと駄々をこねる成也とみなもをお袋と一緒に寝かしつけて夜ののんびりとした時間を過ごす。

なんだっけ、チルタイムって言うんだっけか?あんま何でもかんでも横文字にするのはどうかと思うけどな。わかりにくくね?


「それで? どうしたんだい?」


「どうしたって、何さ?」


まったりした空気の中で翔也さんが自分で作ったカクテルを一口煽ってからウチに声をかけて来る。


カクテルを作るが趣味ってのがこう、余裕を感じるつうか洒落てるよな。本職のバーテンダーには遠く及ばないって言ってるけど詳しく知らないウチからしたらカウンターでバーテンダーと言えばって感じにカシャカシャってあの名前のわからん振るヤツを使っている翔也さんは結構カッコよくてサマになっている。


自分とお袋のアルコールが入っているヤツと、ウチ用に作ったノンアルコールカクテルをそれぞれ作ってから聞かれたことにドキリとしながらほぼ反射でとぼける。


「碧が任務中に帰って来るなんてあり得ないからね。何か理由があるんだろう?」


「それは、そうだけど」


とぼけたのはただただ反射でそう言っただけで、ほぼ強がりとか親に相談する気恥しさみたいなもんだ。

やるだけ無駄だとはわかっていてもどうにもこの癖は抜けない。


苦手なんだよなぁ、誰かに相談するのって。


真白はその辺上手いって言うか、アイツは隠すの下手だからな。無理してる時は速攻でバレるし、そもそも無理するのがわかっているから監視員がいるしな。


「とりあえず話してご覧。碧は悩み事を相談しないからね」


「む……」


「悪いことじゃないよ。自分で考えて、自分で解決する方法を導き出す思考力を持つことは将来必ず必要になる。だけど誰かに相談して共有することも大事だ。そこを上手く使い分ける練習だと思えばいい」


社会で、何より世界を相手取って仕事をしている翔也さんにそう言われると納得しかない。自分で解決出来るものは自分で、そうじゃないことはしっかり信用できる相手に相談して解決を模索する。


一生付きまとうことなんだろうな。人間は神様じゃねぇ。個人でやれることなんてたかが知れてるしな。


そうは言っても難しいよなぁ。相談したって解決するわけじゃないことだって山ほどあるしよ。

相談した方が良いことと悪いことだってあるだろ? その線引きだってミスると良いことねぇしな。


それでも翔也さんに言って拗れるってのも想像つかないし、言う通りにした方が良いのも何となく分かる。

それでも腰が重いのは仕方ねぇと思うんだよな。誰だって悩みって言う名前の弱みを相手にさらけ出すのは勇気がいるってもんだよ。


「あー、魔法少女辞めた方が良いのかなってな」


「なんでまた。碧はよくやっていると思うんだけど」


「外から見れば仕事はしてるよ。ただ、言われたことをやってるだけってヤツ? 何すれば良いのか分かんなくなってよ」


どう切り出すべきかを少し悩んで、そもそもの話をする。細かい話は後回しにしてこういうのは最終的な結論っていうか、最後にこうするしかないのかって部分をまずすんのがいいのかなってな。


「目標が無くなったっつうかさ。皆と見てるもんが違う気がしてんだよな」


「皆が見てるもの?」


「他の連中は見えてるもんが壮大っていうのかな。世界とか未来とか、そういう規模で見てるんだよな。ウチはそういうのが無いからさ」


元々金が欲しくて始めた魔法少女。家族が安心して食えるようになった今、ウチに最初の戦う理由はもう無い。


他の面々もそういうヤツはいるけど、各々次の目標を見つけてそれに向かって努力している。

漠然とした努力ってのは難しい。少なくともウチには無理で、周りとの熱量の差も明確になって来る。


アイツらがそれでウチを見限るなんてことはねぇけどさ。問題はウチがリーダーとして動いているってことなんだよな。


「千草の言う通り、リーダーがこのザマじゃいずれ見限るヤツだって出て来る。そうなったらウチらのチームは緩やかな崩壊だ」


ただでさえアクの強い面子だからな。ネジが一本外れただけで空中分解しかねない。そうなる前に決断する必要はあると思ってる。


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― 新着の感想 ―
やりがい探し…でしょうか? 最初は家族のためにっていう理由で、偶々“魔法少女”としての能力があったから、危険だけど高給で“働けた”というだけだった。 今は?…頑張って、戦って、戦死率が高い魔法少女界隈…
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