マジックチャージャー
「作品のジャンルが違う、か。確かに考えたことも無かった」
ボクはジャンル違いの主人公。
ニーチェが言うにはボクは他の魔法少女が魔法少女モノの作品の主人公としてのポテンシャルを持っているのに対して、本当なら全く別のジャンルの主人公であって、皆と同じようなモチベーションの上げ方とか、理由じゃないってことらしい。
「ボクですらパッとしてないのに納得しないで欲しいんすけど」
ただ、ボク自身はそれに賛同してないっすけどね。確かに自分のことを主人公だとは思っていませんけど、なんかこう、それは違うというか。だったらそれこそボクはモブなんじゃないのかって疑念っすかね。
その理論で行くならボクがそもそもここにいるのがおかしい気がするんすけど。
「では聞くけど。舞君、君は魔法少女として戦う時に何を考えて戦っているんだい?」
「戦っている時、っすか?」
「そう。魔法少女として、仲間と共に戦う最中に考えていることだよ」
戦っている時、かぁ。あんまり意識していることはないっすけどね。ただまぁ、大抵がむしゃらっすよね。相手が強ければ強いほど、がむしゃらになってます。
その中で考えていることを敢えて言うのなら。
「もっと速く、っすかねぇ」
「ふふふ。私は魔法少女ではないから正確なことは言えないけど、他の子が聞いたらびっくりするんじゃないかな」
「私も、それを初めて聞いた時はビックリしましたよ。魔法少女が命かけて戦っている時にもっと速く動きたいなんて考えているなんて、普通はないですよ。なにより、舞は強敵と戦っている時、笑ってるんですよ」
「え、そうなんです?」
自覚無いんかい、とニーチェに笑われる。そんなにおかしいことかと言いたいっすけど、いやまあ確かに戦ってる最中に早い遅いに拘っているのはおかしいかも知れないっすね。
戦いに対する次の一手とか、相手の分析とかそういうことを考えていたり、逆に何も考えずに反射で動いているとかはあるっすよね。
それに対してボクはスピードについて考えてるし、それで調子が良いと笑ってるらしいじゃないっすか。なんだか段々言い訳出来なくなってきました。
「舞は根っからのスピード狂ですよ。じゃなきゃこうはならないでしょ」
「ぐぬぬぬ……」
「弁明の余地もなさそうだね」
「言われてみれば昔っから足の速さとかにはこだわってたもんなぁ。陸上の短距離走でかなり良いところまでいってたしな」
お父さんの言う通り、魔法少女になる前にやっていた陸上の短距離競技が楽しくて仕方が無かったのも、皆と出会う前に魔法少女に変身してやっていたこともとにかく速く走れるからだった。
そうなるとボクは昔から速さとかスピードとかしか考えてないってことになる。ニーチェの言う通り、スピード狂っすね……。
「作品だったら何になりそうかな」
「レース系とかスポコン系とかじゃないですか? 車とかバイクとか乗ったら性格変わりそうですし」
「流石に風評被害っす!!」
ハンドル握ったら性格変わりそうとか、マンガじゃないんすから勘弁してくださいよ。そんな人、現実的にいるんすか?
いたとしたらその人は多分車に乗らない方がいい人種なんでボクは車に乗らない方が良い人ってことになると思いますけど。
「レーサーはそんなんばっかだぞ」
「んじゃやっぱアンタはレース系漫画の主人公ね」
「だから違います!!」
人を変人呼ばわりばっかりして、なんなんすかもう。
ぷんすか怒っていると東堂さんにまぁまぁと宥められて、仕方なく納めますけど、今度の模擬戦では容赦しないっすからね。覚えとけってやつです。
「さて、話を戻すけれど、『魔動エンジン』の研究に差し当たって、舞君の強化になるというのはまさにそれだ」
「スピードをもっと上げられるってことですか?」
「そういうことだ。まぁ、舞君にエンジンを載せるわけではないよ。舞君をエンジンに見立てて、パワーアップパーツを付けるみたいなものさ」
あー、ターボ的なやつですかね?ターボの仕組みよく知らないっすけど。