青くて碧い
「久しぶりの家族勢ぞろいは嬉しいねぇ」
お袋が作った夕飯を囲みながら、親父はノリノリのウキウキだ。相変わらずの家族大好き成人だ。
ここまで家族に対して、なんだ、愛情全開って言うのか? そういうの日本人では珍しいよな。
特に日本の男の人ってそういうの見せるのは恥ずかしいって人が多い印象だしよ。強がってないと内からも外からも情けないとか女々しいとか好き勝手言われるのは大変だよなってちょくちょく思う。
女の方もアレコレ言われてムズイよな。大体外野が騒ぎ過ぎなんだよ。その人が良ければ良いんじゃねーの? っては思っちまうけどな。
ウチだって、諸星家直系の長女として振舞うにはもうちょっとお淑やかにしとかないと外野が煩いったらねぇんだよな。
お前らに関係ないだろって言い返したいけど、我慢してるだけ偉いと思ってくれ。
因みにそんなこと言って来る奴は翔也さんが主にボコボコにしてる。あとお袋が普通にケンカ買ってるからウチはだいぶ特殊だぞ。
そもそも諸星にケンカ吹っかけるのがバカだと思うけど。
「久しぶりって、何年も離れてたみたいな言い方すんなよ」
「それくらいに感じるものなんだよ」
「ふーん?」
話を戻して、ウチが帰って来ただけで有頂天みたいな反応をする翔也さん。言い分を聞くにそういうもん、らしい。
ウチにはよく分からん。だって年月にしたら半年くらいか? 妖精界であれそれやってんのは。
そろそろ学校にも影響出て来るからどうにかなって欲しいところだが、どうなることやら。
「アンタも親になったらよく分かるわ」
「そうだね。これは親にならないと分からないね。俺も最近分かったよ。親父がなんであっちこっち連れまわそうとしてくるのとかね」
学生の頃はウザったいってしか思ってなかったよ。と翔也さんは笑っている。
へぇ、温厚な翔也さんでも親。ウチから見ると爺ちゃんだな。
爺ちゃんも面白い人なんだけど、親子らしい軋轢と言うか、ウザいとか思う事あったんだな。今じゃ考えられないぜ。
確かに爺ちゃんはなんというか世話焼きと言うか、アグレッシブな人でウチとか成也とみなもを色んなところに連れて行こうとするんだよな。
テレビの仕事で東京行くときとかにもわざわざ着いて来て、美味い店とか面白いお店に連れて行ってくれんだよ。
「そんなもんなのか?」
「大抵はそんなもんじゃないかな。この気持ちは親になった時のお楽しみに取っておくといいよ」
「んなもん取っといてもなぁ」
結局よくわからないまんまはぐらかされて終わる。こだわっても仕方ねぇし、こっちもお袋が作った鶏肉の煮込みを骨ごと頬張る。
ウチの食卓に並ぶのは意外かも知れねぇけどいたって普通の家庭料理ばっかだ。料理するのはお袋だしな。
家だって屋敷じゃなくてマンションだし。まぁ、そのマンション一棟まるっと持ってるし、フロアぶち抜きスタイルの特別仕様なわけだが。
他の人が想像するようなお金持ちスタイルの生活をしてんのはどっちかっていうと千草、真白、墨亜の家の方だ。分家筋の方がそういうスタイルなのは珍しいかもな。
その辺の理由は翔也さんが自立を望むスタイルなのと、お袋がお金持ちに対して一定の忌避感を持ってるからだ。
一応、お袋も大企業のご令嬢なわけだが、家庭環境が良くなかったらしくて家出したくらいだしな。
逆に分家筋の千草達の方がお金持ちスタイルなのは両親共々に仕事に忙しくて、住み込みの使用人を何十人と抱えているからだ。
でもあっちはあっちで家族仲は良好だ。使用人も含めての大家族スタイルってところだな。
「もうちょっと行儀の良い食べ方しなさいよ」
「この喰い方が一番美味い」
「間違いないね。このとろとろの軟骨と骨から染み出る旨みが最高だ」
骨付きの鶏もも肉を骨ごと頬張って口の中で肉と軟骨と硬い骨をバラバラにして骨だけ口から出すとお袋からは行儀が悪いと怒られるが、そんなことはお構いなしだ。
翔也さんの言う通り、お袋のこれはこの食い方が一番美味い。
呆れるお袋は同じく鶏肉をせがむ成也とみなもに鶏肉をわけて食べさせる。2人ももりもり夕飯を食っていて元気が良い。
家族団らん、ってのを楽しんで鬱屈とした気持ちが少し晴れていくのを感じながら、二本目の鶏肉を口に放り込む。
うん、やっぱ美味い。
 




